やったどーーー!!!!
胃酸の中からウンディーネとクリスを引き揚げた所で、奥から嫌な風が吹いてきた。
「えっ?海龍の体内で風?」
「いかん!またアレかっ!?」
ウンディーネが焦ったように海龍の胃の奥を見つめた。
「何が起こっているの!?」
「妾にも詳しくは把握できておらぬ!ただ、定期的に『嫌な風』が吹いてきて、その度に力を奪われていったのじゃ」
嫌な風は纏わりつく様に身体に不快な感触を残した。
「ウンディーネはクリスをお願い!」
「主殿はどうするつもりじゃ!?」
一緒に戻らないシオンにウンディーネは戸惑いを隠せなかった。
「少し確認してから戻るわ。今のディーネのやる事はクリスを無事に船まで連れて戻ることだからね!」
ウンディーネは悔しさに顔を滲ませて、海龍の口へと向かっていった。
そしてシオンは─
「さて、長居は無用ね!緑聖魔術『アクア・ゴーレム』!!!」
強力な胃酸でも、同じ液体ならば順応して奥へ進めると思ったシオンだったのだ。
アクア・ゴーレムを二体召喚し、一体はシオンを持ち上げて進んでいった。無論、水の障壁は健在である。
予想通り、ジューと音はなったがアクア・ゴーレムは問題なく進んでいった。そして、胃の出口付近に、『黒い石』が壁に埋まっているのが見えた。
『なに?アレは…………』
直感的に嫌な感じがした。そう、あのカサカサッと動く黒い悪魔に出会ったような感じだ。
黒い石は胃の壁に、ガン細胞のようにくっついており、周辺も黒ずんでいた。
近付くと、急に黒い石が黒く輝きだした!
「ヤバい!?」
アクア・ゴーレムがシオンの前に出て庇った!
黒い石からイカズチが放たれたのだ!?
バチバチバチッ
バチバチバチッ
身体が液体で出来ていたアクア・ゴーレムは無事であったが、黒いイカズチのせいで動けなくなっていた。
「なんなのよ…………」
シオンは『黒い石』を敵と認定し、攻撃を開始した。
「距離を取りつつ、遠距離攻撃よ!喰らいなさい!緑聖魔術『緑の魔弾』!!!」
シオンが放ったのは、薔薇のトゲの様なものを回転させながら飛ばすものだった!黒い石もすぐにはイカズチを放てないようで、回転しながら飛んでいったトゲは黒い石を貫いた!
バッリーーーーン!!!!
黒い石が砕け散ると、辺りが激しく振動し始めた!?
「ヤバい!海龍が起きたのかしら!?」
シオンはアクア・ゴーレムに破片を拾わせると、急いで戻っていった。
海龍の口の近くまで行くと突然、前から水が押し寄せてきた。
「海龍が海に潜った!?」
激しい水圧に胃の中へ押し戻されようとしたとき、ウンディーネの声が聞こえてきた。
『主殿!早く転移を使うのじゃ!?」
!?
シオンは条件反射で念じると、ウンディーネ達のいる船の甲板に転移した。転移が成功するとシオンは深く息をついた。
「はぁ~~~助かった~!」
一安心である。
「シオン!?無事だった?ウンディーネとクリス君だけでてきた時は驚いたわよ!」
ノームがプンプンッと怒っていた。
「眠っているとは言え、海龍の口へ入って行くこと事態、普通は恐ろしくてしないしね!?」
「ごめんなさい!それよりクリスは!?」
ちょうど目が覚めたばかりのクリスが横になっていた。
「………自分は大丈夫だよ。ありがとう。シオン」
久々に会うクリスをみて赤くなるシオン。
「本当にびっくりしたんだからね!もうこんな無茶したらダメなんだから!」
「シオンさんの言う通りですよ!貴方は私の1人息子なのですから」
ソフィア王妃様はクリスを優しく抱き締めていった。
「よく頑張りましたね。貴方の勇敢な行動で、大勢の人々が救われました。でも、1人の母として、もうこんな無茶はしないで下さい。本当に心配したのですから!」
目に涙を浮かべながらクリスに言い聞かせる王妃様だった。クリスもはいっと約束して、しばらくそのままであった。
ザプッーーーーーン!!!!
突然、海に潜った海龍が海底から頭だけ飛び出してきたのだ!
グルルルルルッ!!!!!
「ぎゃーーー!!!!またでたーーーー!!!!」
シオン達は臨戦態勢を取ったが、海龍はじっとこちらを見つめて攻めてこなかった。
不思議に思っていると、ウンディーネが叫んだ!
「主殿!海龍が何か言いたそうじゃ。海龍は人語を話せないので念話を繋げるのじゃ」
ウンディーネは海龍と念話が出来るようにパスを繋ぐのだった。
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