領地がヤバい!(挿絵あり)
あのやり取りからしばらく進み、ガイルさんが声を掛けてきた。
「シオンお嬢ちゃん、大丈夫なのか?」
「あの領民達が襲ってこないかですか?」
ガイルさんは頷いた。
「きっと大丈夫です。1番の問題である食料を渡しましたしね。それに─」
「それに?」
「ガイルさんが剣の達人っぽく言ったので、ガイルさんを恐れて襲って来ないと思います」
ガイルさんは感心したように言った。
「そこまで考えての発言でしたか。流石だな!」
馬車の隣でアンさんもびっくりしていました。
「ガイルさんに手柄を譲った訳ではなく、強者として抑止力になってもらう意味もあったのですね!?」
やめて!そんなキラキラした目でみないで!?
そして遂に領内に入ると…………
なんじゃこりゃーーーーーー!!!!!!
領内のあっちこっちに、広大な荒れ地が広がっていた。
「・・・・・・は?」
雑草が生え、耕している所も作物が枯れており、とても収穫が出来そうになかった。住民の家もボロボロで、あばら屋の様な家ばかり建っていた。
呆然としながら屋敷に向かうと、シルクード家だけは逆にまともな家として建っていた。
「まさかここまで悪化しているとは思いませんでした」
メイドのアンさんも顔が蒼白になっていた。
屋敷に着くと、メイド達が何人か出てきて出迎えてくれた。
「お帰りなさいませ!シオンお嬢様。長旅お疲れ様でございました」
メイド達が並んでお辞儀しました。なんだか顔色の悪い人が多いな?
少し見ていると1人のメイドさんが倒れました。
!?
「大丈夫!?」
良く見ると、熱があり明らかに栄養不足であった。嫌な予感がした。震える手で私は光属性の魔法を使った。
パッーー!!!
光輝くと、メイドの熱が下がり苦悶の表情は安らいだ。これはあり得ない!領民はともかく、屋敷のメイド達でさえこの有り様はあり得ない!?
「これはどういうこと?隠さずに答えなさい!」
私は珍しく怒りを露にした声で言った。周りは私が光魔法を使った事に驚いていたが、私が怒っていることに震えた。
「ひっ………申し訳ありません!」
屋敷のメイド長が慌てて頭を下げる。
「そんな事は良い!どういうことか早く言いなさい!」
メイド長は重い口を開いた。クズ両親のせいで不作が続き、領内に食べる物がないそうだ。
しかも、クズ両親が領内の治安維持と税の徴収の為に置いていったゴロツキどもが好き勝手に暴れているらしいのだ。
ブチッ!!!?
「…………ガイルさん、ちょっとお願いがあるのですけど」
私は荷物から、特大の宝石『琥珀』を出してガイルさんに渡した。
「報酬はそれを上げます」
ガイルはその大きさに目を開いた。
「お嬢ちゃん、これは国宝級ぐらいの価値があるぞ!?」
驚くガイルさんの言葉も無視して、私は再度尋ねた。
「報酬は足りるの?足りないの?」
私の有無を言わさぬ迫力にガイルさんも言葉に詰まった。
「………報酬は十分だ。だが、なんでもやるとは言わないぞ?俺にも仕事を選ぶ権利があるからな!」
私はガイルさんが断るとは思っていなかった。ガイルさんが断るのは要人の暗殺依頼とかだろう。
「この領内に『本物の盗賊』がいるようです。全て『討伐』して下さい。領主代行の私が許可します」
ガイルさんは、にやっと笑い「了解した!」と言って屋敷のメイド達にゴロツキどもの溜まり場を聞いて出ていった。
「貴女達もフォレストウルフの肉があります。それを食べたらすぐに休みなさい!」
私は連れてきたメイド、執事に仕事を代わらせ、屋敷のメイド達を休ませた。
久々のまともな食事にメイド達は泣きながら食べました。
私は馬が乗れる執事に、先程より小さい宝石とお金を渡してできるだけの『塩』と植物の『種』を買って来るように伝えた。種は兎に角色々な種類をね!
「なんとか明日の朝までには戻ってきてね!」
執事は力強く頷き出ていった。
よし!これで後は明日の準備をするだけだ!
私は屋敷にいる使用人達に明日行う『奇跡』の内容を伝えて準備に取りかかった!
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