別の小説の真の主役、それはウッドゴーレム!
遂に同作者の『悪役令嬢の追放エンド』に登場したウッド君が別小説にも!?
シオンは大きな城壁を見上げながら魔法を唱えた。
「土魔法で補強できるかな?」
新しい壁を作るのではなく、既存の石のレンガにセメントを流し込む感じで土魔法を掛けてみた。
「おいおい………………」
「マジかよ!!!?」
「凄い…………」
ボロボロだった城壁がみるみる内に補強されて、より強固にそして見掛けも前以上に綺麗になった城壁を見て一同が言葉を失った。
積み上げたレンガの城壁が、王都の真っ白い大理石で作られたお城のような城壁に生まれ変わった。
「ふぅ~元の城壁の上からセメントっていう固まる性質のある泥水を掛けて補強したよ~!!!!」
我ながら良い仕事をしたと軽く汗を拭った。
「なぁ?あのお嬢ちゃんって何者なんです?ってか、五歳で領主代行っていうのもありえないんですけど?」
「確かに謎の生物だなぁ?天使の生まれ変わりと言われても不思議じゃないぜ?」
レオンの呟きに、ガイルが答えた。
「ほら!みんな~早く行くよー!」
場の空気を読まないシオンは呆然としている一同に声を掛けて外へ出ようとしていた
「待ってくれ!一人でいくなよー!」
慌てて後を追うガイル達だった。
城壁の外に出るとすぐに鬱蒼とした森が広がっており、森の中は薄暗く感じた。
シオンは『ウッドゴーレム』を三体召喚し、一体に先頭を歩かせ、もう一体にシオンをおんぶして歩かせた。最後の一体は後方を歩かせ、魔物の遭遇に対応できる形で進んでいった。
「ウッド君1号は先頭を歩いて魔物が出てきたら攻撃しなさい!2号は後方を警戒しつつ素材の採取を、おんぶ君は私を丁寧に運びなさい!」
何故か3号君は「おんぶ君」と命名されたのである。
「それにしても、森の入口付近でもなかなか素材が落ちているね」
シオンは鑑定で使えそうな物やお金になりそうな物をウッドゴーレム達に拾わせて移動していた。実に働き者である!偉いぞウッド君!
「このまま進むと、小さな泉があります。魔物が寄ってこない冒険者の休憩所になっていて、そこまでが森の浅い部分とされています」
「へぇ~、でもどうして魔物が寄ってこないんですかね?」
「詳しい事はわかっていませんが、ダンジョンなどでもセーフティエリアと言って魔物の入って来ない場所があるんです」
なるほど。RPGの定番だね!
確かに、しばらく歩くと小さな泉が現れた。辺りは少し開けていてテントなど張れそうだった。
「さて、お嬢ちゃん。ゴーレムに色々と拾わせていたが、良いものがあったか?」
ウッドゴーレムには『収納バッグ』を持たせていたので大量に物を入れる事が出来るのだ。
「しかし、収納バッグなんてよく持っていましたね。結構高いのに………」
それはねー。宝石の『琥珀』と交換したのよね。あんまり市場に流すと価格が下がるから慎重に少しずつ売りさばいて貯金を貯めているのよ!
「まぁ、シルクード領もようやく安定してきたからね。次は産業の発展を目指すよ!」
その為に素材を探しに来たんだからね!
現在、袋の中身はほとんどが薬草類である。辺境には医者が少ないのだ。ってか居ない!
だから、解熱剤や傷薬、胃薬に毒消し草などなどを栽培して他の地域の村や街で売りさばこうと考えた。
理由としては─
意外なことに薬草類を『栽培』する考えがこの世界ではないらしく、冒険者達のクエストで定期的に受注するそうなのだ。
前世で読んでいた小説
『冒険者ギルドの薬草採取って非効率過ぎない?なんで誰も疑問に思わないの?』
を、読んで見ればわかるので、割愛したい。
「取り敢えず、薬草類の種類はだいぶん集まったかな?種や草が1つでもあれば私の能力で増やす事が出来るからね!」
「マジで!?凄い固有魔法だね!」
レオンさんが驚きの声を上げた。
「はははっ!シオンお嬢ちゃんはなんでもありだからな。慣れろよ?」
ガイルさんが笑いながら言った。
「ちょっと見てみたいな」
「うん、良いよ」
シオンが、小さな種を1つ地面に置いて念じると、小さな芽が出てきたかと思うとすぐに大きな葉を広げた薬草に成長した。
「凄い!」
「確かに凄いけど、そんなに驚くことか?」
レオンさんの仲間の方はいまいち分かっていないようだった。
「まぁ、冒険者の奴にはこの凄さがわからんか?お嬢ちゃんはな、飢饉や不作に苦しんでいたシルクード領内の『田畑全て』を甦らせたんだぜ?いいか、領内全てだ」
!?
「それは!?」
ようやく気付いたようで、私を驚いた顔で見つめた。
「もし、お嬢ちゃんが居れば飢饉が無くなるし、本気をだせば無限に作物を育てられるから何度も収穫できる。どうだ、お嬢ちゃんの重要性がわかったか?」
コクコクと頷く冒険者達。
『珍しく濃厚な魔力の持ち主よ。植物を成長させる能力など初めてみたわ』
!?
「戦闘態勢!!!」
突然聞こえてきた声に、ガイルさんが叫ぶとレオンさんを筆頭に飛ぶように起き上がり、武器を構えた。
『無粋な人間達よのぅ?せっかく妾の好意で休ませてやっておるのにのぅ』
小さな泉から、何か出てきました。
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