外伝最終話・前編 卒業式
狙撃にっき16万PVのお礼の外伝です。
外伝はこちらでラストのお話にしようと思っています。
前後編か、前中後編か、、書いてみて決めます。
定期更新の合間を見ながらにはなりますが、なるべく早めに続きもUPするつもりです。
目標としては一週間以内!
リタがオーラン騎士軍事学園に来るのは久しぶりだ。一応リタの所属は本校の教師であるので、久しぶりというのはいささか問題があるのだが、リタは特殊な立場の人間であるので咎められることも、クビになることもなくのほほんと過ごしている。
リタを知っている生徒がほとんどいない新校舎、”新”と呼ぶにはもうすっかり落ち着いた校舎の中をスタスタと進む。そうして視線の先に知り合いを見つけると、文字通り音もなく忍び寄った。
「やあフォル、久しぶり」
声をかけられた本人よりも、隣を歩いていた教員が「うおっ」と驚いた声を上げ、当人は至って冷静に「なんだ、リタか」と返した。
「あ。本当だ、リタ先生。お久しぶりです」
フォルの隣の若い教員に挨拶されるも、リタは小首を傾げて「誰?」と一言。
「ひどいなぁ、、、、ペインですよ。以前に何度か教官見習いでお世話になってますよ?」
「ペイン?」
「えーっと、、、あ、そうそう、ルクスと夜間警備をしたこともある、あの、、、」
「ああ、あのペインか? 何? また見習いにきているの?」
「いやいや、一昨年正式に教員として採用になりましたよ。リタ先生、、、、噂には聞いていましたがどれだけ学園に来ていないんですか?」
「いや、たまに来てたよ?」
「絶対嘘でしょ」
そんな益体もない会話をしていると、フォルが「それで何しに、、、、ああ、いや、そうか」と言葉の途中で納得したように頷く。
「え? なんですか? 僕にも教えてくださいよ」ペインの言葉にとても面倒くさそうながら「今日はノリスの卒業の日だからな」と言った。
「ノリス? 今年の主席のノリスですか? それとリタ先生になんの関係が?」
「なんだ、本当に知らんのか? ノリスはお前もよく知る、あのルクスの妹だぞ?」
「ええ!? 本当ですか!? そんな話全然聞いたことないですよ!?」
「別に噂になってはいないからな」
「はー、、、そうなんですか。それで、ルクスの妹だとなんなんです?」
「本当に知らんのだな。ノリスはリタの同居人だぞ」
「げ!? 本当ですか!? じゃあ、ノリスを怒らせたらリタさんに消されるってことですか?」
「そうね。例えば若い教官がノリスにいじわるしてるようなら消すわね」
「いやいやいやいや、目が笑ってないです。怖いですよリタ先生。俺めっちゃ丁寧に教えてましたからね、ね? フォル先生?」
「さあな。知らん」
「フォル先生〜俺の命の危機ですよ〜」
すがるペインを無視して、フォルはリタに視線を移し「まさかとは思うが、新聞部の面々が集まるのか?」と聞いてくる。その表情はとても面倒くさそうだ。
「全員は無理だったみたいだけど、何人かは来るみたいよ」
「新聞部って、、、あの、伝説の?」ペインの言葉は2人とも無視。
あの、奇跡のような1日から8年。およそ4年前、オーラン騎士軍事学園は軍事学校から国家を支える人材育成の場へと軸足を移し始めた。
軍事力以外も評価されるようになったオーラン騎士軍事学園において、ノリスは1年目からメキメキと頭角を表し始め、新聞部でも辣腕を振るい、そうして主席で本日という日を迎えているのである。
あの、いつ倒れるかわからなかった娘が、信じられないな。と、思いつつも、日々顔を合わせているノリスの溌剌な顔を見れば、もはや病気は全く気にしなくて良いのだと確信できた。
「とにかく騒ぎだけは起こさんでくれよ」
「あら、私がいつ騒ぎを起こしたかしら?」
「、、、、、はぁ〜」とため息だけ残して、フォルは去っていった。
リタが次に見かけたのはラヴィトーミーヴィアだ。
「ラミー」振り向いたラミーは「リタ先生、ご無沙汰しています」と深々と頭を下げる。それから顔を上げると「というか、たまにはちゃんと仕事してください」と鋭い視線を向けてきた。
「理事長代理にそう言われると、流石に仕事しないとまずいかな?」
「まぁ、もう諦めているので、良いのですが」
「どう? 理事長も板についてきたかしら?」
「代理ですよ。なんとかやっています。何せ、新しい人材を早急に育成しろと叔父も、その上のお方も無茶を仰るので」
「フォレットは結構無茶いうわよ。頑張ってね。それよりもリンカートさんはお元気?」
「はい。元気にお過ごしです。たまには顔を見せてあげてください」
「そうね。約束するわ」
「そのくらいはっきりと学園の仕事も約束してくれれば良いのですが、、、そういえば、先ほどルクスとソニアが挨拶に来ましたよ。一緒ではないのですか?」
「ええ。どうせ会場で会うでしょうから」
「リタさんらしいですね。今日はサラースも来るので、よかったら声をかけてやってください」
「ええ。見かけたらね」そんな会話をして、その場から離れる。
ルクスたちももう来ているのか。なら、旧校舎に行ってみようか。
そんなふうに思って、リタの足は旧校舎へと向かうのだった。