最後は抜けているのよね………
魔力を溜めたシオンが魔法を放った!
しかし、それはイルミナ将軍に向けられたものでは無かった。
「水の四大精霊の契約者であるシオンが命じる!全ての者を癒す慈しみの雨をここに!広域回復魔法『ヒーリング・レイン』!!!」
暖かい光がシオンの身体から空に登った。すると虹色の雨が降り注いだ。
「・・・・雨?」
思わずイルミナは空を見上げた。
雨なのに暖かい温度で、何故か疲れが無くなる感じがしてきた。ハッと我に返ると、倒れていた騎士団達が次々に起き上がって来ていたのだ。
「これは!?」
側で起き上がった騎士の1人がイルミナに駆け寄った。
「イルミナ将軍!助けて頂きありがとうございます!我々が手も足も出なかったゴーレムを1人で倒し続けるとは!流石です!」
騎士の感謝に、イルミナは表情が引き攣ってしまった。
「貴様、ゴーレムに倒されて動けなかったのではないか?」
「はっ!この雨を浴びたとたんに傷が癒えました!」
やはりか、とイルミナ将軍は天を仰いだ。そして、シオンの方を向いた。
「これで怪我人は居なくなりましね♪まぁ、軍事演習で鎧兜が傷付くのは当たり前ですよね?」
そう言って微笑むシオンの笑みにイルミナ将軍は恐怖を覚えた。
「貴様の目的はなんだ!」
虚勢を張りながら魔剣を構える!
「私の目的は法王国が王国にちょっかいを出さないようにする事。そして、全ての四大精霊を見つけ出す事です!」
イルミナを見据えて言った。
「…………全ての四大精霊を見つけ出す」
イルミナはシオンの言葉を反復して呟く。
「それに、貴女も助けます!」
!?
「どういう事だ?」
イルミナ将軍が反論する同時に、シオンは別の呪文を唱えた。
「彼の者の状態を浄化せよ!キュア・ヒーリング!!!」
シオンの手から光が放たれた。イルミナは虚を突かれ、まともに喰らってしまう。
「こ、これは…………?」
頭の中の霧が晴れていくかのように、澄み渡っていくのを感じたイルミナであった。
「あっ………」
急な事で脳内処理がパンクし、イルミナはそのまま気を失った。そしてシオンがイルミナの元へ近付こうとした時、予想外な事が起きてしまった!?
「「「将軍!!!」」」
傷が癒え、イルミナ将軍の元へ集まって来ていた騎士達が倒れたイルミナを担いで、撤退していってしまったのだ。
シオンも治したばかりの騎士達をまた傷付ける訳にもいかず、撤退する騎士達を見守るしか無かったのだ。
「あああぁぁぁ………………」
最後の最後でミスってしまったシオンは地面に手を着いて自己嫌悪に後悔するのだった。
こうして、法王国の侵攻作戦は電撃的に防がれる事になり、結果だけみれば王国側の全面的勝利となったのだった。聖堂聖騎士団もイルミナ将軍が倒れた事で戦いの続投は望まなかった。ゴーレムを倒せるのはイルミナ将軍のみであったからだ。
この戦いは両方の国境で、待ちぼうけを受けていた各商人達に拡散されることになる。
いわく・王国にはゴーレムを数百体同時召喚できる凄い魔導師がいる。
いわく・1000人もの怪我人を癒す事のできる『聖女』がいる。
などなどと、大陸中に広まっていくのだった。
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「シオン、お疲れ様です!」
「シオン怪我はない?大丈夫?」
落ち込んでいるシオンに労いの言葉を掛ける。
「それにしても、イルミナ将軍が目覚めた時にどうなるかじゃな?」
「そうね。すぐに我に返るのか、また洗脳されるのか、経過を見守るしかないわね」
イルミナ将軍がこれからどうなるかわからない。でも、収穫はあった!
「でも、これで四大精霊の手掛かりが全て揃ったわね」
「確かに!不幸中の幸いだったわ」
シオンだけキョトンとして、理解していなかった。
「どゆこと?」
首を傾げる始末である。
「はぁ~、イルミナ将軍が四大精霊のイフリートの愛し子って事は、法王国にイフリートが居るってことでしょう?それに、亜人連合国からも四大精霊のシルフィードを探して欲しいって使者が来ていたのよ」
!?
「おおっ!?これで全員が見つかるかも知れないね!」
ようやく理解したシオンも声を上げるのだった。
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