海龍は守護龍へと、さらに神龍へと格上げされました!
久々に少し長くなりました。
皆が静まり返った深夜、真っ暗な海に大きな龍の姿があった。月明かりに照らされて、見るだけなら神秘的な姿であった。
しかも、シオンと契約をしたことで元海龍の姿も変異しており、目にも鮮やかな蒼色の鱗に白い素肌を煌めかせ、頭には立派な角が生え変わっていた。
『ふむ?久々にこの姿になったが、今までとは違うな?体格は一回り小さくなったが、身が引き締まったことで動き易くなっている…………これがシオンの力なのだろうか?』
『ふふん♪主殿との契約した力を確かめてみるがよいわ!まずは小手調べじゃ!』
ウンディーネは手に長い魔力を増幅する杖を召喚すると、海面に浮いている自分の上に掲げて呪文を唱えた。
『我、水の四大精霊ウンディーネが命じる。この杖に集いて敵を討て『アクア・ドライブ』!!!』
ウンディーネの杖から『水の龍』が現れ、海龍………いや、近海の守護龍リヴァイアサンに襲い掛かった!
グオォォォォォォオオオオオオオ!!!!!
水の龍はリヴァイアサンと同等に大きく、締め付けながらに噛み付いた!
海面から海中で身体をひねりながら振りほどこうとする。
リヴァイアサンは海底へと潜ったため、海面にいたウンディーネは目視出来なくなった。
どういうことじゃ?この程度でやられる訳が無かろうに?
リヴァイアサンが沈んだ海を見つめて、ウンディーネも水中に潜ろうとした時だった!
海底から何かが発射されたのだ!
!?
ウンディーネは咄嗟に水の障壁を張ったが、余りの威力に遠くまで弾き飛ばされた。
『ぐっ!?これほどの威力とは!』
ダメージこそ余り無かったが、水のジェット噴射のような攻撃に弾け飛び海へと落ちたのだった。
ゴゴゴゴッ!!!!
海へと落ちて沈んだウンディーネにリヴァイアサンがまた呑み込もうと、物凄いスピードで襲い掛かった。
『海の中なら最強だとでも思うたか!妾は水の中でこそ力が最大限に発揮されるのじゃぞ!』
ウンディーネは水圧を無視する動きで、リヴァイアサンの噛み付きを避けた。
!?
『これならどうじゃ!『精霊魔術・奥義【水神・千刃】(せんば)』
リヴァイアサンの周辺に水の刃が数え切れないほど現れ、一斉に襲い掛かった!
一撃当たるごとに強靭な鱗をものともせずに切り裂いた!
グオォォォォォォオオオオオオオ!!!!!
リヴァイアサンの雄叫びとともに、周囲に猛烈な海流が巻き起こり、水の刃を洗い流してしまった。
『少し痛かったぞ!』
またリヴァイアサンが口を大きく開けてブレスを放った!しかしウンディーネは容易く避ける!
『放たれるタイミングが分かれば避けるのは簡単じゃ!』
これはウンディーネだからこそ言える事である。普通の者は動きが制限される水中では避ける事など出来ないのだ。このままウンディーネが優勢で進むと思われたが…………
『ならばこれはどうだ!』
キュィーーーーーーーン!!!!!!
『うぐっ!!!!?これ………は!?』
ウンディーネは堪らず両手で頭を押さえて膝を付いた。
そう、シャチなどに備わっている超音波攻撃であった。並みの者であれば脳内破壊を起こしていても不思議ではない威力があった!
ウンディーネは堪らず海面へ飛び出ると、再度魔法を放った!
『はぁはぁ、そのでかい身体では避けられまい!『アクア・ニードルスピア』!!!』
海水を吸い上げ、大きな水柱が立った!その尖端が針の様に尖っており、渦を巻きながら海底にいるリヴァイアサン目掛けて放った!
幾つもの大きな水の針が襲い掛かる!
リヴァイアサンは水面目掛けて急上昇しながら、攻撃を掻い潜りウンディーネに向かっていった!途中、魔法が当たってもお構い無しだった。肉体が削られ血が出ても突き進む!
海底から飛び出るように出てきたリヴァイアサンは、まさに天に昇る龍のようであった。ウンディーネもその体当たりとも思える攻撃を、ギリギリ避ける事に成功した。
いやっ!ウンディーネの右腕を噛み千切っていた!?
「うぐっ!!!!」
痛みに顔を歪めるが、追撃を警戒し距離を取った。
バッシャーーーーーン!!!!!
リヴァイアサンが空中から水面に落ちると、小さな津波が起こった。
……………実はこのバトルをかなり離れた場所で目撃している者がいた。それは、航海をしていた貿易船が夜になり錨を下ろして停泊していたのだ。
「お、おい!あれって海龍だよな?」
「ああ、最近リュミナス王国が討伐して手懐けたような発表があったよな?やはり海龍を手懐けるなんて不可能だったんだろう!」
船員達は暴れまくる海龍の姿を遠巻きに見ながら逃げる準備を行った。しかし、そこに津波が襲ってきたのだ!津波はそれほど大きな物ではなかったが、船を呑み込むには十分な大きさだった。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「もうダメだ!!!!」
船員達の悲鳴が響き渡った。しかし、そこに信じられない事が起こった。
津波が船を襲う前に、海面から海龍が出て来て津波から船を守ったのだ。
「か、海龍が俺達を守った?」
「えっ、マジで!?」
「助かったのか?」
そこに海龍の声が聞こえてきた。
『すまぬな人間達よ。ここは危険だ。結界を張っておく。夜が明けるとすぐに出航するのだ』
リヴァイアサンは結界を張る為に、船に自らの『鱗』を差し出した。
船員達はお互いの顔を見ながら戸惑うばかりだった。
「失礼致します!海龍様!あなたの言う通りに致します!ただ1つお答え下さい!あなたほどの御方が、何と戦っておられるのですか!」
恐ろしい巨体の海龍に尋ねたのは、その船の船長であった。見るからに鍛えられた巨体の持ち主である。
『我の力を持ってしても勝てぬ強大な力を持つ者だ。それと、我の事はリヴァイアサンと呼ぶように』
リヴァイアサンはそう言うと海底へ潜り、またウンディーネと激戦を繰り広げるのだった。
ウンディーネはリヴァイアサンが船を守っている間に、身体を水(液体)に変異させ、右腕を復活させていた。復活させた右腕を握ったりしながら感触を確認させる。
『流石は四大精霊!世界を司る者よ!』
『リヴィもやるではないか?古代種の龍族はダテではないのぅ!』
ウンディーネは海面に足を浸けながら、杖を構えた。リヴァイアサンも頭を海面から出してウンディーネを見据える。
『『ゆくぞっ!!!!!』』
後に、真夜中なこともありウンディーネの姿は見えなかった船員達だったが、間近でこの世のものとは思えない激戦を目にして、興奮と恐怖が入り交じり、自由貿易都市などで大々的に喧伝した。信じなかった者も多かったが、海龍が自ら差し出した【鱗】が証拠となり、『海龍信仰』が幅広く信仰される事となった。
いわく、海龍様を信仰すれば無事に航海できるという、船乗りに取って重要なジンクスが信仰となって、強く信じられるようになっていったのだった。
これによりリヴァイアサンは『神格位』を授かり、四大精霊と同等の地位と力を身につける事になるのは、もう少し先の話である。
【問題】
どちらが勝ったでしょう?
※引き分けはありません
※あくまで作者の遊び心です。
↑
ここ重要!
(この答えについての苦情やお問い合わせには対応しておりませんのでご了承下さい)
【意味深】
『よろしければ感想、評価、ブックマークよろしくお願いします!』