白魔道士について知ろう!
「マルス。お疲れ様。」
ザックスとの戦闘を終えたマルスに、イリスがタオルを差し出す。
「ありがとうイリス。」
マルスは、イリスが差し出したタオルを受け取り、先程の戦闘で掻いた汗を拭う。
「さっきのマルスの試合を見て、みんな目の色が変わったみたいよ。」
イリスの言葉を受けて、マルスが白魔道士部隊の面々を見ると、その瞳はやる気に満ち溢れていた。
「そうみたいだね。戦った甲斐があったよ。」
(ザックスさんが、来てくれて良かった。)
マルスは、心の中で、この場に来てくれたザックスに感謝したのだった。
「それでは、これから皆さんの訓練を始めたいと思います。」
マルスの言葉に、皆真剣な表情を浮かべている。
マルスがザックスと戦う前までは、皆が半分近い人間が不満そうな表情を浮かべていたのだが、マルスの実力をその目で見たことで、マルスのように戦えるようになりたいと思ったのだ。
今まで、戦闘職に馬鹿にされ続けた彼らだが、いつか見返してやりたいという気持ちが心の奥底に眠っていたのだ。
マルスの戦闘が、そんな彼らの眠っていた気持ちに火を付けたのである。
「と、その前に、皆さんのこれまでの活動を理解していませんので、今までの活動を簡単に説明していただけますか?」
マルスは、国王とテュールから白魔道士を鍛えて欲しいと頼まれたが、今までの白魔道士が、戦場でどのような活動をしていたのかを知らない。
白魔道士を鍛えるにしても、先ずは、知ることが先だと考えたのだ。
マルスの問いに、白魔道士の部隊を率いるブラストが説明を始める。
先ず、白魔道士の部隊が出動するのは、3パターンある。
一つ目は、大規模なモンスターの襲撃。
これは、大軍で出動するため、負傷した兵士の治療や、襲撃された村などがあった場合は、市民の治療をする為である。
この場合は、モンスターの近くに白魔道士の部隊は近付かず。
後方に位置にして、運び込まれた負傷兵の治療を行うのだ。
白魔道士が前衛に出てしまうと、足手まといになるだけでなく、自分の命を失う可能性が大きいためだ。
前衛職と違い、白魔道士はHPや防御力が低い為だ。
二つ目は、疫病などが流行した村などに行き、治療を施すことだ。
この二つ目に関しては、前衛職では不可能であり、白魔道士が大活躍する。
そのため、疫病が流行した地域では白魔道士の人気は高くなる。
三つ目は、村や街に派遣されることだ。
三つ目は、短期的、長期的と色々あるのだが、派遣された地域で有事の際に治療を行うこととなるのだが、派遣される白魔道士は一人か二人と少なく、共に派遣される前衛職の者達からの仕打ちは酷く、全ての雑用を白魔道士が押し付けられている状況なのである。
「モンスターの討伐は、全くしていないのですか?」
マルスがブラストの説明を聞いていた感じたのは、白魔道士が全く戦闘をしていないということだ。
「ええ。冒険者学校で、基本的にレベル10くらいまでは上げさせてもらえますが、卒業して軍に入ってからは、一度も戦闘をしていません。」
ブラスト自身、レベルを上げたいと思ったことは、数えきれない程あるのだが、誰も白魔道士のレベル上げに付き合ってはくれないのだ。
(嘘だろ? 卒業してから全く戦闘していないの。てことは、皆んなレベルが低いままってことか。)
マルスは、ブラストの言葉に困惑する。
しかし、ここでマルスはあることに気が付いた。
(レベルが低いままってことは、まだまだ上達する余地があるってことか!? これなら、日頃の訓練とモンスターの討伐をこなしていけば、順調に戦力アップを図れそうだぞ!)
「分かりました。それでは、皆さんにはここでの訓練に加えて、モンスターを討伐してレベル上げも行なってもらいます。」
マルスの言葉に、白魔道士達に緊張が走る。
マルスがザックスを倒したことで、白魔道士部隊の者達は、マルスの指示に従おうと決めたのだが。
軍に入隊してから、後方支援しかしておらず、身の危険を感じる現場には、一切出ていなかったのだ。
緊張するなと言う方が、難しい話である。
「あの、マルス様。私もそうですが、ここにいる者達は、しばらく戦闘から離れていましたので、その。」
ブラストは、発言しながらも言い淀んでしまう。
「分かっていますよ。モンスターとの戦闘は、しっかり訓練してからです。勿論、最初は弱いモンスターから慣らして行きますから、安心して下さい。」
マルスが笑顔でそう答えると、部隊に走っていた緊張が和らぐ。
「そ、そうですか。……ふぅ。」
ブラストは、マルスの言葉を聞いて一安心する。
ブラストは、マルスが鬼の様に、強敵にいきなり突撃させる様なことを言い出した場合は、抗議しようと思っていたのだが、その考えは杞憂に終わった。
「それで、マルスはみんなにどんな訓練をしてもらうの?」
イリスは、まだマルスがどんな訓練をするのか聞いていない為、興味津々である。
イリスだけじゃなく、これからマルスの訓練を受けることになる、白魔道士部隊の面々も、気になっていたことである。
「取り敢えず、皆さんには走ってもらいます。」
マルスは、満面の笑みでそう宣言したのだった。
次回 地獄の訓練開始!




