居なくなって初めて気付く事がある…………
法王国の侵攻作戦からすぐに、クリスは亜人連合国へと使者として旅立っていった。
その間は暇なのでシオンは領地にて領主の仕事をしていた。
「アンさん、この案件は村長さんにお願いして。それと、ここの問題は─」
なんと!?
真面目に領主としての仕事をしていた!
真面目に領主としての仕事をしていた!
大事なことなので二回言いました!
普段は転移を使い、あっちこっちへと移動し、遊び廻っているイメージが強いシオンが!真面目に仕事をしていました。
こう見えても、貴族の作法などのレッスンも受けており、意外と多忙の日々を過ごしていたのだ。ちなみに、シオンの留守中は、村長や国王様から派遣された、まっとうな文官が業務をこなしていました。
「ふぅ~、今頃クリスとウンディーネは船旅中か~ちょっと羨ましいかも………」
亜人連合国に行くには陸路より、海を渡って行く方が早いのだ。ただ、世界樹の周辺は断崖絶壁になっている為、自由貿易都市の島の間を通って、南からぐるりと回って行かなければならないのである。
クリスの護衛にウンディーネが付いていっているため、シルクード領の護衛は自律型警備ゴーレムの『ウッドケイビ君』とノームが対応していた。無論、冒険者の有志も治安維持に貢献しているのだ。
「う~ん!今日のお仕事はこれで終わり!」
業務を終えて、なんとなく港の方へ向かったシオンであった。
「もう!シオンってば心配性ね♪」
ノームがシオンに抱き付いて微笑みながら言うのだった。
「べ、別にー?ただ、港の視察と海が見たくなっただけだし?」
視線を逸らして言い訳をするシオンを微笑ましく思うノームは、名物になりつつある『たこ焼き』を買ってきて、港のベンチで食べるのだった。
「あふっ!んーーー!美味しいねー♪」
「これって、シオンが考案したんでしょう?本当に凄いわ!安価でこんなに美味しいものを作りだしちゃうなんて♪」
ノームも大きな口を開けて、ぱくりっとたこ焼きを口に入れるのだった。
たこ焼きを食べ終えて、一服している二人に突然!念話が届いた!?
『シオ………ン!きこ…………るか…………緊急………事態………発………!?』
!?
「な、なに!?」
雑音が酷く聞こえずらい念話だった!だが、声はクリスからのものなのはわかった。
「シオン、落ち着いて!私が念話の感度を上げるから眼を閉じて集中して!」
ノームも切羽詰まった念話に危機感を覚え、すぐに念話の元を探る。それに合わせてシオンも、言われた通りに眼を閉じて意識を集中した。
『…………える?』
『きこ………るか?』
『聞こえるか!?』
だんだんと、声がはっきりと聞こえてくる。
『こちらシオン!ノームの力を借りて聞こえるようになったよ!どうしたの!?』
『!?よかった。届いた!もしかしたらこれが最後になるかも知れない。俺達の乗っていた船が、海龍に襲われた!』
!?
『か、海龍!?』
『海龍に襲われた俺達ウンディーネの水の魔法で守られたが、海龍の激しい攻撃に耐えられなくなっていったんだ。だから『囮』を出して本船は王国へ帰還させた!』
ホッと安心した。本船は無事に逃げられたんだよね?それにクリスはウンディーネと一緒だし、最悪、転移で1人で逃げられる。
『クリスは無事なんだよね?船に乗って戻ってこれるんだよね?危険な状態なら最悪、転移で1人でも逃げて戻ってきてよ!』
『……………シオン、ごめん』
えっ?何がごめんなの?ねぇ、転移で戻ってこれるでしょ?貴方は王子なんだよ?1人で逃げても責めないから!?
『クリス!何がごめんなの!ねぇ!転移で逃げられるでしょう!ねぇ!!!?』
『もう……時間がない。シオン、俺は君が好きだった。ありがとう。愛してる』
それ以降クリスからの念話が途絶えた。
『ねぇ!クリス!?返事をして!』
シオンは何度も呼び掛けるが応答がない。ノームが1度眼を開けて、シオンの肩を叩いた。
「シオン!しっかりして!クリス君はきっと大丈夫よ!何せ、しっかり者のウンディーネが付いているんだから!」
眼を開けたシオンがノームの言葉にはっとなった。
「そ、そうだよね!ディーネがいるんじゃない!」
その時、ウンディーネから念話が届いたのだった。
作者
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