スピナッチクエスト〜最強のほうれん草〜
なろうラジオ大賞5参加作品です。
使用ワードは「クエスト」。
地元の居酒屋に来るのは本当に久しぶりだ。
俺が1番に着いたようで、コートを脱いでいるところへサオリが飛び込んできた。
「ユウジ!おつかれー!」
「おう!久しぶりだな。兄貴は?」
「産直市場寄ってるだけだから、もう来ると思うよ。」
サオリは同い年の幼馴染で、去年兄貴と結婚したので今は義理の姉でもある。
「仕事はどう?慣れた?」
「うん、なんとかねー。朝早いからさ、実は今もう眠い」
「おいおい、寝るなら兄貴が来てからにしてくれよなー」
「寝ないよー、ユウジとコウキくんと呑めるの久々だし!」
兄のコウキは、実家の農家を継いでいて、サオリも去年からは保育士を辞めて兄と一緒に働いている。
「今年は?ほうれん草どう?」
「うん、よく出来てるって。ユウジのほうは?」
俺はと言えば、地元を離れてほうれん草の品種改良を研究している。家業は直接手伝えないけど、俺は俺の得意分野で貢献したかったからだ。
「生食のできる新しいのがうまくいってて、近々品種の名前を決めるとこ。ここまで色々あったから、名付けどうしようかなって。」
ほうれん草の品種名のクセが強いことは一部の人にはよく知られている話だが、いざ自分が名付ける段になると思い入れがある分悩んでしまうというものだ。
「なるほどねぇ。候補とかあるの?」
サオリに促されてスマホのメモを開く。
「えーと…まずは『クリムゾン』。あと『ヴァーミリオン』、『スカーレット』」
「…赤茎系なのかな。でもほうれん草にしては赤すぎない?」
「そうか?じゃあ違う系列でいくと…『チアフル』、『ハピネス』、『パッション』」
「急にテンション高くなったね。」
「じゃあ『サンクチュアリ』…か『アルカディア』」
「壮大だなー」
「じゃあいっそ『エリクサー』か?『カタルシス』は?」
「…お前ら、何の話してんの?」
声のした方を見ると、いつの間にか到着していたらしい兄貴が笑いを堪えかねたような顔をして立っていた。
「何って、ほうれん草だよ。」
と俺が答えると、サオリが
「最強のほうれん草の名前考えてたんだよね~。」
と、付け足した。
「なんだそれ、オレもまぜろよ~」
と、兄貴が楽しげに席につきながら言う。
俺はなんだか、子供の頃3人で漫画やアニメの続きを想像しては、ああでもない、こうでもないと盛り上がっていた事を思い出した。
この、楽しくて懐しい気持ちで考えたなら、きっと最強のほうれん草にふさわしい名前を思いつくだろう。
夜は始まったばかりだ。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました!
作者はほうれん草にも農業にも詳しくないので、完全にふわっとしたイメージのみで書いております。
実際はこうじゃないよ、という部分がありましたらすみません。中二病っポイ名前をたくさん連ねてみたかったんです…