帰るよー!
臨時収入が無くなったことでマジ泣きしているシオンにノームが話しかけてきた。
「まぁまぁ、シオンちゃん!土地の活性化についてはすぐには効果が出ないから、今年中ならシオンちゃんの力が必要になるわよ♪」
ガバッと起きてノームを見るシオンだった。
「本当に?」
「ええ、次回の収穫から豊作になるわ。現在、不作で苦しんでいるなら、シオンちゃんの緑聖魔術の方が成長スピードを早めるから必要よ」
ノームはウンディーネからシオンの事を少し聞いたのだ。
「それにしても植物を操る魔術なんて、私の仲間のドライアドぐらいしか知らないわ。本当に珍しいわね」
「えへへっ♪」
シオンは照れて頭を掻いた。そこに、グランがノームの前にやってきた。
「ノーム殿、覚えておるかのぅ?かつて、ワシが魔物に襲われ怪我をしている所を助けて頂いたものじゃ」
「えっ?………………誰?」
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何とも言えない空気が流れた。
そこにウンディーネが額に手を当てて言った。
「ノーム………貴様、どれだけ石になっていたと思っている。話を聞くに、そこにいるグラン殿がノームの言っていた人物だぞ?」
「マジでっ!?」
ノームの言葉にグランはガックシと肩を落としたのだった。
「かつてのワシは、美しく気高いノーム殿に助けられて正直、惹かれたのだ。だから、何度も探しに足を運んだのだ」
グランの言葉にノームは─
キュン♪
「ああ、なんて素敵なおじ様なのかしら♪」
キュン♪キュン♪
恋多き乙女であるのが四大精霊が一柱のノームであった。
「ごめんなさい。長く石になって居たためあなたの事が分からなかったわ。でも、このダンジョンで見かけた時、とても素敵な方だと思いました」
ノームの言葉にグランは年甲斐もなく照れて横を向いた。
「長く会いたかった。かつて助けて頂き『ありがとう』とずっと言いたかったぞ」
あらやだ。ダンディーなおじ様♪などとノームが思っているとは知らずに、脳内がピンク色のグランは目を輝かせていた。そして、長年会えなかった恋人の再会!みたいな感じで酔っていた。
「ああ…………そんな………」
クネクネと『しな』を作りながらモジモジするノームに、ウンディーネはため息をつきながらシオンに言った。
「シオン、メデューサとの詳しい戦闘についても知りたいし、転移で戻るとしよう。ああ、ノームは置いてきていいぞ。もう安否確認はすんだからのぅ?」
「待ちなさい!私もシオンと契約したから付いていくわよ!」
ノームは置いて行かれそうになって、慌てて反論した。
そしてシオンは了解です!と答えて、全員をダンジョンの外へ転移した。すると、待っていた兵士達が驚き慌てて駆けつけた。
「お疲れ様です!一体どこから帰還されたのでしょうか?」
「うむ、ダンジョンの強制帰還の魔法で戻ってきた。目的は達成した!城へ戻るぞ!」
兵士達は敬礼をして、すぐに帰り仕度を始めた。因みにダンジョンで荷物を運んでくれていた騎士達も先に戻ってきている。
こうしてシオン達はまた馬車に揺られながら王都へ戻るのだった。そして魔王軍の幹部を倒した事で、帝国の王子アース君の態度が変わった。
「シオンって凄いんだな!今度、訓練内容を教えてくれよ!」
キラキラした眼差しで見てくるので、シオンは断れず了承した。
城へ戻るとすぐにグイードさんの執務室へ通された。
「お帰り。それでどうだった?」
何か期待しているような顔をしていた。
「ええ、予想以上の成果がありました。四大精霊のノームが魔王軍の幹部メデューサに石化されており、それをシオンが助けたのです!」
レアとアースは父親に報告した。
「!?待て待て!どういうことだ!?」
また理解のキャパをオーバーしそうだったので、慌てて詳しい説明を求めた。
そしてゆっくりと報告を聞いたグイードさんは深い息を吐き、どうしてこうなった!?と、思ったのだった。
「魔王軍の幹部…………四天王の1人であったメデューサが四大精霊を襲っていたとは………しかも数十年前の話だという」
そうなのだ。四大精霊のノームが襲われたのは数十年も前の話である。もし魔王軍の狙いが四大精霊だとすると、ウンディーネが襲われなかったのはどうしてだろうか?
「まさか、ウンディーネ殿は封印に近い状態だったのか?」
「ディーネは規格外だからね。魔王軍も迂闊に手が出せなかったのかも?だから魔境の森に軟禁したんじゃないかな?」
今、その事を考えても仕方がないので、次の話に移ったのだった。
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