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IFの未来軸「キスハの大人になった時のお話」

 〜辺境他種族包括守護国家キャメロット 国土最外縁宙域〜


「バステト1より各機に通達、作戦開始。哨戒機は直ちに退避。」


 抑揚の無い声で指示を飛ばして、指揮官機でありながらも一番槍としてアタシは目標に突撃する。

 今回の任務は『所属不明・渡航要件不明の艦を監査、抵抗する場合は撃沈』だ、モレッドねぇちゃんが元首になってからと言うものこう言った輩が増えて来ていて参っちゃう。


 アタシの預かってる部隊、通称『玉座を守る獅子』はケット・シー並の推力を持った機体を1個中隊で運用している。

 キャメロットには王様なんて居ないから玉座も無いんだけど、ハーレねぇちゃんとかは「アレを王と言わずして何が王なのか……妾よりも余程王らしくしておるわ。」って言ってたっけ。


 で、話を戻そう。キャメロットは国家として保有する国土はとても小さい、基本国家は1銀河系を持っているんだけどキャメロットは1恒星系のみで国家として成立させている。


 これはそもそもとと様が「銀河系ひとつ丸ごとなんて管理してられるかよ、防衛予算も馬鹿にならねぇ。」って言ったから。主幹産業とかで考えればキャメロットの財政は赤字にはならないんだけど、嫌がった結果がこうなったって感じ。


 でも、実質的に周りの国からはキャメロットのある銀河系は「キャメロットが保有する国土」って認識をされてたりする。実際そんなことは無いけどね!!


 で、今アタシが調査しなきゃ行けないこの艦はキャメロットの首星がある恒星系最外縁の惑星の公転軌道の内側に入ろうとするコースを取っていたからアタシが来たって訳。


「所属不明艦に通告する、貴艦はキャメロットの国土を侵犯している。直ちにコースを変更するか渡航の目的を明かせ。」

「……」

「回答が無い場合撃沈する事も此方は厭わない、速やかに回答されたし。」

「……クソっ!!野郎ども、仕事の時間だぞ!!」

『所属不明艦よりAMRS多数発艦を確認!!第5世代相当です。』

「各機兵器使用自由!!ネズミを食い散らせ!!」

「「「「「「Yes,your,highness!!」」」」」」

「だから!!アタシは王族じゃないし!!」


 アタシがとと様やモレッドねぇちゃんとは種族も何もかも違うのに、アタシがアヴァロンで娘同然に育てられて来た事だったりを知られてるからこういう風に茶化されるんだよね。一応私ももう子持ちなんだけどなぁ……


「たかが国土警戒機程度だ!!こっちは数も性能でも勝ってる!!負けるわけがねぇ!!」

「……侮られていますね?キスハ様?」

「……コロス!!全機!!生意気な小動物を狩り殺せ!!」


 キャメロットは国土が小さい分こう言ったパトロール部隊の数も少ないし、外装も旧型に偽装してるからこういう風に侮られる事はよくある。でもそれはあたしにとって何よりも許せないもの、アタシだけをバカにするならば全然文句は無いの。


「バカにしたな……?とと様とモレッドねぇちゃんを……アタシの家族をバカにしたなぁァァァァァァ!!」

「なんだ!?こいつっ!!訳の分からん動きを!?」

「しぃぃぃぃぃねえぇぇぇあぇぇぇぇ!!」


 直線的な動きでもそもそも敵機がその動きに追従出来なきゃ弱点にはならない、バカにした言葉を吐いた機体の四肢を一つ一つもぎ取るように、絶望を与えられるように攻撃を繰り返す。


 スラスターも、メインカメラも、全部破壊した上でその場に放置する。とと様がこれを見た時に「モズの速贄……」って言ってたけど、ナンノコトカナ〜ヨクワカンナイナ〜ってアタシは言った。


 アタシが1機仕留めている間に部隊員達が他の機体を各個撃破していて、既に所属不明艦以外はアタシが残した1機しか居ない状態になってた。

 遊び過ぎた?いや、そんなことは無いと思いたい。


「投降しろ、命までは取らないと約束する。」

「ちくしょうが……これだけやられて……タダで終われるか!!」

「あっ!?隊長!!」

「やっば!?全機退避!!」


 最後っ屁と言わんばかりに艦の方が自爆を敢行しようとしてきた、艦種的にこいつの動力は核融合炉?AMRSの破壊有効半径は約50kmくらい。ウチの部隊機なら25kmも離れれば十分だけど、除染作業とかがめんどくさくなるから可能な限り離れるに越したことはない。


「ハッハッハ!!お前らの国に少しでも痛手を負わせてやるわぁ!!」


 高らかに宣言するかのように艦長と思わしき声が上がった時、アタシのコックピット内に声が響いた。


「……目標確認、距離48万……射角修正……ポイント……ロック……ワームホール生成……完了、射撃……今!!」


 その声と共に所属不明艦の横っ腹に大きな穴が開いて自爆シークエンスは強制停止されたようだ、あんな事出来るのはアタシは1人しか知らないしこのタイミングで決めて来るのも1人しか居ない。


「エルピダぁ!!アタシの仕事盗ったね!?」

「キスハねぇがモタモタしてたから、また悪い癖出したんでしょ。」

「ふぐぅっ!?だ……だって、馬鹿にされたから……」

「家族を馬鹿にされたら怒るのは分かる、私もそうだから。でもそれで相手に反撃の1手を与えるのは悪手。」

「その通りですぅ……」


 エルピダはアタシと違って「国土防衛師団」の師団長をやってる、本来ならアタシも「辺境宙域警備師団」の師団長クラスの役職が与えられるんだけど、かか様が『貴女に人の上に立つ覚悟はありますか?』と聞かれて「うん、無理!!」と即答しました。


 直後にねぇちゃん達全員から(なんでかエルピダも)チョップを叩き落とされたんだけどさ……解せぬ(´◉ᾥ◉`)

 てなわけで私はウチの家族内どは1番役職的には下の立ち位置だ、それでもみんな「立場なんて関係ないでしょ。」を貫いてるから家族仲は極めて良好だ。


「なんでエルピダが?」

「絶対またやらかすと思って、ねぇの機体にリンクしてたグリテン叔母さんに。」

「oh(´・ω・`)...」


 エルピダは私がやらかすであろう事を先んじて読んでいた、その上で対処不能な事態に陥った際の一手を用意して置いてくれていたようだ。感謝感謝……


「ところで……時間、大丈夫?」

「ふぇっ?……やっばぁぁぁぁぁぁ!?」


 あぁもう!!お迎えの時間じゃん!!


「全機エハングウェンに帰艦!!即時キャメロットへ帰投する!!」


 今までにない勢いで指示を飛ばし、急いで母艦に着艦してキャメロットに戻るルートを設定。

 全機格納を確認してから超光速航行で移動を開始する。


「隊長……今日も忘れてたんですかぁ?」

「2児の母……見た目は完全に活発少女……ふふふ……」

「あぁっ!!センリくんとキンカちゃん!!今お母さんを送りますから!!」

「確か今日はお姉様方のお子様も預かる日でしたよね?」

「……( ゜д゜)ハッ!ならば我らの力が必要なのでは?キスハ隊長は……悲しいけど家事スキルが……」

「うんうん……絶望的、モレッド様とエルピダ師団長はプロ並みなのにな……」

「お前らァ!!本人の前でそれを言うかぁ!!ただ助けてくれるのは正直助かる!!今発言した奴らは今回の作戦報告書を作成する事を命じる、発言のなかったもので本日の予定がこの後無いものについては可能であれば私を助けて!!」


 これがアタシの今の生活、モレッドねぇちゃんやエルピダを支えて支えられて、部下に恵まれながら子宝にも恵まれた最高の生活だ。


 ----------------------------------------------------------------------------------


「「まみー!!」」

「「「「「「「「「「キスハ叔母ちゃーん!!」」」」」」」」」」


 本っ当にギリギリで帰ってこれた……キャメロットは育児制度が全宇宙中でもトップと言えるレベルで充実している。とは言え何時までも家族が仕事で帰って来れないと言うのは子どもにとっても親にとっても宜しくは無い事なので、ウチみたいに家族全員が国の運営に属する重鎮だったり軍の要職に着いている家は本当に大変。


 今日はアタシが皆の子ども達を預かる……面倒を見る日だから急いで帰ってきたわけだ。預かるって言葉を言い直したのはウチはが皆同じ家に住んでるから、いや……本当にローゼン・エーデルシュタインの王城程じゃないけどめちゃくちゃでっかい家なんだよ。


 とと様・かか様・ヴィヴねぇ・グィネねぇ・モルねぇ・オヴねぇ・マリねぇとその子ども達だけでも20人でしょ?モレッドねぇは未だに独り身だからいいとして……アタシが2人の子どもが居て、エルピダが1番多産だったなぁ……1人で8人も居るんだよ?凄くない?


 だから家には総勢で33人も居ることになる、上の子達は手伝ってくれるようになってきたけどそれでも正直手は足りない。

 叔母さん達も居るけど基本的に育児とかには手を出さない、これはかか様の方針らしい。


『母ならば自身の子を育むのに可能な限り自身でなさい、無論どうしてもというのであればモロノエ達は喜んで手を貸してくれるでしょう。但し、甘えては行けませんよ?あなた達より懐いてしまうかもしれませんからね?』との事だ。


「はーい皆さんこんにちは。」

「今日は私達もいますよ〜。」

「皆のお母さん達が帰ってくるまで仲良くしましょうね〜。」

「「「「「「「「「「はーい!!」」」」」」」」」」


 という訳で着いてきてくれる部下は大変心強い、ウチの勝手も知っているしねぇ達も『何時もごめんね?』と言ってくれるので!!アタシが後で小言を貰うだけだから!!


「それじゃ、皆手を繋いでね〜。ほらグウィン、あなたが1番上なんだからお手本見せなさい。」

「むぅ〜……キスハおばちゃんだって普段皆でお出かけの時は1番はっちゃけてるのに……」

「あっ!?なんで今言うの!!」


 慌てて口を塞いでももう遅い、部下達は「流石は隊長……」「姪っ子の目からですらそう見える程に……」「合法ロ○……」「誰だ今合法ロ○つったやつ!?」と各々が会話をしだす。


 流石に合法ロ○は辞めて欲しいなぁ、あと言った奴は後でグィネねぇにチクってやる……子ども達の情操教育トップはグィネねぇなのでそう言った言葉には人一倍敏感なのだ。衛生部門トップでもあるので、健康診断等でありもしない(実際にはちょっと正常値よりも悪い)所をつついて強制的に治療されでもするだろう。



 そんなこんなでわちゃわちゃ会話をしながら自宅に帰るのだ。


 ----------------------------------------------------------------------------------


「さぁ〜、ご飯が出来るまでは私達の誰かとAMRSシミュレーションで勝負しますか!!」

「ふっふっふ……誰が来ますかぁ?」

「相手は指定してくれていいからね〜?」

「隊長はこっちですぅ、何時までも私達に任せっきりは良くないですよぉ?」

「ふぐぅ……」


 わあぁぁん……アタシも出来ればあっちのシミュレーションに混ざりたいよォ……でもアタシも母親だからこっちで頑張らなきゃ、何時までもメシマズの母で居るとかやだもんね。


 ……モレッドねぇとエルピダがグィネねぇの免許皆伝を貰ってるのにアタシは『キスハちゃんは手順通りに作っているのに何故マンガ肉になってしまうんでしょうか?』と評される位に謎が発生する。しかも見た目はマンガ肉なのに味は調理した食材の味だから味覚がバグってゲロマズになるというおまけ付き。


 ちっちゃい頃からモレッドねぇとエルピダと一緒になってグィネねぇと料理の勉強はしたのになぁ……


 そんな事を考えながら、部隊の料理担当(そんな役割は無い独身だけどめちゃくちゃ料理上手なだけ)と厨房に入って今日も腕を振るう。


 シミュレーションルームの方からは「負けたぁ!!」「くっそー!!」「モレッドおばちゃんより強いの?」「おとさんより強い〜?」って声がまばらに聞こえてくる。


 部隊員は全員……と言うか、キャメロットに属する軍人は全員とと様とモレッドねぇ・アタシ・エルピダの実力を知っている。……いや、知らされていると言った方が正しい。

 新人として入隊し、初のキャメロット製AMRSを与えられた時の最初の訓練がその4人の内の誰か対新人全員とだからだ。


 大抵の新人……と言うか全員か。は外から来た人間だから中途半端にプライドが高い奴らばっかりで、とと様をみて「こんなおっさんに習う事なんてねぇよ。」だったりアタシ達を見て「小娘が……ぶち負かして犯してやる。」位に言ってくる奴らが大半で女も大体似た感じだった。


 それを同じスペックの訓練機クラスでぶちのめしてプライドをへし折った結果が今のキャメロットの部隊な訳で、アタシの部隊も漏れなくその洗礼は受けているので「そうかもしれませんね?」なんて口が裂けても言えない。


 前にモルねぇの子が前衛部隊の見学に行った時に同じ質問をして、舞い上がっちゃった隊員が「そうかもしれないっすね!!」って口を滑らせた結果とと様・モレッドねぇ・アタシ・エルピダによる地獄の1ヵ月耐久演習が起こった。


 我ながらあれはえげつないと思ったね、わざわざアヴァロン引っ張り出して(かか様達アヴァロン管理メンバーは居ない)の1ヵ月だったからね……


 食事以外は全て戦闘演習でウチのメンバーは専用機を持ち出すフルスペック、対言い出した隊員と連帯責任になった1個師団でやったよ。


 ホントにボッコボコにし過ぎてさぁ……「もう二度と軽はずみに発言しません!!」って口を滑らせた隊員は言うし、他の隊員達はひたすら涙してた。


 最終日にキャメロットに帰って来た時グィネねぇの「演習お疲れ様慰労会」で出された料理を食べて皆号泣してたし……


 と、言うことがあったわけなので絶対……うん。無いはずだ。


「「ただいまぁー」」

『ただいま帰りました、あら……いつもごめんなさいね?』

「おかえり〜」

「お邪魔しておりますモレッド様エルピダ様にグィネヴィア様。」



 ちょうど3人も帰ってきた、いいくらいかな〜。

 そろそろこっちのご飯も用意出来たみたいだしね。


「いやぁ〜、ワンチャンなら行けるかも知れませんねぇ〜?」

「「「……」」」


 厨房でアタシの手助けをしてくれた隊員の顔色が一気に青ざめる、モレッドねぇ・アタシ・エルピダの表情が抜け落ちて無言のアイコンタクト。

 そして静かに、だが迅速にシミュレーションルームに移動し退路を塞いだ。


「ほほぅ?ワンチャンあるかも知れないと?」

「いいねぇ……なら……やってみようか?」

「私の攻撃を全て避け切って見せられると……ねぇ?」

「( ゜д゜)ハッ」

「ばっ!?」

「キスハ……部隊の今後の予定は?」

「一応最外縁宙域のパトロール自体はあるけど今日みたいなやつなら、自動砲撃のピケットでも充分。」

「そうだね、抜けた穴は私の部隊から捻出するよ。」


 完全に目が笑っていないアタシ達の会話を聞き、愚かにも口を滑らせた隊員と巻き添えを食らうことが確定したメンバーがアワアワし出す。


「安心しろ、以前のように1月も拘束はしない。」

「エルピダの部隊にも申し訳ないしね。」

「精々1週間かな。」


 僅かな希望を与えられ顔色に血色が戻ってくる、ちなみにシミュレーションルームに居なかったメンバーは先の言葉を聞いてしまい全員集合している。


「明日より1週間、キャメロット最外縁宙域に蔓延る海賊共の掃討を開始する。確認できている規模は大規模8・中規模12・小規模36、これらを全て撃滅する。」

「また増えたねぇ、とと様サボった?」

「おと様が「何かあった時使えるだろ?」って言ってたよキスハねぇ様。」

「うむ、貴官達は部隊事に編成し各個撃破しろ。我々は我々3人での編成で動く。」

「あのぉ……もしかして……?」

「言わなくても分かってくれたようで大変結構、我々よりもスコアが低ければ……」

「キスハねぇ様のゲロマズ料理修行の味見担当1ヵ月。」

「そうそ……エルピダぁ!?」


 各々が「隊長のアレを食うのか……1月も!?」「死ぬ……死んでしまう……」「いや待て……もしかすると勝ったら……」「グィネヴィア様の料理による食事会か!!」と会話をする。


 グィネねぇの話が出た時にモレッドねぇが目線をグィネねぇに向けると微笑んでコクリと頷いたので隊員達は諸手を挙げて大歓喜、そんなにアタシの料理はいやかぁ!!


 そんな事がありながら夕食を食べ(アタシのマンガ肉は悲しいかな誰も手を付けなかったのであたしが食べたちゅらい……)演習準備という事で隊員たちは急いで基地に戻って整備や居残り組に報告(なんでそんな事言ったぁ!!と喧嘩が起こったらしい)翌日の演習に備えた。


 結果?ウチの3人で圧勝に決まってるじゃん、まぁ頑張ってたからグィネねぇの料理は振舞ってたよ?アタシの料理試食は遂行されたけどね!!

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