2 どう見たって、父と息子で。
ジョンズワートは、今度はショーンと共に砂のトンネルを作り始めた。
二人で協力して砂の山を作り、ある程度の大きさになったら両側から手を突っ込んで、トンネルを開通させる。
手の長さの問題があるから、その多くを掘り進めたのはジョンズワートであるが……。
ショーンの気持ちも考え、息子の速度に合わせてゆっくりと作業をした。
トンネルが開通したら、その中で手を繋ぐ。
ショーンとジョンズワートは、嬉しそうに笑いあった。
そこまでできたら、今度はカレンを呼びに行って。
「おかあしゃ、みてて!」
ショーンはもう、それは得意げに。
トンネルに手を突っ込み、ジョンズワートと手を繋いでみせた。
ちなみにこのとき、ジョンズワートも褒めて褒めてという顔をしていた。
――この父息子、同じ顔をしている。
やはりカレンは吹き出してしまった。
3歳と27歳なのに、同じ顔をして「みてみて!」してくるのだ。
親子なんだなあ、と思わせる光景だ。
息子はともかく、27歳の旦那が、トンネルを作ってはしゃいでいる。
もう、可愛くて、おかしくて、面白くて。
それでも大笑いしてしまっては流石に申し訳ないから、軽く笑いが漏れる程度に押さえた。
笑いが止まらないカレンを、トンネルに手を突っ込んだままのジョンズワートが、不思議そうに見上げる。
「カレン?」
「いえ、二人がとても可愛らしい、から……。ふふっ、ふふふっ」
そう言われてようやく、ジョンズワートはまたしても幼子と同等にはしゃいでいたことを自覚した。
やや恥ずかしかったが……。愛する人が楽しそうならそれでいいかと思い、そのまま遊び続けた。
そんな三人を、チェストリーは離れた場所から見守っている。
離れてはいるが、一応、彼らが見える場所ではある。
チェストリーから見えるということは、ショーンにも彼の居場所はわかっている、ということで。
時たま、ショーンがチェストリーを遊びに誘うこともあった。
「俺はいいよ。ワートさんと遊んでおいで」
けれど、チェストリーがそう返せば。
少し残念そうにしながらも、ショーンはジョンズワートの元へ戻った。
チェストリーは、少しばかり期待してしまっていた。
ジョンズワートではなく、自分でないと嫌だと、ショーンがわがままを言うのではないかと。
しかし、そんなことはなく。
ショーンは、チェストリーに遊びを断られたあとも、ジョンズワートに笑顔を見せている。
手を繋いでいなくたって、ジョンズワートについて回っているのだ。
ショーンが海に入らないよう、警備はしっかり配置されているが……。
ジョンズワートとの遊びに夢中で、今のところ、無理に海へ向かう様子もない。
「……もう、大丈夫なのかもしれないな」
寂しさと、喜びと。悔しさと。
チェストリーは、色々な感情を抱きながら、よく似た父子を眺めていた。
ジョンズワートと遊ぶショーンは、本当に楽しそうで。
色だって同じだから、どこからどう見ても仲のいい親子だ。
今日は、まだ旅行初日。だから、今後について決めるにはまだ早いが――この時点で、チェストリーには、父親交代の日が見えていた。




