世界樹について
なかなか先に進まない………
亜人連合との交渉を終えて、3日経った時であった。
「お迎えに参りました」
少し早い時間にフローリアがシオンの屋敷へと転移でやってきた。
「フローリアさん、おはようございます。早いですね!」
「ええ、少し早くきてしまいました。本当に転移って便利で凄いですね♪」
すでに亜人連合の代表達にはウンディーネ達が精霊の指輪を渡して転移できるようになっていた。
シオンはフローリアにお茶を出しながら待って貰った。
「本当にこの紅茶は美味しいですね♪」
フローリアはロイヤルミルクティーが大変お気に入りであり、シルクード領で仕入れてみようと交渉中なのである。
フローリアは昨日、1度転移の練習も兼ねてシルクード領へやってきている。その時、シオンにもてなしを受けていたのだ。
「1箱あげますよ。レイラさんが無茶なこと要求したそうですからそのお詫びにね」
シオンは申し訳なさそうにフローリアに謝った。
『ああ、なんて気のきく少女なのかしら♪』
フローリアも四大精霊の契約者であるシオンの事は調べ上げていた。
前領主である両親は民を省みないクズであり、まだ5歳の少女が領主代行を務めて、シルクード領を発展させたという。無論、周りの力も借りてだろうが、まだ10歳にもならない少女がそれを行ったという事実が驚きである。
『四大精霊様も、この少女の心の強さに心を打たれて力を貸したのかしら?』
フローリアの中ではシオンが悲劇のヒロインへと格上げされていた。
そして、わずかな期間ではあったがシオンの人柄を知り、この子を政治的駆け引きには使わないと決めたのだ。
「フローリアさん、少し聞きたいのですが、世界樹がダンジョンになったのって、最近なんですか?」
素朴な疑問を尋ねた。
「いいえ、ダンジョンになったのはかなり昔からです。先代からの日記によれば、元々が複雑な構造をしていた内部が、高濃度の魔力によりダンジョン化したとか。しかし、清浄な魔力に満たされていたので、強力な魔物は現れませんでした。我々は定期的にダンジョン内部を巡回し、魔物を間引きしていました」
フローリアは、1度話を区切り紅茶を一口飲んだ。
「ふぅ、そしてシルフィード様が姿を消してから、今まで現れたことのない魔物が出現するようになりました」
「それって、どんな魔物なんですか?」
出現する魔物の事が分かれば対処がやり易くなる。
「昆虫系の魔物です。羽虫系や、芋虫系など、1番多いのがジャイアントアントと呼ばれる「大蟻」の魔物ですね。私達もこの魔物達が世界樹にダメージを与えているのではと、見つけしだい討伐しているのですが、現状維持でそれほどの成果は出ていません」
ふむ、シオンは少し思案して答えた。
「世界樹のダンジョンは何階層あるのですか?」
「今となっては正確にはわかりません。当時は100階層まではあるとされていました」
(なんかSAOみたいだな?あ、あれは塔を登って行くんだったけ?)
どうでもいいことを考えながら、シオンは大事な事を聞いた。
「いつもは何階層まで巡回するのですか?後、出現する魔物の傾向も教えて下さい」
「そうですね。意外な事に、世界樹は上に行くほど『魔物の発生は低く』なっていきます。まぁ、魔物のレベルは高くなりますが。清浄な魔力が葉に蓄えられるので、上の方になると魔物には辛いみたいです。十階ごとに、入口まで戻れるゲートがあり、基本的には1階から10階まで巡回しています。無論、1階から10階までゲートで移動もできます。現在、我々は30階までは行けますが、ボス部屋がゲート前にあり定期的に復活するボスを倒さなければ、ゲートが使えなくなるのです」
ふむふむ。なるほど─
「どうして30階までなんですか?」
「それ以上の階層ボスが強くてですね。死傷者を出してしまうので、それ以上は行かないようにしているのです。無論、前には犠牲者を出しながらも上に行き、シルフィード様を探しに行ったこともありますが…………」
見つからなかったと。
上に行くほど階層ボスは強くなるのか。まぁ、ボス部屋は固定だろうしね。
そこでシオンは再度尋ねた。
「もしかして、魔物は1階層が1番多いのですか?」
「ええ、そうです。だから1階から順に巡回していますが、何か?」
あっ!もしかして……………
世界樹のダンジョンって性質上、盲点だったんだ。世界樹は100階層はあるって言っていたけど、それは上に向かってだよね?私のカンが正しければ、『地下』に何かあるかも知れない。
シオンは自分の考えをフローリアに伝えるのだった。
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