白魔道士を舐めるな!
マルスVSザックス
マルスとザックスが、訓練場の使用を巡って、試合を行うことになり、白魔道士の部隊とザックスの部隊が両者の試合を見守ることとなった。
「棄権するなら今の内だぞ?」
ザックスは、マルスを馬鹿にするように嘲笑う。
「棄権なんてしませんよ。」
マルスは、ザックスへと武器を構えた。
「それでは、立会いは私が務めます。武器は互いの武器を使用。敗北を宣言するか、戦闘不能にした方を勝利とします。」
イリスは、ザックスの態度にかなりご不満な様子ではあったが、王女であるイリスが口を挟むよりも、今後のことを考え、マルスがザックスを倒した方が良いと判断したのだ。
ザックスも、自分の武器である大剣の切っ先をマルスへと向ける。
(かなり重量のありそうな武器だな。あれを振り回せるってことは、攻撃力に相当な自信があるんだろう。攻撃速度よりも、一撃一撃の威力を重視するタイプかな?)
マルスは、ザックスの武器を見て、ザックスの戦闘スタイルをイメージする。
「試合……始め!」
イリスの号令と共に、マルスがザックスへと間合いを詰める。
(先ずは、貴方の実力を見せてもらいますよ!)
マルスが、素早く剣を振り、連続攻撃を繰り出した。
「ふん。所詮白魔道士の力では、この程度だろうな。」
(マジかよ!? 白魔道士の癖に、中々な威力と剣速じゃねぇかよ!)
マルスの連続攻撃を、ザックスは大剣を器用に扱い、弾いて行く。
内心ザックスは、マルスの攻撃が自分の予想していたものを遥かに上回っており、かなり動揺していた。
しかし、動揺を表に出すことはせず、強がってみせたのだ。
(このスピードには、付いて来れるのか。流石隊長クラスだ。口だけじゃないみたいだな。)
マルスは、全力までは出していないが、自分の攻撃に対処しているザックスが、口だけの男では無かったと判断する。
「白魔道士のひ弱な身体じゃ、俺の剣を受け止める事なんて出来ねぇよ!」
マルスの攻撃を捌いていたザックスが、攻撃に転じる。
攻撃力に絶対の自信を持っているザックスは、力任せに剣を振るう。
キンッ!
ザックス自慢の攻撃を、マルスは難なく受け止めてしまう。
「馬鹿な!? 俺の剣を受け止めただと!」
ザックスは、自分の剣を白魔道士であるマルスが受け止めきれるとは思っても見なかったため、激しく動揺する。
(やっぱり、大剣を使うだけあって、一撃の威力は大したものだな。)
マルスは、ザックスの剣を受け止めたものの、全力を出して拮抗している状態だった。
「認めん認めん認めんぞーー!」
ザックスは、狂ったかの様に、マルスへと剣を振るうが、マルスはザックスの剣を受け止めるのでは無く、剣を逸らして、ザックスの攻撃を全ていなしてしまう。
(どうなっていると言うのだ!? 何故、白魔道士である奴がこれ程の力を有している! 剣技を使うまでも無く、圧勝する予定が。……仕方がない。俺の剣技で倒れるがいい!)
ザックスは、自分の思い描いていた展開とは、大幅に異なる状況に陥り焦っていた。
ザックスの当初の予定では、剣技を使うことなく、完勝する予定だったのだ。
しかし、マルスの力が予想以上だった為、剣技の使用を決意する。
「これならどうだ! 【剣技:豪烈斬】!」
(流石に、素の状態では受け切れないな。)
「【支援魔法:超越する身体】!」
ザックスの中級剣技に対し、マルスは上級支援魔法を自身に施し、ザックスの豪烈斬に剣をぶつける。
ザックスの攻撃力よりも、マルスの攻撃力の方が上回っていたことから、ザックスの剣が弾かれてしまう。
「何だと!?」
(剣技を使用した俺の方が、力負けしたと言うのか!? あり得ん!)
ザックスは、剣技を使用した自分が押し負けるとは微塵も思っていなかった。
試合を観戦している、両部隊からもどよめき声が漏れる。
まさか、白魔道士であるマルスが、隊長クラスである上級剣士ザックスを、圧倒するとは考えてもいなかったのだ。
「……マジかよ。」
マルスに意見したルベルは、マルスの力を目の当たりにして、驚いていた。
白魔道士が、戦闘職相手に、勝てるとは想像したことも無かったのだ。
幼き頃、自分の職業が白魔道士と知り、ルベルは絶望した。
白魔道士では、攻撃力や防御力が弱いだけでなく、攻撃魔法も使えない為、碌に敵と戦うことも出来ない。
何より、世の中が、白魔道士のことを、使えない、貧弱、ゴミ屑、などと馬鹿にしている為、ルベルもかなりいじめられた過去を持つ。
いや、ルベルだけではない、ここにいる白魔道士や上級白魔道士達は、全員が白魔道士と言う職業によって、辛い経験をしたことがあるのだ。
しかし、同じ白魔道士であるマルスが、戦闘職のザックス相手に、優勢な立ち回りをしているのを目にし、白魔道士だからと諦めては行けなかったのだと、初めて思えたのだ。
一方、ザックスの部隊の者達は、この状況を予想していた者は一人もいなかった。
「誰だよ白魔道士だから、どうせ弱いって言ってた奴?」
「てか、素の状態でも隊長とやり合えてたってのに、自分に支援魔法を掛けて、能力を底上げしてるぞ。」
「素で対等ってことは、強化されたら、隊長に勝ち目が無いじゃないか!?」
「白魔道士って、こんなに強いのかよ?」
最後の兵士の言葉は、ザックスの部隊員、全員が感じていたことだった。
「全力で来て下さい。」
マルスは、先程の剣技がザックスの全力だとは思っていなかった。
「言われるまでもねぇ! 【剣技:豪破烈斬】!」
「【支援魔法:全大天使】!」
ザックスの全力の一撃に対して、マルスも全力で応えようと、最上級支援魔法を自身に施して、全能力を強化する。
「行きます。【力の剣:建御雷神】!」
ザックスの剣と、マルスの剣がぶつかり合い、一瞬の拮抗も無く、マルスの剣がザックスを斬り伏せた。
「がはっ!?」
マルスの攻撃を受けたザックスは、仰向けに倒れた。
「勝負あり! マルスの勝利です。」
イリスは、ザックスの戦闘不能を確認し、マルスの勝利を宣言したのだった。
その瞬間、白魔道士部隊からは歓声が上がり、逆にザックスの部隊は唖然としていた。
「大丈夫ですか? 今、回復しますね。【回復魔法:大回復】。」
マルスが、ザックスに回復魔法を施すと、ザックスの傷が見る見る塞がって行く。
「……俺の負けか。訓練場は、お前らが使え。」
ザックスは、潔く負けを認め、部隊を引き連れて立ち去る。
「これで認めてもらえますか?」
マルスがルベルに近付き、そう口にすると。
ルベルは、残像を残すくらいの勢いで、首を縦に振ったのだった。
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