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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

シャーロットシリーズ

シャーロット・レヴィアタンという女

作者: 柚杏

初の短編です、短編難しいですね(汗)

楽しんでいただけると嬉しいです。

シャーロット・レヴィアタンが死んだ。


問題を起こし学院を中退して、領地に戻る最中に盗賊に襲われて、逃げる最中に馬車が崖から落ちたそうだ。

彼女は数日前まで王太子である俺の婚約者だった。最後に聞いた彼女の言葉は「疲れました」だった。



シャーロット・レヴィアタンという女は、王国の青薔薇と呼ばれていた。薄青色の髪をなびかせて、余り表情を変えず笑わない冷たい女だった。だが世間では淑女の中の淑女と褒められていたが、それは上辺だけの事だと俺は知っている。


シャーロットは自分の取り巻きを使って、男爵令嬢のミアを虐めていたのだから。


ミアは最近男爵家に引き取られたばかりで、市井での生活が長くいきなり貴族階級の厳しい世界に入った為、頑張りながら陰で泣いている健気で可哀想な令嬢だ。

俺が初めてミアに会ったのもイジメを受けて、汚れたスカートで表を歩けなくて校舎裏で泣いている時だった。

泣いている少女を気にかけて声をかけると、潤んだ瞳でこちらを見上げてきた。汚れを拭う為に濡らしたハンカチを差し出した時に見せてくれた、純粋な笑顔に俺は心引かれた。


その一件からミアと話す事が増え、一緒に行動する事が多くなった。いつも一緒に居た将来の側近達にも受け入れられて、俺達はミアの虜になって行ったんだ。

ミアが笑えば皆も笑う、ミアが苦しんでいる時は皆で苦しみを取り除くようになっていった。


最初に異変に気がついたのは、宰相を父親に持つルインだった。一緒に昼食を取り教室に送っていくと、ミアの教科書の中のページがボロボロに切り裂かれていた。

タチの悪いイタズラだと憤慨して、やったものは名乗り出る様に言うが誰も名乗り出なくて、ミアには新しい教科書を贈った。

それからもミアの私物が無くなったり、壊れて発見される事が続いた。


ある日はミアの動きがおかしいと騎士団長の息子のカイザーが指摘すると、誰かに突き飛ばされて足首を痛めたとミアが語った。なるべく傍を離れないようにしようと、皆でミアを守る事を誓った。


ある日、数人の女生徒に囲まれて泣いていたミアを、侯爵令息のダミアンが連れ出して助けたと聞いた。生意気だとイチャモンをつけられて、出生をバカにされたそうでミアは泣き腫らした目を擦り、まだポロポロと涙を流し泣き続けていた。


弱音を吐かずに耐えていたミアが、シャーロットに呼び出されて、脅され怖かったと泣きながら訴えてきた。俺に近づくな、さもなければ覚悟しろと脅され、怖い表情で階段から突き落とそうとしてきたのだと。あの女は俺がミアを気遣っているのが気に入らないのか、怒りの矛先を弱い立場にあるミアに向けて発散していたのだと気がついた。

普段から小言が多く、不愉快な事を言ってくるシャーロットの事は好きでは無かったが、決定的に嫌ったのはこの時だった。


陰で取り巻きを使ってミアを虐めていた証拠を集めて、昨日の夜会で盛大に婚約破棄をしたばかりだった。

数々の罪を読み上げても自分は悪くないと思っているのか、一切罪を認めず謝罪すらしなかった。何度も俺の後ろに恐怖で隠れているミアに謝れと言っても、聞き入れず謝罪する必要性が見つからないと言い逃れていたシャーロットにはほとほと愛想が尽きた。

最後罪を認めろと怒鳴りつけると、乾いた笑みを浮かべて「疲れました」とだけ答えた。


そして婚約破棄を言いつけて、あの性悪な女からミアを守りきった祝いとして夜会を楽しみ帰路についた。



翌朝父上に呼び出されて聞かされたのは、シャーロットの訃報だった。

俺に夜会という公衆の面前で婚約破棄され、王都に居づらくなるからと夜のうちに領地に向かった道中、賊に襲われ逃げる最中馬車が崖から落ちたという事だった。険しい崖のため救出も叶わず、間一髪飛び降りた御者1人だけ生き残るという惨事だった。


そして父上から、何故独断で婚約破棄をしたのかと責められた。ミアを虐めるような人間が王妃となってもろくな事が無いと何度も説明するが、父上の怒りが収まる事はなく、部屋での謹慎を言い渡された。

納得出来ずに父上に言いよると、お前の事を見損なったと言われた。階段からミアを突き落とそうとする人間が人々の上に立つのはおかしいのに、何故父上は分かってくれないのだと憤りを感じつつ数日の謹慎を受けた。


数日後、父上に呼び出されて行くと、そこには何時も一緒に居たミア以外のメンバーが揃っていた。

皆に歩み寄り近況を聞くと、皆も謹慎を言い渡されて謹慎をしていて、何故この場に呼ばれたか分からないとの事だった。

そうしていると父上や宰相、騎士団長に公爵が室内に入ってきた。

何事だと身構えると、先日我らが書き記したシャーロットの罪を書いた紙がばら撒かれた。何故この様な事をするのか分からずに見ていると、全てシャーロットとは関係無いか、大半は捏造だと告げられた。罪を立証するなら裏付けは取ったのかとか、証拠は見つけたのかとか聞いてくる。

この罪は被害を受けた本人のミアが言っているのだから、間違いなどあるはずが無いと訴えると盛大なため息をつかれてしまった。

結果俺は王太子の地位を剥奪、皆も後継者から外される事が決まった。

何故立場の弱いものを助けて守ろうとした事が、罰を受ける事になるのか分からずに反論するが、結果は翻る事は無かった。


その翌日から俺は学院に復帰したが、皆は跡継ぎから外された影響で自主退学をして学院には戻らなかった。

学院内を歩くと、至る所から射るような敵意を含んだ視線に晒された。夜会の一件や事故の話を聞いたのか、俺に同情的な視線は全く存在しなかった。俺には冷たかったが、シャーロットは皆に慕われていたのだと痛感させられた。


痛い視線を受けながら、なんとか授業を受け昼休みになった。久しぶりにミアと過ごす時間は、色々あり荒れていた俺の心を癒してくれた。色々失ったがミアが笑ってくれるなら、それだけで良いとすら思えてきた。


そんな俺とは違い、心優しいミアは皆が居ない事をしきりに気にしていた。なので婚約破棄をした事で、俺が王太子の地位を失った事や、皆が跡継ぎから外されて退学した事を伝えた。


するといきなりミアの表情が変わった。こんなの予定外だと叫びヒステリックに騒ぐ姿は、今まで見たミアとは別人の様で醜い醜態だった。

それでも可愛らしいミアの姿に縋りたい俺は、目の前のミアに声をかけると、怒涛の様な罵詈雑言が返ってきた。


王太子ではない俺には価値なんて無いと…。


あの出会いの日校舎裏で泣いていたのは演技だとか、女共に注意を受けたのは許嫁に手を出すなと言われていたとか、シャーロットには注意されただけで罪を擦り付けたなどと。


何も理解していなかったのは、俺自身だったのだと痛感させられた。


急ぎ城に戻り父上に、ミアに騙されてシャーロットに婚約破棄をしてしまった事実を告白した。必死に言い募るが、父上は俺の言葉などもう聞いてくれる事も無かった。


俺が物事を考えずに下した判断で、シャーロットの人生は終わってしまったのだと思うと心苦しく感じて胸が痛む。

俺はシャーロットへの贖罪で残りの人生を祈るため、教会に身を寄せる事とした。どうかシャーロットの御魂が安らかに眠れますように…。




シャーロット視点


先程の夜会で、やっと婚約破棄を言い渡された。

やっと言って貰えた事で少し本音をこぼしてしまったのは失敗だったのかもしれないが、こんな貴族の振る舞いや制限を受ける生活は本当に疲れているのだ。殿下のしりぬぐいも、これでやらなくて済む。


あの男爵令嬢が殿下にまとわりつき出してから、いつ言って貰えるかと期待して思っていたが、まさか罪の捏造までして婚約破棄を言い出すとは思わなかった。あの人が良いだけの殿下にしては珍しい事だから、男爵令嬢の入れ知恵かしら。


言い渡されて会場を後にして早速城に訪れて、国王との謁見を求めた。

出来の悪い息子を支えてくれなんて、国王様も無茶振りにも程がある!問題を起こしまくるあの一団の今後は、進言しなくてもこれで決定になるはずだ。

私の庇護下にある殿下が私に婚約破棄を求めれば直ぐに破棄すると、事前に約束を取り付けておいて正解だった。私の能力を買ってくれているのは嬉しい事だが、私は私のやりたい事があるのだから。

これで誰にも邪魔されずに身分を捨てて、自由を手にする事が出来る。堅っ苦しい貴族社会なんて未練なんて微塵もない、これで私は晴れて自由の身だ。


国王様に適当に私という存在を殺してもらって、私はただのシャーロットとしてこの世界を自由に歩き回るのよ!

誤字脱字変換ミスがありましたら、ご連絡よろしくお願いします。


一応ざまぁ作品ですが、ちゃんとざまぁできてるのかな…。自由を愛するシャーロット嬢でした、なので死因の馬車が崖に落ちたは国王様の虚言です。

色々書い散らしてますので、気になった方は他の作品もよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] シャーロットの自由なその後が読みたかったです。 むしろここからが本番ですね。 身分を捨てたシャーロットはどんなことにチャレンジしていくのかな〜?
[一言] 恐らく王が決めただろう婚約を独断で取り繕えない形で破棄すれば後継から外されて当然 その程度の頭も回らない奴に国を任せられる訳もなし まあそれ以前の問題だったようだけど 庇護者を貶めるとか
[一言] 男爵令嬢がざまぁされていませんよ。上位貴族令嬢の罪をでっち上げた冤罪事件ですから、厳罰ではないでしょうか?
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