クラーケンをハンバーグにすると
ギィーッ!
私たち2人は、おそるおそる店の中に入った。中には誰もいない。明かりもついていない。不気味な静けさが漂う。
どうやら、電気をつければいいようだ。
電気をつける。中の様子をひととおり見てみよう。どうやら、公衆トイレもあるようだ。
トイレの明かりをつける。ちょうど小便をしたくなっていたところなので、迷わず直ちに小便をする。そして手を洗った。
我々2人以外は誰もいないようだ。誰かがいる気配すら感じない。
すると、いきなり声がした。
『ようこそいらっしゃいませ。あなたたちに食べさせる料理はございませんので、とっととお帰りください。』
おいおい、なんだよその言いぐさは。こっちは道に迷って、やっとのことでここを見つけたんだぞ、と言ってやりたかったが、声はすれど姿は見えず。
さらに奥に進むと、扉があった。この奥が、どうやらお客さんを迎えて、食事を注文するフロアのようだ。
我々は扉を開ける。
ギィーッ!
すると、そこに立っていたのは、シカの頭をした、シカ人間と、イノシシの頭をした、イノシシ人間の2人だった。
「うわあああーっ!」
驚くのも無理はない。『かぶりもの』でもない限り、あれは人間ではなく、獣人というやつだ。
まさか、我々は、こいつらに食べられてしまうのか?と思ったら、シカの頭のやつが、気安く話しかけてきた。
「ようこそいらっしゃいませ。当店は、何でも
ハンバーグにする料理店です。
たとえば、このようなものもハンバーグにしてみせます。」
シカ頭と、イノシシ頭が、後ろを振り返ると、そこには巨大な水槽が現れ、そこにいたのは、巨大なタコだかイカだかの化け物。
どうやら、あれがクラーケンというらしい。
果たして、あんな化け物みたいなのが、本当に
ハンバーグになるのだろうか。
「こちらは、既に調理済みのやつです。」
そう言って、イノシシ頭が差し出した皿の上に乗っかっていたのは、ハンバーグだ。
あのクラーケンが、本当にこの、目の前の
ハンバーグになるのだろうか、何か魔法でもかけたのではないか、だいいち、あのタコだかイカだかのやつが、ハンバーグになるとしたら、ハンバーグというより、かまぼこだ。
半信半疑だったが、とりあえず味見をしてみることにした。
「おや?これは明らかに、我々のよく知っているハンバーグだ。」
「だけど、これで完全に信用するわけにはいかないな。次は調理場を見せてもらおうか。」
我々は、調理場に足を踏み入れることにした。
調理場には、いろんな動物の顔をした、人間みたいに2本足で立ち上がっているようなやつらが、ハンバーグの肉を調理していた。
とにかく、いろんな肉を調理しているようだ。
もちろんハンバーグなので、わからないくらいに細かくミンチにして、成形してから、充分に火を通すのだが、鶏肉もあるし、また、ヘビやカエルまで・・・。
ゲテモノなんて言われるが、彼らは普通に食しているという。
しかし、あの巨大なクラーケンをハンバーグにしたら、いったい何人分になるのだろう。
それに、肉を保管しておくためには、これまた、巨大な冷凍庫とかが必要になると、我々は考えた。