魔王軍四天王(二人目)
シオン達が地面に穴を開けて下に降りると、意外なものが目に飛び込んできた。
そこは何かの研究施設のようで、大きな部屋になっていたのだ。辺りにはテーブルがあり、フラスコやよくわからない液体の入ったビンなど散乱していた。
「一体なんの研究をしてたのやら....….」
「どうせろくでもない研究に決まっているわよ!」
辺りを調べていると、向こうの方で悲鳴が上がった!
「きゃっ!!!」
どうしたと、皆が集まるとそこには大きな樹の根が壁のようになっており、中がくり貫かれて様々な魔物が培養液?のような液体の中で存在していた。
「…………気持ち悪いな」
魔物はガラスのような物で蓋をされていて、中が見える様になっており、培養液が溢れないようになっていた。
「魔物を培養している?いや、これは─」
ウンディーネはマジマジと見ながらブツブツと言っていた。
「これはもっとヤバイ研究をしているのかも知れないわね」
中を見て廻っていると全容が明らかになってきた。
どうやら魔物の強化を研究しているようであった。
研究所の部屋を出ると、そこは吹き抜けになっており、地上から地下へ垂直へ根を張った、特別に大きな樹の根を中心に、円を描きながら世界樹の根に魔物達が埋められているのだ。
世界樹の根から発せられる光が不気味に見えた。
「まだこの下みたいね。シルフィードの気配がするのは」
吹き抜けの巨大な鍾乳洞になっている地下で、螺旋階段を降りていくシオン達。
高さだけで見れば10階ほどの高さがあった。
「地下にこれ程の空洞があるなんてね。よく崩れないね」
「世界樹の樹の根が小さく根を張って岩盤を固めているからだと思うよ」
周囲を警戒しながら階段を降りて、ようやく最下層にたどり着いた。そこでシオン達はとんでもないものを発見した。
「みんな、大きな声を出しちゃだめだよ!」
最下層には、世界樹の巨大な根の裏側に超巨大な大蟻の魔物が眠っていたのだ!体長30メートルはあるだろう。その大きさは龍ほどあった!
【鑑定】
『クイーン・アント』
大蟻の母にして、精霊を喰らいし者。通常のクイーン・アントとは比べものにならないくらい強くなっている。産まれてくる魔物も強くなっている。
!?
シオンは悲鳴を上げそうになった。
「あ、あぁぁぁ……………」
「シオンどうしたの!?」
シオンの様子がおかしい事に気付いたフローリアはシオンを労り理由を尋ねた。
シオンはクイーン・アントの事をみんなに話した。
「なんじゃと!」
「シッ!声が大きい!」
ノームのように身動きが取れない状態と思っていたが、まさか、巨大な魔物に喰われていたとは………絶望が周囲に漂った。すでにシルフィードは─
「確かに現状は最悪の状態じゃ。しかし、あのクイーン・アントからはシルフィードの気配がするのじゃ。ならば、まだ救える可能性は残されておるはずじゃぞ!」
「確かに完全に消滅していなければ、何とかなるかも知れないわ」
ウンディーネの言葉にノームが同意した。そして、みんなが行動に移そうとした時─
「いえいえ、もうシルフィードは手遅れですよ?クイーン・アントがシルフィードを取り込んでどれだけの年月が経っていると思っているのですか?」
!?
ババッ!!!
百戦錬磨の各自が、その場を飛び去った!
「おほほほ!そんなに警戒しなくてもよろしいですよ」
いつの間に現れたのか、目の前には人と同じ大きさのハエ男が佇んでいた。
【鑑定】
『ベルゼブブ』
魔王四天王の1人。様々な研究をしており、魔王軍の魔物の戦力の増強を担っている。インテリ(研究者)であり魔族では珍しく頭脳戦に長けている。
「魔王軍四天王…………」
シオンの呟きに、ベルゼブブは歓喜した。
「おおっ!まだ幼いのに私の事を知っておられるとは勤勉ですねー?どうですか!私の研究のお手伝いなどしませんか?」
勧誘してきたベルゼブブにシオンはビシッ!と指差して言うのだった。
「私達が来たからにはもうここまでよ!観念なさい!」
ふっ、決まったわ!
内心でキメ顔を決めるシオンだった。
「おおっと、それは怖いですねー?しかし、あなた達の探し人はすでにお亡くなりになっています。どうぞお帰りなさい」
ふざけた態度のベルゼブブにイラッとするシオン。
「貴方の目的はなに!」
自分達の目的がバレている以上、敵の目的を探ろうとしたシオンに、ベルゼブブは思った以上に喰いついてきた。
「おおっ!いいですねー!ここには喋れない魔物ばかりで自慢したかったのですよ!」
ベルゼブブはペラペラと目的を話し出すのだった。
インテリってなんでしたっけ?
(インテリとは自分の知識を自慢したいバカな者達を指します)
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