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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

聞き耳を立てる

作者: タカとん

そいつは肩を落としていた。

「どうしたものかなぁ」

「そんなに悩んだところで何かいいことがあるのかい。そんなに悩む暇があればさっさと家に帰って全部忘れることだな。」

「いやしかし、目の前で車に跳ねられちゃあたまったもんじゃない」

「最近は物騒になってきたんだ、そんなもんさ。時代かねぇ、あんたも気を付けることだ。」

夜風が会話の間を流れている

「多すぎやしないかねぇ、ここらじゃ顔見知りももうあんたぐらいなもんさ、嫌になるね」

「嫌になるったってあんたには家があるじゃないか、俺は逃げちまったからなぁ」

「家があるったって、そこに帰っても口も聞かない女が一人いるだけさ」

「飯を用意して待ってくれてるだけありがたいじゃないか」

「アイツにも愛想つかされてんのかねぇ、この前毒を盛られてたよ」

「ほぉ、よく生きてたなぁ、それでもウチの前のよりはましだわなぁ」

「あんたのとこの人は、ありゃ運が悪かったね、暴力を振るうよな奴だなんて、初めはわからねぇからなぁ」

「それでも愛してたんだがなぁ」

「右目が潰されちまったのにかい?」

「そりゃあ、その頃にはこっちだって殺してやろうと思ってたさ」

「物騒な世の中だねぇ」

「あんたそろそろ帰ったほうがいいんじゃないのかい」

「いやぁ、もう少し居ようと思ってたんだがね」

「そろそろ雨がふりそうだ、早く帰った方がいい」

「じゃあそうさせてもらうよ、明日も会えるかい」

「わからんなぁ死んでるかもしれねぇなぁ」

「あんたまだ14だろ、まだまだこれからだよ」

「そりゃあ17までは生きたいねぇ」

「そりゃまた長生きなこった。じゃあな」

「じゃあ」

そう言うとそいつは尻尾をふりながら帰っていった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 路地裏で会話をしている猫たち、という光景が浮かんできました。猫の人生にも色々あるんですね。
[一言] オチが可愛かったです。 これぞショートショートといった感じですっかり騙されました。
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