チートは皆で分け合いましょう!
シオンはシルクード領と王都を転移で行ったり来たりしていた。シオンがクリス王子と婚約を交わした事は瞬く間に王国中に………いや、大陸全土に伝わった。
王国の貴族達は当然だろうと納得し、他国の反応は様々であった。それは後に語ろうと思う。
問題は今、起こっている事への対処である。
「シ~オ~ン!私も転移を使いたいわ!」
フレイちゃんがウルウルした目でシオンに言ってきた。うへへっ可愛いのぅ~♪
って、そうじゃないよ!
「えぇ!!!急にどうしたの?」
「シオンばかり来てくれて、シオンがいないとシルクード領へ遊びに行けないんだもん!」
「そうだな。シオンが急に来なくなると連絡も出来ないし困るな?」
さも当然と言った様に、公爵家に来ているクリス王子が何かほざいていますよ!
「おい、シオン。フレイと俺の態度が違い過ぎないか?」
「いえいえ!そんな事は…………ないよ?」
何故に疑問系!?
何か言いたそうな王子を置いておいて、シオンは腕を組んで唸った。
「私も転移の利便性は感じているんだけどディーネに止められているんだよね~」
「ウンディーネ様はどうして止めているんだ?」
『それはのぅ?御主の様に信用出来ぬ者が知ったら悪用されるじゃろうが』
突然、ウンディーネが現れた。
「うわっ!びっくりした…………」
胸に手を置きドキドキしているクリス王子を見ながらウンディーネはため息を吐いた。
「珍しいね。ディーネが自分から来るなんて」
「うむ。シルクード領もずいぶん『暮らしやすく』なったのじゃが、代わりに不埒なやからも多く来る様になったのじゃ。故に信用できる者でないと転移を伝えるのは禁止したのじゃ」
「ええぇ!?シオンは私の事を信用してくれないの?」
ウルウルッ!?
ウルウルッ!?
ウグッ!そんな潤んだ目で見るのは反則だよ!?
「そ、そんな事は………ないけど」
チラッ
チラッ
シオンはウンディーネを横目で見て合図した。
「そのような目で見るでない。主殿よ?でも確かに、ここからの連絡が面倒かのぅ?」
こうして急遽色々と話し合い、王様と公爵の家族のみに教えるという事で話が付いた。
公爵家から伝令が王城に向かうと、王様と王妃様が飛んでやってきました。お城に勤務していたギルバード公爵も一緒です。
「はぁはぁ!ウンディーネ殿!転移の魔法を教えて頂けると言うのは本当ですか!?」
いや、本当に飛んできましたよ。大丈夫ですか?王様よ?執事やメイドさん達を部屋の外へ追い出し、シオン、フレイ、クリス、公爵夫妻、国王夫妻達のみ残りました。
「まず、最初にこれを着けるのじゃ」
ウンディーネは手の平から指輪を作り出した。指輪には小さな蒼いアクアマリンの宝石が付いていた。
「これは?」
「これは妾の力の一部を結晶化したものじゃ。まぁ、指輪でなくとも良かったのじゃが、1番無くさないじゃろう?」
確かに、ネックレスとかだと盗まれたりするしね!
「まず、これで妾の魔力を感じる事ができるはずじゃ。意識を指輪に集中してみるがよい」
あっ、なんか暖かい感じがするよ!?
目を閉じて皆が集中し感じていた。
「次に、ここにいる者はシルクード領のシオンの屋敷に行った事があるじゃろう?シオンの屋敷を思い浮かべてみよ」
部屋にいた皆が、同じく思い浮かべると…………
「目を開けてみよ」
!?
「「「なっ!?」」」
目を開けるとそこはシルクード領にあるシオンの屋敷の中でした。
「うむ、みな成功じゃのぅ!」
「これはいったい?」
なんか自分の力で転移した実感が湧かないのですが?
「今回は妾の力がいき渡ったシルクード領へ、妾の魔力を頼りに転移が成功したのじゃ。指輪は補助する魔道具という訳じゃ。悪用されても困るし、最初はシルクード領と公爵家、王城のみしか転移できん。…………が、何度も試していけば感覚が掴めて、御主らの行った事のある場所へ好きに行けるようになるじゃろう。…………多分」
ウンディーネの言葉に納得する一同だった。
「ああ♪これで好きな時にシルクで出来たドレスを買いに行けるのね♪」
「そうね!嬉しいわ♪」
公爵夫人と王妃様が、キャッキャッウフフと楽しそうにはしゃいでいた。シルクード領内のみでシルク専門服飾店をオープンしていたのだ。
本来は大都市にも出店したいと思ったけど、輸送にも盗賊が出るし、何よりシルクード領地へ商人に来て貰いたいからね!
現地でお金を落として貰わないと♪
しかし王様は他の人達より感動していた。
「兄上、どうされた?」
「国王になって行動の自由が失われたが、この魔法があれば、息抜きに遊びに行けると思ってな!」
「…………国王様?」
ジトーとした目で見つめると………
「何も言わなくてもわかっている!しかし、いつ暗殺者に狙われるかわからない立場だと、自由な時間というのがどれだけ素晴らしい事か!?」
王様はジーンと感動しているようだった。
そして─
消えた。
!?
「「「えっ???」」」
そして数分してまた現れた。
「素晴らしいぞーーーーーーーーー!!!!!!!」
王様の手には『雪』が握られていた。
「なんと!?もうコツを掴み、別の場所へ飛んだのかのぅ!?」
「ウンディーネ殿!感謝します!これは素晴らしい!!!!私は自由だーーーーー!!!!!」
(某CM風)
王様は満面の笑みで感謝していた。
王様以外の人々は、余りの清々しい笑顔に苦笑いで返すのだった。
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