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19  城山ファイル(3)


城山課長を見送った再生課は、城山課長が来るまでの自分達を思い出した。

一度は会社を辞めようとしたが、止められ、そこからだらだらと会社に執着していた。


会社で何もする事がなく、やる事といえば自分達を言葉巧みに退社させようとする上司を追い出す事だけだった。


自分達が会社のお荷物扱いをされていたのを知っている。しかし、辞める勇気すらなくなっていた。そして、毎日泥沼に少しずつ沈んでいく気がしていた。


そんな時に城山仁美が来た。


彼女の言葉で始めは敵だと認識したが、城山の動きは言葉とは裏腹に思いやりがあった。


駒田は子育てを一人で抱え込み

一歩も動けなくなっていた。

でも、城山のお陰で相談する相手が出来た。相談する事で心にも余裕が出来た。


大俵は自分の性格に合わない営業で苦しんでいた。

でも、正しいと思える営業をする事でもう一度仕事の楽しさを思い出した。


有野は仕事仲間に苦しめられていた。それで自分の設計を忘れていたが、城山のお陰で思い出せた。お客様の要望と自分の設計をピタリと合わせていく。それがパズルのようで嬉しかった。

この喜びを思い出せたのは、城山が走り回ってくれたお陰だ。


式森はセクハラに悩んでいた。声を上げる事が恥ずかしく、泣き寝入りだった。だが、城山の体を張った行動で被害を訴える勇気をもらった。勇気で自分の行動を前向きに変えたのだ。


高橋は自分の狭い視野の中で生きていた。その為にいろんな人と軋轢を生じていた。

でも、その人の立場に立って行動する事を城山から学んだ。今もその事を念頭において努力している。そのせいか社内で、会話する人が増えてきた。


再生課は現在、社内で一番入りたい課に生まれ変わった。

そこで働く人が生き生きしているからだ。

生まれ変わらせた本人は、その大業を知らない。



◇□ ◇□ ◇□ ◇□


私の会社を出てから、娘の美月も、大樹も一言も喋らない。


待たせ過ぎて怒っているのかな?

ここは、迎えに来てくれた事も含めてお礼を言わないと。


「直也さんも大樹も美月も、会社まで迎えに来てくれてありがとうね。みんなが部署の部屋にいるからビックリしちゃった」


「そうなんだ。せっかくの結婚記念日だから迎えに行ってビックリさせようと思ったんだよ」

直也がにこにこと答える。


でも子供二人は俯いたままだわ。


「どうしたの? 美月も大樹も元気ないけど大丈夫? もしかして、待ってる時におじさんが怒鳴り込んで来たのを見た?それでビックリした? それとも気分が悪いのかしら? お腹が空きすぎた?」

途端におろおろしてしまう。


そしたら、急に子供達が笑い出す。

「ははは、やっぱりお母さんはそうだよね?」

「うん、そうだ。母さんはいつも通りでいいんだよ」


美月と大樹の言ってる事がわからなくて、キョトンとしてしまう。でも、なんだか二人が元気を取り戻してくれたのなら、まぁいいか~と一先ず心配症が引っ込んだ。


直也さんはわかっているようで、一人納得して『うんうん』と頷いている。


「そう言えば、お母さんってお父さんの心配はしないよね?」

美月が不思議そうに私と直也さんの顔を交代交代に見る。


「結婚記念日だから、特別に教えてやろう。私が母さんに言ったプロポーズの言葉なんだが、『心配しなくても僕は自分を守れるし、あなたも守る。あなたが僕の心配をすると、心配をするあなたを僕が心配をするので、あなたは僕の心配はしないで下さい』って言ったんだ」


「なんだか問答みたいなプロポーズだよね? それってプロポーズなのか?」

大樹がおかしそうに吹き出す。


「うふふ、でも直也さんがそう言ってくれたから、直也さんはいつでも大丈夫だって今でも思えるの」


「夫婦で惚気るなんて、まあ、今日は結婚記念日だから許してあげよう」

美月は私の手を握って歩き出す。


小さい頃、よく手を繋いだなーって思っていたら、大樹も私の肩をポンポンと叩いてくれた。


今日は色々あったけど、一日の終わりにこんなに素敵なご褒美があるなんて、明日も頑張れるわ!!



最終話までお付き合い頂きありがとうございました。


また、次作を読んでいただけると 嬉しいです。

  (ころも)裕生(ゆう)

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