救えない………でも希望はあるはずさ!
シオンはウッドレンジャーをクイーン・アントに向かわせた。しかし、ノームとウンディーネは固まって動けなかった。
「どうしたのよ!シルフィードが彼処にいるんだよ!早く倒そうよ!」
ウンディーネに話掛けるが、ゆっくりシオンの方を向いて信じられないといった感じでシオンに語り掛けた。
「…………ダメじゃ。シルフィードはベルゼブブの言う通り死んでいる」
!?
「でも、彼処に姿を保って閉じ込められているじゃない!」
シオンは指をさしたが、ウンディーネは首を振った。
「あれは脱け殻じゃ。すでにシルフィードは死んでいる………」
シオンはどういうことよ!?と説明を求めた。
「我々、四大精霊は寿命こそないが、酷い怪我をすれば死ぬのじゃ。耐久性はあるがのぅ?しかし、この姿が消えても、時間が立てば周囲の魔力から供給を受けて再度、顕現するのじゃ。俗にいう生まれ変わりじゃな。あのクイーン・アントの中にいるシルフィードには生命力を感じん。すでに死んでおるのじゃ………」
「そんな…………でも、それじゃシルフィードは何処かで生まれ変わっているの?」
そこにベルゼブブが口を挟んだ。
「おほほほ!それはあり得ませんよ!四大精霊が生まれ変わることは有名ですからね!そこいるウンディーネが青い顔をしているのは、シルフィードが『生まれ変われない』状態だからでしょう!」
勝ち誇ったように高笑いするベルゼブブ。
「ただ死んだのなら魔力や魂が四散して生まれ変われます。しかし、クイーン・アントに喰われ、その魔力や核とも言うべき力を全て吸収されたシルフィードは生まれ変われないのですよ!おほほほ!クイーン・アントの頭部にあるのは、シルフィードの力をただ具現化した物に過ぎません!それを見た人間達に絶望を与えるためにね!」
!?
「な…………んだと?」
絶句して次の言葉が出てこない。
「おほほほ!絶望している暇はありませんよ!さらなる絶望を味わいなさい!」
クイーン・アントはウッドレンジャーと戦っていたが、大きなダメージは与えられていなかった。鋭い手足でウッドレンジャーの何体かを吹き飛ばした。
グルルルルルッ!!!!!!!
クイーン・アントが吠えると、周囲に風が集まってきた。
「まさかっ!?」
「いけない!全員、魔法障壁全開で!!!!」
ノームは入口を塞いだ時の、分厚い石を前方に出して、ウンディーネは全員を水の結界で覆った!
それと同時だった。クイーン・アントから風の突風が襲ったのは!
突風はノームの石壁を壊して、さらにウンディーネの水の結界をも破壊した。しかし、各自で水の結界の内側に魔力障壁を張っていたため、ギリギリで防ぎ切ったのだった。
「はぁはぁ…………みんな!無事!?」
「な、なんとか~」
「ワシも無事じゃ!」
全員の力を持ってして、ギリギリ防げるかレベルの魔法攻撃にシオン達は膝を付いていた。
「なんて威力なのよ…………」
クイーン・アントを見上げながら呟いた。ベルゼブブは自分の思っていた以上の魔法に歓喜していた。
「おほほほ!素晴らしい!素晴らしいですよクイーン・アントさん!流石は私の最高傑作ですよ!」
またイラッとする笑い声を出しながら空中で踊るように飛び回った。シオン達は咄嗟に魔力を限界まで上げて使ったため疲弊していた。
「少し休まないと力が………」
シオンは1人でクイーン・アントの前に出た!
「みんな!収納バッグから回復薬を飲んで少し休んでいて!私が時間を稼ぐわ!」
シオンをみたベルゼブブは笑いながら言った。
「おやおや?幼い少女1人に何ができるのでしょうか?シルフィードの魔法を操るクイーン・アントに勝てるとでも?」
「余り舐めないでよ!所詮は大きな蟻でしょう!」
そう、巨大な魔物と思っていたけど昆虫類に違いないはず。ならば─
シオンは魔法を放った!
「緑聖魔術『森の癒し』!」
シオンが魔法を放つと、先ほど魔物を串刺しして干からびさせた植物から、花粉のような物が発生した。
「おほほほ!そんな白い煙で何を─」
ベルゼブブは後ろをみると、クイーン・アントが苦しみ出したのだ!
「なっ、何をしたのですか!?ぐっが!?」
あのウッドレンジャーの攻撃をものともしなかったクイーン・アントが苦しみもがいていたのだ。そしてベルゼブブも具合が悪くなったのだった。
「これは2つの効果がある植物の力………『フィトンチッド』よ!植物は自分の身体を守るために、害虫を殺す成分の匂いを出して身を守るの。逆にフィトンチッドは人間には、身体をリフレッシュしてくれる森林の精気を与えてくれるのよ!」
つまり、害虫には有毒な物質であるが、人間には清々しい爽快感を与えて、ストレスや疲れなど回復させてくれる効果があるのだ。無論、魔法で普通の植物とは比べ物にならないほど効果は上がっている。
「まったく、クイーン・アントにダメージを与えるだけじゃなく、疲弊した私達の回復も同時にするなんて、やっぱりシオンは凄いわね!」
凶戦士モードが解けたノームはシオンにお礼を言うのだった。
「これからどうする?」
「ダメ元でもクイーン・アントを倒してシルフィードを助ける!」
もう死んでいるシルフィードを助けると言いきるシオンに、嬉しくなるノームはシオンなら本当に何とかしてくれるのでは?と思うのだった。
そこに─
苦しんでいるクイーン・アントの頭のクリスタルが光だした!
「なにっ!?」
『おね………がい。た…………して』
シオン達の前に半透明の女性が現れたのだった。
頑張れば奇跡は起きるもの!それが熱血マンガの常識だ!
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