本格的なダンジョン攻略です。
シオン達は世界樹の1階層を探索していた。1階層は罠などは無かったが、少し歩けば魔物に遭遇するぐらいに魔物が多かった。
「くくくっ!まだまだ遊び足りんぞ!」
リヴィが嬉々として、魔物を屠っていった。その倒し方は様々で、多彩な水の魔法で一網打尽にしたり、水で刃を作り上げて斬り付けて倒したりと工夫しながら戦っていた。
「しかし、人の形と言うのは便利だ。この姿になってから新しい発見ばかりだぞ?」
リヴィは手を、わきわきさせながら感触を楽しんでいた。むう!黙っていれば着物美人なのにもったいない!
ずいぶんと歩き廻ったが、まだまだ全容がわからなかった。
「流石に、山ぐらい大きいから広いね~」
ただ歩く訳ではなく、魔物と戦いながら歩いているため疲労が積み重なっていった。
「普段は20人単位で、5組のチームを組んで廻るのです。このメンバーだけではやはり厳しいですね」
戦っているのは主にリヴィ達だけど、思った以上に魔物が多いが、魔物自体はそれほど強くはない。昆虫系はグロいだけで油断しなければ、だいたい一撃で屠れている。ただ数が多いだけで─
そう話しているとまた魔物が現れた。まったく、少しぐらい話をするぐらい待てないのかしら?
シオンは魔物が掃討されると、近くのひらけた場所に移動して魔法を使った。
「緑聖魔術『宿り木』!!!」
シオンが呪文を唱えると、広間の左右の通路に植物の蔦がバリケードのように張り巡ぐり、向こう側が見えないほどに覆い尽くしてしまった。
「これで安全になったよ。少し休憩しよう!」
珍しくシオンの魔術に驚いた人物がいた。
「こ、これが四大精霊の契約者であるシオンさんの力ですか!?」
見たことのない魔術にフローリアは興奮していた。亜人と括られる種族でエルフは魔術が唯一得意される種族であるからだ。エルフの長い寿命の中でも植物を操る魔術は見たことがなかった。
「あら?この魔術で作りだした植物は………?まさかね?」
バリケードの植物をマジマジとみていたフローリアは首を傾げたが、シオンが食事の用意を始めたので手伝う事にした。
「フローリアさん、この1階層は後どれくらいありますか?」
すでに半日は歩き廻っているのだ。そろそろ全部廻っているのではないだろうか?
「え~とそうですねー?」
フローリアは大まかに作成されたマップを見ながら答えた。
「ようやく半分と言った所でしょうか?」
!?
「ええっ!まだ半分なの!?」
なんて広いダンジョンなんだよ!まだ1階層だよ?
「いえ、1階層が1番広いんですよ」
「ソウデシタ。樹木ですもんね」
軽く食事をしながらグテーとなるシオンだった。
「でも、ようやく方向性が見えてきたかな?」
シオンはフローリアの持っていたマップを見ながらシオンは今後の進む方向をみんなに話した。
「休憩が終わったら、こっちの方へ行ってみたいんだけど?」
マップを指差しながら、各自が目を通した。
「どうしてそちらの方へ向かうのですか?」
フローリアの問い掛けにシオンは答える。
「このマップだと、入口から右上(北東)の方に上に登る階段があるんだよね?今は、丁度中間ぐらいだけど、ここまで来るまでに西の方角の方が魔物の出現率が多かったの」
シオンの言葉にフローリアを初め、他のメンバーも驚いた。
「あの、魔物との戦いの最中に確認していたのですか!?」
シオンは頷いて続ける。
「定期的に魔物を間引きしているそうだけど、入口から上に昇る階段まで念入りにすると思うけど、入口から遠いルートの所までは、余り行かないでしょう?特に素材も取れない昆虫系の魔物が多く出現するエリアにはね」
「い、言われてみれば確かに…………」
シオンの言葉に納得するフローリアだった。
「では、地下への入口が魔物の多く出現するマップの端にあると?」
ギルド長のお爺ちゃんが唸りながら尋ねた。
「あくまでも可能性の話しだけどね。ただ、そうなると─」
一同もある可能性に気付いてハッとなった。
「本能で活動する昆虫系の魔物にそんな知性はありませんよね?」
「っと、なればいるな?昆虫系の魔物を操っている何者かが………」
そう結論して、各メンバーは気を引き締めるのだった。
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