魔境の森へ入ろう!
領地の改革も済んで、1ヶ月ほど経とうとしていた。また領内に冒険者ギルドを構えてもらおうと、ガイルさんから税を元に戻した事をギルドに伝えて交渉してもらった。
そしてシオンは更なる発展の為に次の行動に移そうとしていた。
「ダメです!!!」
専属メイドのアンさんが凄い剣幕で引き留めている。
「アンさん、これは領内の発展の為に必要な事なの。わかって?」
そう、シオンは魔境の森へ入り、高値で売れる希少な植物を採取してこようとしていたのだ。
流石のシオンも、せめて種などないと育てる事が出来ないのだ。第一の目的は綿花である。
「だからってお嬢様が危険な魔境の森へ行かなくても!?」
シオン自身は高レベルのため、森の浅い場所なら問題ないと考えていたが、ガイルさんを頼る事にした。
「アンさん、この1ヶ月でシルクード領の民の飢えは無くなりました。でも、産業が壊滅しているので領内を豊かにするための『なにか』を探さないといけないんです!」
「そ、それはわかりますけど…………」
「アンさんの心配もわかります。だからガイルさんと新しい『冒険者』の方に道案内をお願いしているんです」
冒険者ギルドの誘致の為に視察に来てくれた若い冒険者に依頼をしたのだ。
「初めまして。Bランクのレオンです。今までは船で迂回して魔境の森に入っていたので、浅い森であれば案内できます。ただ、五歳の子供を連れてとなると、難しいと思いますが………」
「ほら!ベテラン冒険者の方も仰っているじゃないですか!」
アンさんはほらみたことかと、シオンに詰め寄った。
「大丈夫、冒険者の方は『道案内』で最強の護衛は他にいるからね」
シオンの言葉にレオンさんが言った。
「対人専門の傭兵と探索専門の冒険者では対応が違いますよ?どこに護衛がいるんですか?」
プライドがあるのだろう。ただの道案内という言葉にレオンは少しムッときていた。
「不快にさせたらごめんなさい。ただ貴方より強い護衛は居ますよ?もし宜しければ模擬戦でもやりますか?」
「へぇ~面白いじゃないか!ぜひやらせてくれ」
こうして広場で模擬戦が始まりました。
「はぁ~、若いって恐れ知らずで羨ましいぜ」
ガイルさんが呟きました。ガイルさんは事情を知っているからです。
「ガイルさん、シオンお嬢様の護衛は貴方ではないのですか?」
「いや、俺も護衛の1人だが…………まぁ見てな!」
レオンさんは剣を構えましたが、対戦相手がいません。
「おい!どこにその最強の護衛とやらがいるんだ?」
「今、召喚しますよ~」
???
「緑聖魔術『ウッドゴーレム』!!!」
シオンが叫ぶと、地面から緑色の樹で出来た木製のゴーレムが現れた。
「なっ!?」
「さぁ!倒せるものなら倒してみなさい!」
ウッドゴーレムはシオンの指示に従い、レオンに突進していった。
「舐めるな!!!」
剣を両手で持ち、大きく上段切りで応戦した。
ガッギーーーーーーン!!!!
避ける訳でもなく、腕で剣を受けると植物とは思えない音がして、レオンの剣を防いだ。
「硬って…………」
ウッドゴーレムはその隙を突いてレオンにボディブローを喰らわせた。
「グハッ!?」
大きく後方に吹っ飛び、地面を転がった。
シーン……………
「だから言ったでしょ?最強の護衛がいるって」
レオンの仲間の冒険者も目を開いて唖然としていた。レオンは完全に気を失っていたので、出発は次の日になった。
・
・
・
・
・
・
・
次の日─
「昨日はごめんなさい。怪我はありませんか?」
昨日と違い、レオンさんは礼儀正しく頭を下げて答えた。
「大丈夫です。こちらこそ、御無礼を申し訳ありませんでした!」
どうやらレオンさんは、最近慢心していたらしく、目を覚まさせてくれたシオンに感謝しているそうだ。
「冒険者は油断したら即死ぬ。昨日のあれが、弱そうだと思って舐めて掛かった結果全滅もあり得ます。また一から頑張りますよ」
この考え方がレオンさんを若くしてBランクまでのし上げたのだろう。爽やかな青年っと言った感じになったよ。
シルクード領の魔境の森は大きな城壁によって守られている。しかし、しばらく手入れのされていない城壁は、ボロボロになっていた。
「う~ん…………遠くからじゃ分からなかったけど、これはヤバいね!」
シオンの言葉にガイルが同意した。
「確かに、またスタンピード(魔物の氾濫)が起こったらすぐに破壊されるな……」
今は、住民の家を新しく建て直している所で、まだ城壁まで手が廻っていないのだ。
しかし、シオンはちょっと待っててねと言うと行動を起こしたのだった。
『よろしければ感想、評価、ブックマークよろしくお願いします!』