表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【本編完結】若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!  作者: はづも


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/77

5 離さないって、決めたんだ。

 ショーンは活発な男の子で、今いるのはホーネージュでも有名な、アーネスト領雪まつりの会場。

 当然、かなり人が多い。

 だからカレンもジョンズワートも、ショーンが迷子にならないよう気を付けていた。

 それは観光客に紛れた護衛だって同じで。

 三人に……特にショーンになにかあれば、すぐに助けがくるはずだった。


 そろそろ違うものを見に行こうと、三人が移動を始めたときだった。

 道行く人にぶつかって、一瞬、ジョンズワートとショーンの手が離れてしまった。

 まだまだ小さなショーンは、あっという間に人混みにのまれてしまう。


「ショーン!」


 必死に手を伸ばすが、ショーンの方はといえば、気の向くままに違う方向へ進みだす。

 ジョンズワートも護衛もすぐに追いつくことはできず。

 ショーンは、一人でどこかへ消えてしまった。

 その後、皆で必死に探すがショーンは見つからない。

 少し経ったタイミングで、護衛がジョンズワートにあるものの存在を報告した。

 高低差を利用して作られた、雪でできた長い滑り台である。

 いくら人が多いとはいえ、カレンもジョンズワートも、複数名の護衛もいたのである。そんな中、こんなにもすっといなくなるのは難しいだろう。

 だが、この滑り台を見つけて、一人で滑り下りてしまったのなら。降りた先で駆けて行けば、そのまま姿を消すこともできる。

 先ほど滑り台の楽しさを存分に味わったショーンなら、これだけの高低差のものでも一人で乗ってしまうかもしれない。

 聞き込みをすれば、小さな男の子が一人で滑っていった、という証言を得ることもできた。

 ショーンは、滑り台を使って大人たちの目が届かない場所までおり、そのままどこかへ行ってしまったのだ。


 カレンももちろんだが……ジョンズワートの心臓は、どっどっど、と嫌な音を立てていた。

 ショーンが、自分たちの元からいなくなった。

 ただ迷子に――それも十分に危険なことではあるが――なっただけかもしれない。

 しかし、ジョンズワートは二度にわたって家族を誘拐されている。……一度目は、偽装だったけれど。

 ジョンズワートは、今まで何度も大事な人を失いかけているのだ。

 今回も、もしかしたら誘拐されたのではないかと。

 ジョンズワートの中で、どんどん不安が大きくなっていく。


 なにも公爵の看板をぶら下げて遊んでいたわけではないが、自分たちが公爵家の人間だと、わかる人にはわかるかもしれない。

 義理の両親にもらった防寒具も、見定めるつもりで見れば簡単にわかる上等なもので。正体を知らなくとも、ショーンがお坊ちゃんであることは理解できるだろう。

 あの幼子を誘拐の対象とする理由は、十分にある。


 冬だというのに、ジョンズワートからは嫌な汗が流れる。

 早く、ショーンを見つけなければ。

 ショーンが戻ってくるかもしれないから、カレンと護衛の一人には雪像がある場所に残ってもらい、ジョンズワートを含めた他の者はショーンの捜索にあたる。

 必死になって駆け回るが、やはりショーンは見つからない。




 呼び方は今も「わとしゃ」だけれど。ショーンとも、ずいぶん親子らしくなれた。

 もしかしたら、そう遠くないうちにお父さんと認めてもらえるのではないかと、期待していた。

 離れ離れになっていた分、大事にするつもりだった。もう妻子を離さないと誓っていた。

 それなのに、また、失うのだろうか。


「ショーン! どこだ、ショーン! ショーン!」


 ジョンズワートの叫びもむなしく、息子が見つかることはなく、時間だけが過ぎていく。

 絶対に失わないと、もう手を離さないと決めていたのに――大事なものが、ジョンズワートの手をすり抜けていく。

 最初にカレンが消えたときのこと。再会後、カレンとショーンが誘拐されたこと。過去の恐怖が、ジョンズワートの脳裏に蘇る。

 大きな声を出しながら走り続けたジョンズワートは、はあはあと荒い息をしながら膝に手をつく。


「ショーン……」


 涙がこぼれてしまいそうだった。

 恐怖に足がすくみそうだった。

 けれど、このまま立ち止まっているわけにはいかない。

 今度こそ、大事な人を失いたくない。

 疲れていたって、挫けそうになったって、追いかける。見つけ出す。諦めない。

 ジョンズワートはこぼれそうになる涙を拭き、ぐっと顔を上げた。


「絶対、見つけるから」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ