帝国へ行ってきます!
ざわざわ…………
ざわざわ…………
大勢の人々が広間でざわめいていた。
「本当なんだ!グラン皇帝陛下を見たんだ!」
「わ、私も見た!だが、消えてしまったんだ!」
グランは練習がてら、帝国の城に何度か戻って来ていたのだが、転移にまだ慣れていなかった為に自室ではなく、廊下などに転移してしまいそれを目撃されたのだ。
帝国の王城ではグラン皇帝はすでに死んでおり、幽霊になって彷徨っていると噂になっていた。
本来であれば元皇帝陛下と呼ぶべきだが、未だにグラン皇帝陛下と呼ぶ声が多かった。
イライラ!!!
イライラ!!!
「静まれ!!!先帝は死んではおらぬ!近いうち戻ってくると連絡があった!皆の者も迂闊に変な噂を広めるでないぞ!」
広間にいた大勢の貴族達はビシッと敬礼をして朝の会議は終了となった。
コツコツッ
執務室へ戻る途中で、グランの息子であり現皇帝であるグイードが苛立ちを隠さずに急ぎ足で歩いていた。
「クソ親父がっ!今の帝国の情勢を分かっているのか?ここ数年作物の実りが悪くなり、作物の物価が高くなっている。それに貴族達の選民意識が高くなって民を蔑ろにしている。このままでは暴動が起きるぞ!」
グイードは悪態を付きながら思案する。
すでに、一部の領地では民から暴動が起きている。それが帝国中に拡がらなかったのは、一重にグランのカリスマ性が大きかった。父グランは魔物が出ると自ら騎士団を率いて民の為に戦い、炊き出しなども出来る範囲で行っていたため、民からの信頼は厚かった。
それが明確な話も通さず、いきなり帝位を譲ると書き残して、居なくなってしまったのだ。グイードこそ父グランの背中を見て育っていた為、堅実的な政策を打ち出していたが、地盤が整っていないため、政策の反対など多数でて上手くいかない事が多かった。
それだけ先王グランが偉大過ぎたともいえる。
それでも一定数は、グランから息子グイードを助けて欲しいと言われて、助けている者もいるのだが現実は甘く無かった。
そんな中でのふざけたあの連絡…………
「転移だと?そんな伝説上の魔法がいきなり使えるようになる訳があるかっ!」
いつの間にか、グイードの自室に置いてあった手紙に、これまでの経緯が簡潔に書いてあったのだ。
執務室へ戻ったグイードは、引き出しから父グランからの手紙にまた目を通した。
ウンディーネに会いにシルクード領へ行ったこと、ウンディーネに無事に会えて、そこで同じ四大精霊である帝国にいるノームを探す事になった事などなど書かれていた。
グイードはまた悪態を付こうとした時だった。誰もいない執務室に人影が現れ、大勢の人が現れたのだ。
!?
「なっ─」
執務室の椅子に座っていたグイードに最初に気付いたのはグランだった。
「おお!グイード、悪かったのぅ!急に帝位を譲ってしまって。だが、信用できる者に補佐をお願いしていたし、大丈夫であったろう?」
急に現れたグランに、グイードは指をさして口をパクパクさせていた。
「あっ、グランお爺さんの息子さんですか?始めまして!リュミナス王国のシルクード領の領主シオン・シルクードです。四大精霊が一柱ウンディーネの契約者をやってます!」
「お初に御目に掛かります。リュミナス王国第一王子クリス・リュミナスです。この度は急な訪問で申し訳ありません」
「同じくお初に御目に掛かります。リュミナス王国レッド・ハート公爵が長女フレイヤ・レッド・ハートと申します!」
グイードは混乱していた。
ええ!それはもう盛大に混乱していた!
『はっ?どこから現れた?どうしてクソ親父が?えっ?転移ってマジだったの?ってか、リュミナス王国の王子や準王族の公爵令嬢なんているんだけど???それより四大精霊の契約者?本当に???』
グイードは余りの事にフリーズしていた。
「うん?グラン殿の息子殿かのぅ?妾は四大精霊が一柱ウンディーネである。しばらくやっかいになるぞ!」
『!?四大精霊きたーーーーー!!!!!この膨大な魔力は本物だーーーー!?』
遂にグイードは理解のキャパをオーバした為に口から魂を出しながら意識を飛ばしたのだった。
もう、どうにでもなれ!
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