どちらを先にするのかそれが問題だ!
法王国の聖堂聖騎士団が国境から本国へ撤退したのを見届けてから、シオン達はリュミナス王国の王城へ戻ってきた。
無論、転移の事は秘密なので、普通に国境砦を出発し、見えなくなった所で転移したのだった。
「ふぃ~帰ってこれたよ~」
緊張の糸が切れたのか、テーブルにぐて~と、身体を預けるシオンに、クリス王子が果汁水を置いた。
「本当にお疲れ様。シオンのお陰で無駄な犠牲がでなくて良かったよ」
「ありがとー♪」
ごくごくっと、酸味の付いたジュースを飲み干した。
「さて、これからどうするか話し合いたい」
国王様が真面目な顔で話した。国王様の指示でギルバード公爵が大きな世界地図を用意し、今後の方針を話し合った。
「シオン君のお陰で法王国の戦争は回避された。しかし、あれで諦めるとは思えないが、しばらくは大きな動きはないだろうと思う」
国王様は長い棒で指差しながら説明する。
「意外な事に法王国にイフリートがいる事がわかった。詳しい場所は今後の調査になるが、法王国を先に当たるか、亜人連合国のシルフィードの方を先に調査するのか、決めたいと思う」
グランさんや、ウンディーネといった知能派は考え込んだ。
難しい事は頭の良い方々にお願いしよう!そうしよう!
シオンは出されたお菓子をムシャムシャと食べていた。とってもお子ちゃまである。
「ウンディーネ殿はどう思われる?」
国王の問い掛けにウンディーネは答えた。
「そうじゃな…………難しい所ではあるのぅ。まず、法王国では最強の将軍が倒れ、侵攻作戦も頓挫したため混乱しているじゃろう。他国の者が活動するには良いと思う。じゃが、騎士団は健在じゃ。敵国と言っていい所での活動には危険が伴う。しかし、亜人連合国は友好国と言う話じゃ。しかも、向こうのトップから四大精霊探しの打診があったと言う事じゃから、危険度は低いし、シルフィードの居場所のだいたいの場所など情報も持っている可能性がある」
「つまり、危険な法王国を後回しにして、亜人連合国の方から調査するべきだと?」
「ただ、そうなると混乱していた法王国が立ち直り、また行動を起こす可能性があるのじゃ」
う~ん…………と、考え込む一同に、フレイがシオンに尋ねた。
「シオンはどっちがいいと思う?」
突然話を振られたシオンは食べていたクッキーを落としてしまった。そして、そのクッキーが地図の上を転がり、慌てて捕まえた。
「シオンは亜人連合国から向かうべきと思うのね!」
えっ!?
ち、ちが…………
「確かに友好国からの調査の方が見付けやすいだろうな」
「なるほど!早期に発見し、3柱の四大精霊を従えて法王国に乗り込めば戦力も増加して、危険も減りますな!」
「うむ、確かにその方が良さそうじゃ」
なんだ!?なんだ!?私は何も考えてないのよ?持ち上げないで!?
シオンはヨイショ!と持ち上げられるのが苦手であった。
「え~と、はい。そんな感じでお願いします………」
手に取ったクッキーをかじりながら項垂れるのだった。
「では、使者に返事を書くとしよう」
「ただ、今回は転移ですぐに行くわけにはいかないな?誰か使者と一緒に亜人連合国へ行ってもらい、その者が転移で戻ってきて他のメンバーを連れていく形になる」
誰がいくのか見渡すと─
「その役目、私にお願いします!」
クリス王子が名乗りでた。
「う~む、船旅だが大丈夫か?」
「シオンばかり危険な目には合わせれません!自分も役に立ちたいのです!」
真剣な眼差しのクリス王子に国王は折れて許可を出すのだった。
「わかった。ならば、一国の王子として役目を果たしてこい」
「はっ!ありがとうございます!」
クリス王子は敬礼して応えるのだった。
「では、妾も同行するのじゃ。幸い、ノームもいるしのぅ。少しの間、シオンの元を離れても大丈夫じゃろう」
「ウンディーネ様、ありがとうございます!」
「クリス、余り無理はしないでね?」
クリス王子はシオンに大丈夫だよと言って旅の準備に取り掛かるのであった。
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