領地は維持するのが大変なのです!
転移の方法を公爵家と王族の方々にお伝えしてから、嬉しい誤算と厄介な問題が発生しました。ってか、発生しています。
順に御説明致しましょう!
まず、シルクード領はかつて説明した通り、薬草類の大量栽培と、シルクの高級ドレス、洋服の生産により大勢の人々がやってくるようになりました。外壁を新調し、検問所も大きくして、主要道路も石畳にしたので馬車での移動も楽になったのです。
1番多かった冒険者に、装備品を売る商人がやってきて、また食料を売るetc…………
それに伴い、宿屋も増やして行っていたのですが………
閃いちゃいました!!!!
てへっ♪
辺境って所は田舎ってことで避暑地に良いよねー♪
ってな訳で、巨大温泉街を作っちゃいました!
ウンディーネが『地下水脈』を『把握』した事で、過ごしやすくなったと言っていたので、山脈から温泉の源泉を通してもらいました。
マジチートだよ!ウンディーネ様!?
この温泉街がジワジワと口コミで広がり、ちょっとした裕福な商人や貴族の方々が来るようになりました。
で、何が問題かと言うと……………
「いやー!ここの温泉は最高だなぁ!細かいサービスも良いし、飯も旨い!なんだ?このエールは!ビール?知らんな?でも喉越し最高だ!この見たこともない料理の数々も素晴らしい!王城の食事より旨いぞ!?」
はい!御聡明な読者の方々は既にお気付きでしたでしょう。
このフットワークの軽い王様が、ちょくちょく、お城を抜け出して遊びに来るようになったんですよ。高級な服を脱いだ浴衣姿は、近所のおっさんにしか見えませんよ?国のトップがなんで温泉街でくつろいでいるの?あ、転移が使えるのね。ふぅ!!
でも流石に気を遣っちゃうんですよ!
そして、この王様にこの王子ありですよ!
「シオン、いつも父上が申し訳ない」
「いいえ、気に入って貰えて嬉しいですよ」
ここまで謙虚であれば可愛いのですが………
「では、一緒に出掛けるか!」
おい、ホロ酔いの王様をほっといて出掛けるのかよ!
「婚約者と出掛けるのは普通だろ?」
仮の婚約者ですけどね!
「はいはい、行きましょうね!」
今日はフレイちゃんは居ません。クリス王子と二人でお出掛けです。
王都に負けないぐらいに発展したシルクードの街中を小さな馬車でゆっくり通っていきます。
『この小さな馬車の中でシオンと二人っきり………』
つぶやくクリス王子は純情少年であった。軽口を叩くのは照れ隠しだった。
シルクード領の街の構成は、山のある北側が新しく作った温泉街、中央は大きなショッピング街となっており、魔境の森側は薬草類など農業地帯になっていた。(土壌の関係で)
「はいっ!着きました!」
「なぁ、シオン?何故ここに来た?」
シオンがまずやってきた場所は冒険者ギルドのシルクード支社であった。
クリス王子の質問を無視して、シオンが中に入って行くと─
「「「おおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」」」
『なんだ!?』
冒険者ギルドから大歓声が上がり、後から入ったクリス王子は驚いた。
「我らの領主様が来てくれたぞぉ!!!!」
「バカッ!天使様だろうが!」
「もう少し成長したら女神様よ♪」
男性冒険者も女性冒険者も等しくシオンを讃えていた。
「なぁ?シオンって何をしたんだ?」
とある冒険者がクリス王子の言葉を聞いて教えてくれた。
「おうっ!少年!シオンお嬢ちゃんの事を知らないのか?前の領主がシオンお嬢ちゃんの両親だったから余り酷い事は言えないが、お嬢ちゃんのおかげで、品薄状態の薬草類が豊富になったし、素材も今までより高値で買い取ってくれるし、ベースになる街をこんなに発展させて住みやすくしてくれたんだぜ!人気も出るってもんさっ!」
なるほど、本来シルクード領は魔境の森に潜る冒険者の街だったのか。
「そうそう、皆に紹介したい人がいるんだ」
???
「えっと…………モジモジ、紹介するね。私の(仮)婚約者のクリス王子だよ♪」
ギランッ!?
『ちょーーーーーーーー!!!!!!めっちゃ嬉しいけど、ここで言っちゃダメーーーーーー!!!!!!!!!!!』
「ハッハッハッ!ソウカソウカ、チョットショウネン、アッチデオハナシシヨウカ?」
いっやーーーーーー!!!!殺気が駄々漏れなんだけど!?その殺気を一国の王子に向けるなよ!?
「少年、強く生きて…………」
「シオン!面白がっているだろう!?」
こうして冒険者達にもみくちゃにされながらも、歓迎されたのだった。
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「ふぅ、酷い目にあった」
「楽しかったねー♪」
二人で真逆の感想であった。次は商店街(ショッピング街)へ向かい、色々と見て廻ってから大きな店へと入りました。
!?
「シオン!ここはマズイ!」
中に入ると、王妃様とレイラ夫人が楽しくドレスを見ていました。
うんっ!見なかった事にしましょう!
国のトップが護衛も付けずになんでいるの?
あっ、転移が使えるのね。そっすか。
「この国が本気で心配になるなぁ~」
「いや、全部シオンのせいのような?」
シオンの言葉にモヤッとするクリス王子だった。
「そうそう、これをシオンに」
クリス王子はシオンに小さな箱を渡した。
「開けていい?」
開いてみると中には銀色の指輪が入っていました。
「えっ!?これって?」
驚いてクリス王子を見ると照れ臭そうに目を逸らして言った。
「や、安物で悪いけど婚約指輪だ。受け取って貰えるかな?」
ドキドキ!
これはいきなりでしょう!
お姉ちゃん(前世16歳+6)ドキドキが止まらないよ!?
「…………はい」
少し二人の距離が縮まる出来事でした。
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