宿屋での出来事 1
王都で冒険の準備を終えたマルス達は、迷いの森近く近くラビリンス村まで、行商に向かう商人の護衛依頼をギルドで受けた。
道中、何度かモンスターに襲撃されたが、手古摺ることなく、モンスターを討伐した。
「いやぁーー、流石英雄様方だ。英雄様に護衛していただけて助かりましたよ。」
行商人は、マルス達と最初にあった時から、マルス達が魔王を討伐していた者だと知っていた為、初日からマルス達に話しかけまくりであった。
「いえ。こちらも移動が楽に行えましたので。」
マルス達は、行商人から護衛の報酬を受け取る。
その後、行商人と別れたマルス達は、迷いの森に向かう前に、一晩この村で過ごす為、宿へと向かう。
何度もこの村を訪れていた行商人が口利きしてくれたお陰で、マルス達は格安で村の宿を紹介してもらったのだ。
「宿泊ですか?」
宿に入ると、マルス達と同年代くらいの可愛らしい女性がマルス達に声を掛ける。
「はい。」
マルスが行商人の名前を出すと、女性に話は通っていたようで、すんなり話が進んだ。
「私は、サーシャです。宿で分からないことがあれば、私に聞いて下さいね。」
「あら、お客さん? 随分と美男美女のグループねぇ。狭い宿だけど、寛いで行ってね。」
「あっ、お母さん。」
「サーシャ、お客さんを部屋に案内して来なさい。」
「はーーい。皆さん、お部屋へご案内しますね。」
マルス達は、サーシャに案内されて、部屋へ通された。
男女で一部屋ずつ取った為、マルスはクレイと共に部屋に入る。
「いよいよ。明日は初ダンジョンだ。」
「ああ。どんな敵が出て来るか、楽しみだ。」
マルスとクレイは、初めてのダンジョンを控えてワクワクしていた。
コンコン!
マルスとクレイが話し込んでいると、部屋の扉がノックされる。
マルスが部屋の扉を開けると、そこに立っていたのは、宿の看板娘のサーシャだった。
「夕飯の支度が出来ましたが、食堂で食べられますか? それとも部屋へお持ち致しましょうか?」
「食堂で食べます。クレイ、夕飯だって。」
「お!? もうそんな時間か。」
部屋の鍵を閉め、外へ出たマルス達は、隣の部屋にいるイリス達に声を掛けて、一緒に食堂へと向かう。
食堂に入ると、マルス達以外の宿泊客も食事を取っていた。
食事をしている者達を見ると、冒険者ばかりだった。
若い男女4人のグループ、中年の男女4人のグループ、ガラの悪そうな4人のグループ、それとマルス達が護衛した行商人が単独で座っていた。
行商人は、マルス達に気が付くと自分の下へ来るように手招きする。
特に断る理由も無いので、マルス達は行商人と相席することにした。
「商売は上手く行きましたか?」
「ああ。つい最近、遺跡型ダンジョンが発見されてからは、冒険者が多く来ているみたいだね。運んで来た商品は、全て買い取ってもらったよ。勿論、良い値段でね。」
そう口にする行商人は、ホクホク顔だった。
「それは良かったです。」
「それより、君達もその遺跡型ダンジョンに行くんだよな? 店の人達が言ってたんだが、ダンジョンに行った冒険者の多くが、戻って来ていないそうだ。」
「え? でも、ダンジョンに行ったら、数日は戻らない人が多いんですよね?」
ダンジョンの規模にもよるが、数日戻らないことはままあることである。
「そうなんだが、既に数十日は、ダンジョンから戻ってない冒険者パーティーが、相当な数に上るらしい。」
「迷いの森で、道に迷ってしまったとかは?」
「村の人達もそう思っていたらしいんだが、帰還した冒険者パーティーからの話だと、迷いの森の目印は、ちゃんと残っているみたいなんだ。」
(それなら、迷いの森で迷っているってことはなさそうだな。)
「ということは、ダンジョンに強力なモンスターが潜んでいたってことですか?」
「或いは、ダンジョンのトラップに引っかかって、未だにダンジョンを彷徨っているかだな。」
「成る程。俺達も気を引き締めて行かないとだな。」
「そうね。もし、罠に掛かっているパーティーを見つけたら、助け出しましょう。」
イリスは、帰還していない冒険者達の身を心配していた。
「そうだね。」
マルスは、イリスの意見に同意し、クレイ達も同じ気持ちだった。
「流石ですねぇ。」
行商人は、仕事柄多くの冒険者を見てきたが、赤の他人を心配出来る程の冒険者は、数少ないと感心していた。
「オメェらじゃ、死ぬだけだぜ!」
その時、耳障りな声が食堂に響いた。
マルスが声のした方を向くと、ガラの悪そうな連中の一人が、若い男女のグループの前に立っていた。
マルス達は、会話を止めて成り行きを見守る。
「何故ですか?」
若い男女のグループの中から、赤髪の男が立ち上がる。
「テメェら、見てぇなひよっ子が行くところじゃねぇんだよ!」
ガラの悪い男が、見下すように言葉を放つ。
「俺は、Cクラスの冒険者だ。ひよっ子などでは無い!」
赤髪の男は、自分の力に自信があるのか、堂々とした態度だった。
「……そうかい。まぁ、死なないように気をつけるんだな。最近は、ダンジョンに行った冒険者が帰って来ないって噂が出ているからな。」
「……ご忠告どうも。だが、俺達はそんな柔じゃない。」
殴り合いでも始まりそうな雰囲気だったが、ガラの悪そうな男が顔をニヤつかせながら席に戻ったことで、赤髪の男も椅子に腰を下ろした。
(なんだ? 見た目はアレだけど、若い人に忠告したかっただけなのか?)
マルスは、少しの違和感を覚えたが、それがなんなのか、その時は分からなかったのだった。
もう少し、宿の食堂が続きます(^^)




