第二十三話
皆様ごきげんよう。
はい。
今、久しぶりに帰ってこられましたフィリップ様と庭を散策しております。
久しぶりに帰ってこられたフィリップ様はとても温かな笑顔で、以前と変わらない太陽のような雰囲気の方でございます。
「ティナは、また美しくなったね。」
「へ?そ、そんなことはございませんわ。」
笑顔でそう言われて、とてもうれしくてたまらなくなります。
私美しくなっているのでしょうか。
貴方と一緒に並ぶために努力は続けているつもりですが、どうなのでしょう。
フィリップ様は足を止めると、私の両手を包むように握ると言いました。
「ティナ、、、あのね、もしキミが他に好きな人が出来ても、今ならまだ引き返せるよ。」
え?
はい?
え?
はーい。ぷっちん来ました。この方何を言っているのでしょうか?
「寝言は寝て言えでございます。」
「え?」
「ふふ。心の声が漏れましたわ。」
はい。漏れても仕方ないですよねー。この人、何を言ってくれているのであろうか。
そんな時でした。
突然マリア様がこちらへと歩いてこられると、私の腕を取りぎゅっと抱きしめてこられます。
はい。
最近マリア様のスキンシップがとても激しいです。令嬢としてそれはどうかとも思うのですが私に対してだけなようなので、なんといいますか、猫に懐かれて嬉しいと言いますか、まんざらでもありません。
「マリア様、突然どうされたのです?フィリップ殿下の御前ですよ?」
「いや、いいよティナの友達なのでしょう?」
一応窘めると、マリア様はとても美しい所作でフィリップ殿下にカテーシーを行います。
はい。
鍛えたかいがありました。見事です。さすがヒロイン。
「申し訳ございません。ティナ様に会えた喜びで、つい。殿下もご機嫌麗しゅうございます。私は男爵家令嬢マリア・グロリアと申します。」
「ティナと仲がいいんだね。」
「はい。それはもうとても仲良くしていただいております。」
またぎゅっと腕を抱きしめられて、そう言われ、少し照れます。
私そんなにマリア様に慕われていたんですね。
ですが、そんなマリア様の様子を見て、フィリップ様のお顔が曇ります。
何故?
「そうなのかい?、、、けど、私とティナだって仲がいいよ。」
その言葉に私は嬉しくてたまらなくなります。
ええそうですとも。
私とフィリップ様も仲良しです。
「ふふ。そうですか。」
何故か勝ち誇った様子でマリア様が微笑まれますと、フィリップ様が口元をぴくぴくとさせております。
「マリア様?」
思わずそういうと、マリア様はパッと手を離されて言いました。
「ヨハン様とアレクシス様もティナ様と仲がいいですよね。」
ん?
いえ、ある程度は話しますが、仲がいいと言えるのでしょうか?
「えーっと、そうですか?」
「はい。ですから、殿下。一言お伝えしておきます。」
「なんだい?」
「弱気な発言でティナ様の御心を試す前に、もう少しご自分のお気持ちを伝えていた方がいいですよ。それでは失礼いたします。」
「マリア様!」
私は窘めようとそう声を上げましたが、ころころと笑いながらマリア様は行ってしまわれました。
もう!
フィリップ様はお優しいから不敬などには問われませんが、それでもとても失礼です。
あぁ、今度また鍛えなおさなければなりませんね!
「はぁ、私はかっこ悪いな。」
フィリップ様のお声が聞こえて首を傾げてしまいます。
はて?
「いいえ。フィリップ様は世界で一番かっこいいです。」
「え?」
「フィリップ様はご自分に妥協いたしません。次期国王としての努力を怠ることなく、様々に見聞を広げ、学び、活かしていけるよう民の声も聞き頑張っておられます。そんなフィリップ様は世界で一番かっこいいです。」
当たり前の事を言うと、フィリップ様は顔を真っ赤にされました。
そして、久しぶりにその温かな胸に抱きしめられます。
「はぁ、やっぱりかっこ悪い。ティナを支えたいのに、支えられてばかりだ。」
「はて?今、支えていただいております。」
「物理的ではなくて、精神的にだよ。」
くすくすと笑いながらそう言われ、私も笑ってしまいます。
「ティナ。さっきのは撤回させて。ごめんだけど、もうキミを私は手放せないよ。」
「ふふ。私のセリフですわ。大好きです!フィリップ様!」
「あぁ。私も愛しているよ。」
あぁ、久しぶりのフィリップ様。
あったかいです。
では皆様、ごきげんよう。
はぅ。




