会ってはならない二人!
「本当にありがとうございました!」
シオンは丁寧に頭を下げた。
「いやいや、こちらが好きでやったことじゃ。気にするでない。それより、その歳で素晴らしいものを作ったのぅ?」
お爺さんは、たこ焼の屋台を引いて人通りの少ない所へ移動しながら言った。
「えへへ♪あっ、御挨拶がまだでした!私はシオンって言います!お爺さんは?」
「うむ、ワシはグランと言う。見ての通りの冒険者じゃ」
自分の出で立ちを見せていった。
『ふむ、シオンと言ったか。ウンディーネの契約者と同じ名前とは奇遇よのぅ?』
流石に、高位の精霊と契約を結んだ貴族がこんな所で屋台をやっている訳がないと、本人である可能性を否定した。
「うわぁ~凄いね!カッコいいです!」
シオンは素直に言った。老人の出で立ちは傍目からみても威風堂々として、身に付けている鎧も風格に合っていた。
「フフフッ、素直な子供は好きじゃぞ」
「私もダンディーなお爺さんは好きです!」
「「わっはっはっは!!!!」」
実に似た者同士であった。
シオンは手伝って貰った御礼にと、1番良い宿の宿泊券をグランに渡した。
「もし良かったら使って下さい。宿場町の宿に泊まれるチケットです!」
「良いのか?お嬢ちゃんが泊まる宿の宿泊券だったのではないかのぅ?」
グランは悪いと思い返そうとしたが、横から話し掛けられて止まった。
「大丈夫ですよ。シオンお嬢様が御世話になりました」
ちょうど、メイドのアンさんがやってきて深々と頭を下げた。
「シオンお嬢様?」
てっきり平民の子供だと思っていたグランは思わずシオンを見た。
「えへへへ!これでも私、シルクード領の領主なんだ♪」
無邪気に笑うシオンにグランは絶句した。
「そこの君、領主であるお嬢ちゃんが働く事が悪いとは思わんが、護衛もなしに一人で居させるとは何事じゃ!命を狙われたらどうするつもりじゃ!」
グランの怒りはシオンを心配してのものであった為、メイドのアンさんは何も言えずただ頭を下げるのだった。
「グランお爺さん!アンさんを怒らないで下さい!アンさんも反対してたんです。でもちゃんと護衛は居るんです!」
「なに?」
グランは元Aランク冒険者、気配には敏感であったが、護衛の気配などしなかったのだ。余程の手練れなのだろうか?
『うむ、主殿を手伝ってくれた事、感謝するのじゃ』
地面から水が溢れ、ウンディーネが現れた。
!?
『まさか、シルクード領に来てすぐに契約者とウンディーネに会えるとは!?なるほど、ウンディーネが護衛しているとは周りに誰もいない訳だ』
最強の護衛が居るのだ、下手に手を出せばすぐに殺られるだろうな。
「まさか、領主殿に四大精霊のウンディーネに会えるとは驚いたぞ」
「ふむ?そんなに驚いている様に見えんがのぅ?」
不敵に微笑むウンディーネに、グランは苦笑いしか出来なかった。
「ちょうど君達に会いに来たのじゃが、時間は取れるじゃろうか?」
シオンは少し考えて答えた。
「今日はこの後用事があるので、明日でもよろしいでしょうか?」
「うむ、大丈夫じゃ!」
「では明日、私の屋敷に来て頂けますか?本日は先ほどの宿へお泊まり下さい」
こうして、グランと約束したシオンはその場を後にした。しばらく移動してから言った。
「アンさん、屋敷に戻ったら使用人達に伝えて下さい。大急ぎで屋敷の念入りな清掃と、来賓の準備をするようにと」
不思議に思ったアンさんはシオンに聞いた。
「風格はありましたが、ただの冒険者に過度の対応ではありませんか?」
「あの人、ただの冒険者じゃないよ。帝国の偉い人だよ」
!?
「帝国…………ですか?」
そう!ご記憶だろうか?作者は忘れていたが、シオンは『鑑定』を使えたのだ!鑑定でグランは帝国の元皇帝と出たために、内心で驚き焦っているのだ。
「詳しくは言えないけどお願い!」
こうしてシオンの屋敷は最大限の『おもてなし』の準備に追われるのだった。
そして─
シオンに渡された宿泊券の高級宿へたどり着いたグランは……………
「「はっ?」」
浴衣を着て風呂へ向かおうとしていたリュミナス王国の国王様とバッタリと鉢合わせしていました。
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