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【御礼 25,000PV到達】召喚されたのはスマホでした〜付属品の俺はこの異世界で地道に生きていこうと思うのに、Chat-AIが許してくれない〜  作者: 野川雄一


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089 神殿調査 砂漠のダンジョン 第ニ階層2

「スケルトンはいない、行けるよ。」


階段から顔を出して通路の様子をうかがったミネルヴァさんの合図で、俺達はまた通路を歩き出す。


暫くするとまた奥からスケルトンがやって来た。

カタ、カタ、と乾いた骨のぶつかる音。

スケルトンたちは数で押してくるが、足並みは揃っていない。


今回は渦巻き刻印には一切触れない。

魔力を流さない限り、あの無音結界は発動しないはずだ。

固唾を呑みながらあの刻印を過ぎると、作戦会議の予想通り、結界は発動しなかった。

よし!いける!


「邪魔だ、どけどけぇい!」


ディーノさんが短く言い、剣を振るう。

スケルトン達の骨が砕け、壁に当たって跳ね返る音が、通路にやけに大きく響いた。


スケルトン達は、数が減る気配もなく次々と押し寄せてくるが、前衛二人が道を切り開き、討ち漏らしをフィオナが潰していき、俺がギョペックさんを守る。


実は、作戦会議の時に、ギョペックさんの守りをアスモラに頼もうかと思ったんだけど、


「え゛……」


アスモラのもの凄い形相。


「……さっきのは忘れてください。」

「無理です。」


ギョペックさんの懇願は即座に弾き返された。

仕方がないので、ギョペックさんの御守り役は俺となったのだ。


押し寄せるスケルトンを力で排除しながら、止まらず、振り返らずに進む。

どのくらい進んだだろうか。急に風が止んだ。 通路の行き止まりが少し広くなったので、ここがボス部屋らしい。


「……居たぞ。」


ディーノさんの低い声と同時に、石床を踏む音が一つ、はっきりと響いた。


現れたのは、錆びた鎧を纏った兵士だった。

兜の奥は暗く、眼のあるべき場所は赤色に淡く光っていた。


「亡霊……兵?」


ギョペックさんの声が震える。

返事はない。


亡霊兵は無言で剣を構えた。

次の瞬間、振るわれた刃先から、風が走った。


「伏せろ!」


ディーノさんの叫びと同時に、風刃(ウインドカッター)が爆速で飛来する。

咄嗟に伏せた頭上で風刃が石壁を削り、石片が弾け散った。


「あっぶねぇー。」

「視認できる風魔法なんて初めてだぜ。」


ディーノさんがそうなら、みんな初遭遇だね。

ホッとする間もなく、今度は続けざまに放たれた、弾丸のようなウインドアローが迫る。


なにこれ!

勝てる気しないんですけど!


部屋の奥から放たれた風の矢が、鋭い音を立てて飛んできた。


「っ、ギョペックさん!」


反射的に彼の腕を掴み、引き寄せる。

次の瞬間、俺たちがいた地面をウインドアローが抉った。


「ちょ、ちょっと待って! なんで私ばっか……」


「喋るな、走れ!」


攻撃の間隔が短い。

これじゃ捕縛どころじゃない。ギョペックさんを守るので精一杯だ。


その時だった。

パシュッ、と乾いた音が響く。


ディーノさんが剣を振るい、飛んできたウインドアローを叩き潰したのだ。

一度ではない。

二本、三本と、まるで打ち返すように。


「なるほど……元は剣士か。」


低く、どこか楽しげな声。


「なあケンゴ、いつもの鍛錬の成果を試してみていいか?」


そう言いながらディーノさんは俺を見る。


「もちろん。見ててやるよ。」


そりゃそうだよな、俺との手合わせだけじゃ物足りないんじゃないかと思ってたんだ。


ディーノさんは片手で返事をすると、一歩前に出て剣を構えた。


「それじゃあ亡霊さんよ、手合わせ頼むぜ。」


亡霊兵が反応する。

空気が揺れ、再び魔力が集まった。


ウインドアロー。


だが、ディーノさんは避けず、剣を軽く振るって風の矢を受け流し、ため息をつく。


「おいおい、何やってんだよ。」


そして、静かに語りかける。


「亡霊さんよ、あんた剣士なんだろ。

だったら魔法に頼らず、正々堂々と剣で勝負つけようぜ。」


その言葉に、亡霊兵の動きが僅かに止まった。

空気が一瞬乱れ、また静かに漂う。


「……上手い。言葉で魔法を封じた。」


ミネルヴァさんが小さく呟く。


亡霊兵は、ゆっくりと剣を構え直した。


張り詰めた空気。

だがもう、魔法を使う気配はない。

この部屋にあるのは、剣士同士の殺気だけだ。


先に動いたのは、亡霊兵だった。


踏み込みは鋭く、迷いがない。

横薙ぎ、返す刃、間髪入れずの突き。


「……っ。」


ディーノさんはそれを、下がりながら弾き、流し、受け止める。


ガン、ガン、と剣がぶつかる音が薄暗い部屋に響いた。


(速い……)


俺は思わず息を呑む。

さっきまで魔法を撃っていた相手とは思えない。

亡霊兵は、完全に“剣士”だった。


「いい太刀筋だな。」


ディーノさんが楽しそうだ。

亡霊兵は構わず踏み込む。

斬撃が続き、亡霊兵の剣がディーノさんの肩口を掠めた。


「ディーノさん!」

「問題ない。」


二人は距離を取り、再び向き合う。

一合。

二合。

三合。


互いに決定打はない。


ディーノさんも攻める。

剣を振り下ろす、のフェイントからの鋭く踏み込んだ突き。

亡霊兵は剣を返し、紙一重で逸らす。


かなり拮抗してる……?

俺達が固唾を呑んで見守っている中、剣戟は、むしろ時間が経つほど激しさを増していった。


最初は、正直言って雑だった。

互いに相手を探るように、ただ数だけを重ねる斬撃。

剣と剣がぶつかる音が、やたらとうるさい。


だが、いつの間にか様子が変わってた。


無駄に振られていた剣が減り、

かわされていたはずの斬撃が、紙一重で届くようになる。


 速い。

 さっきより、明らかに速い。

なのに、不思議と音は整っていく。

 剣がぶつかるたび、乾いた、澄んだ音が響いた。


 どちらも一歩も引かない。

 それどころか、踏み込みは深く、間合いは近くなる一方だ。


 俺には剣術の良し悪しなんて分からない。

 それでも、


 これは、ただの殴り合いじゃない。


 手数が増えているのに、動きは洗練されていく。

 激しくなっているのに、無駄が消えていく。

 そんな矛盾した感覚だけが、はっきりと伝わってきた。


「……あ。」


 次の瞬間、ディーノさんの剣が、亡霊兵の懐に滑り込んだ。


 ほんの一瞬の間の違いだ。


ただ、さっきまで互いに踏み込み合っていた二人の動きが、同時に止まった。


 ディーノさんは、その場で剣を構えたまま。

 亡霊兵は、わずかに体勢を崩し、よろけながら数歩下がる。


 終わった。

 そう直感した。


 亡霊兵は剣を支えにして、ゆっくりと片膝をついた。

 その姿がやけに静かに見えた。

ディーノさんが剣を下ろし、亡霊兵に向かって話しかけた。


「亡霊さんよ。あんたの剣、見たことがあるんだ。俺のとよく似てる。」


 亡霊兵は何も言わない。

 けれど、戦意が消えたのは、さすがの俺にも分かった。


「最後の一手はな……あんたの時代の後で編み出されたものだ。」


 ディーノさんは、肩をすくめる。


「俺の方が、一手多く知ってただけさ。」


 一拍置いて、静かに続けた。


「……楽しかったぜ。ありがとう。」


 亡霊兵は、差し出されたディーノさんの手を取り、ゆっくりと立ち上がる。

思いもしない風景だが、その仕草に、戦いの終わりを感じた。


 次の瞬間、亡霊兵の体は霧のように崩れ、そのまま静かに消えていった。


 床に、小さな音がして、何かが落ちた。


「ドロップ品か。」


手帳っぽいそれを拾い上げたディーノさんは、それを開いてペラペラと捲り、最後のページで手を止めた。

暫くそのページを見つめると、ふっと笑って手帳を閉じた。


「それ、見せてもらえますか?」


声を掛けられたディーノさんが放って寄越した手帳を、受け取ったギョペックさんが開くと、それは古い剣術の指南書だった。

 中身は細かい図と古い文字ばかりで、横から覗き込んだ俺にはさっぱりだ。


 だが、最後のページだけは違った。


「……ここ、書きかけだな。」


 巻末のページは、途中で途切れている。

 何かを考えながら、そこに辿り着けなかった……そんな印象を受ける。


「ディーノさん、さっきこのページ見てましたけど、これは?」

「ああ?」


ギョペックさんの問いに、面倒くさそうに振り向くディーノさん。


「それは……さっきの俺の最後の一手だ。」

「え?」

「俺が勝ちを得た手は、アイツが昔考え出した術ってことだ。」

「それを誰かが完成させて、巡り巡って受け継いだのがディーノさんに、ってこと?」


 ディーノさんは何も言わずにニヤッとすると、踵を返して褒めて欲しそうにフィオナに駆け寄る。


「フィオナちゃ〜ん、勝ったぜ〜!」


 ……それがなかったら、完璧にかっこよかったのにな。


 フィオナとディーノさんがハイタッチする向こう側で、奥の壁が低い音を立てて動き出し、下へと続く階段が姿を現す。


「よし、次だな。」


 俺たちは、さらに下へと進んでいった。


読んで頂きありがとうございます。

「面白い」「続きが読みたい」と思った方は、是非ブックマークや評価をしてください。

作者が小躍りして喜びます。

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