王子達も頑張る!
シオン達が張り切ってドンパチしていると─
イルミナ達は転移で封印の間に飛んだ。
「これが封印の扉……」
扉と言っているが、巨大な岩が奥への入口を塞いでおり、大きな魔法陣で封印されていた。
「これは凄いな……」
「この向こうにイフリートが!」
圧倒されていたメンバーは気を取り直して、当初の予定通り、封印の間を後にした。
封印の間の周辺には魔物が居なかった。まぁ行き止まりだしね。
王子達二人が先頭を行き、後ろからイルミナやノーム、リヴィがフォローできるように歩いていた。
!?
「ようやくでてきたぞ!」
全身が溶岩でできたゴーレムだった。明らかに、山の入口にいた魔物とレベルが違うとわかる出で立ちであった。
「穿て!水の龍よ!『水龍波』!」
溶岩ゴーレムにリヴィが速攻で放った水の龍が一直線に向かっていき、溶岩ゴーレムを一撃で粉々にした。ジューーーーーー!!!!!と、水が熱っせられて水蒸気が起こった。
「ちょっと!リヴィさん、俺達でやらせて下さいよ!」
アースが獲物を取られて抗議した。
「すまぬな。御主達のレベルでは難しい相手と思って先に倒した。今度から気を付けるとしよう」
『う~む。クリス殿を守ると言ったが、敵を先に倒すのはまずいのか?どうする?………そうだ!』
「では、こうしよう。剣を前に出してみよ」
クリスとアースは言われた通りにした。
「我が力よ宿れ!エンチャント!」
リヴィは二人の剣に水属性を付加した。
「これで戦い易くなるだろう。思いっきりやるがいい」
「おおっ!リヴィさんありがとう!」
火山に生息する魔物に、水属性は絶大な威力を発揮し、まだ二人には難しい魔物も倒していった。
「ハァハァ………なんとかやれてるな?」
「そうだな。まだいけるか?」
第二チームは、ダンジョンで例えるなら最下層のボス手前から入口に戻っている状態であり、魔物のレベルが高かった。剣術はアースの方が上であったが、魔法と剣術を組み合わせた戦い方はクリスが上であった。二人はお互いのレベルが近く、息のあったコンビネーションで戦っていた。
そして─
「二人とも、ここまで良く頑張った。だが、ここまでだ!」
リヴィが二人を止めた。
「どういう事ですか?」
「二人とも、もう限界だろう?無理をするな。まだ先は長い」
リヴィの言葉にクリスは反論した。
「ま、まだやれます!戦わせて下さい!」
「クリス君、どうしてそこまで頑張るのだ?」
イルミナは不思議そうに尋ねた。
「………シオンはどんどん凄くなっていく。俺も追いつかないといけないんだ!」
手を強く握り締め、叫ぶように言い放った!
「そうか。でも、しばらく休め!」
「そんなっ!」
リヴィとイルミナが前にでて前衛を交代した。
「「くそっ!」」
自分の不甲斐なさに憤る二人に、ノームがフォローした。
「こらこら。不貞腐らないの!それより、見て?」
前方でリヴィとイルミナが魔物と戦っていた。
「ねぇ?イルミナはともかく、リヴィが水の『剣』で、どうして戦っていると思う?」
はっ!?
二人は頭が良い。ノームの言いたい事が瞬時にわかった。
「俺達に戦い方を見せている?」
ノームは満足そうに頷いた。
「自分より、レベルの高い人物の戦いをゆっくりみられるなんて早々ないわよ?ここが狭い洞窟の中だから周りを気にせず、目の前に集中できるでしょう?」
二人はそう言われて再度、リヴィとイルミナをみた。
「また体力が回復したら戦って貰うから、今は先輩達の戦い方を学びなさい」
「「はいっ!」」
ノームが二人を説得したことに、口元を緩めるリヴィとイルミナであった。
コソコソッ
「ノーム殿が上手く説得してくれたか」
「うむ!助かったな。お互いに」
「「違いない!!!」」
そう!この二人、良い感じにまとろうとしていたが、実は!ただ戦いたいだけだったのだ!
王子達が戦っているのを後ろから見ていて、うずうずしていたのだ。ノームの言った良い話しなどでは決してなかった!
「「リヴィさんイルミナさん、生意気言ってごめんなさい!」」
王子達はキラキラした目で二人を後ろから見つめていた。
グサグサッ!!!
グサグサッ!!!
「な、なんかやりづらいな?」
「確かに………」
若干の後ろめたさを受けつつ、リヴィとイルミナは魔物を華麗に倒していった。
「凄い!俺達より数段上の戦い方だ」
「うん。剣と魔法の運用が上手い。瞬時に切り替えてるよ」
こうして王子達の経験を積むのに大いに役立ったのであった。
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