護衛が必要なのです!
クズ両親がギャーギャー騒ぐ前に、馬車を三台ほど連れて、街の外れまでやって来ました。
「シオンお嬢様、ここでしばしお待ちを」
専属メイドのアンさんが言った。
「アンさん、どうかしたの?」
「ここで護衛と待ち合わせをしております。ここから領地まで一週間は掛かりますので」
ふむふむ、盗賊とかでるのかな?かな?
あれ?護衛を雇うお金は………?
あのクズ両親がお金を出す訳がない。
「あ、アンさん!護衛を雇うお金は………?」
いや、聞きたくないけど!?
「我々使用人達がお金を出し合いました」
ノォォォォォーーーーーー!!!!!!
やっぱりかよ!?
「そんな!いけないわ!護衛なんていらないから!?」
「シオンお嬢様、皆さんお嬢様が大切で大好きなのです。お嬢様に何かあったら生きて行けません。ここは我々の好意に甘えて下さい」
私は何も言えなくなった。ズルいよみんな!
「ふーん、確かに噂通りの人物のようだな?」
馬車の外から声が聞こえてきて、馬車の扉が開いた。
「御初に御目に掛かる。今回護衛の任務を受けた傭兵のリーダー、ガイルだ。俺を含めて10人で護衛を務める!」
「は、はい!シオン・シルクードと言います。よろしくお願い致します!」
私は緊張して声が上擦ってしまった。
「シオンお嬢様、ガイル様は有名な方でレベルも高レベルです。本来であれば我々の金額ではとても雇えない方ですので、御安心下さい」
へぇ~凄い人なんだねぇ~
(でもどうして安い賃金で受けてくれたんだろう?)
こうして私達は辺境の領地へ向かうのであった。最初の4日間は順調だった。特に問題もなく快適でした。
しかし馬車の揺れでお尻が痛くなったの!次回はクッションとか絶対用意しよう。
しかし、5日目に魔物が現れた。
「あれはフォレストウルフですね。本来は森に生息している魔物ですが、たまに平原でも現れます」
「あれが魔物………」
大の大人ぐらいある巨体に、動きも速そうだ。
ならば!
!?
「お嬢様!!!?」
いきなり私が馬車を降りたので、慌てたメイドのアンさんが叫んだ!
「おい!馬車に戻れ!?」
傭兵のガイルさんも大声で叫ぶが、私はすでに魔法を放つ準備が整っていた。
「大丈夫ですよ。『緑聖魔術・バインド』!」
私が唱えると、地面から草の蔦がフォレストウルフに絡まり動けなくした。
「…………おいおい。これはお嬢ちゃんがやったのか?」
「ええ、そうです。申し訳ありませんが、首を落として解体をお願いしてもよろしいでしょうか?」
フォレストウルフはお金になるのだ。牙は武器や装飾品、毛皮は絨毯や衣類に。肉は食材になるしで、余す所がないのである。
「わかった。後はやっておくから少し時間を貰うぞ?」
私は頭を下げて馬車へ戻った。
「シオンお嬢様!危ない事は止めて下さい!びっくりしたじゃないですか!?」
「ごめんなさい。せっかくの臨時収入を逃したくなかったの」
フォレストウルフは五匹いたのだ。護衛の報酬に一匹ぐらいやってもいいだろう。少しでもお金を蓄えて置きたいからね♪
シオンはホクホク顔で待っていた。
コソッ
「隊長、この魔法知っています?」
ガイルの部下が聞いてきた。
「いや、俺は知らない。植物を操る魔法なんてな」
「ですよねー?確か緑聖魔術って叫んでましたね」
「ああ、極稀にいる固有魔法かも知れないな」
魔法使いには先天的に、自分しか使えない魔法を持っている場合があるのだ。しかし珍しい魔法よりもガイルが気になったのは別の事であった。
『まだ五歳だぞ?魔物を見るのも初めてだったのに平然と魔術を使えるものなのか?』
貴族の娘が、魔物を見ても叫ばず冷静に対処したことに驚きを隠せなかった。
「中央貴族が腐り、地方も腐ってきて国が危ないって時に【本物】の貴族の『矜持』を持った者が現れたかもな………」
ガイルの呟きは誰にも聞こえる事はなかった。
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