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白魔道士の指導は、波乱の幕開け!?

 マルス達が国王への報告を終えた後、ゼウスとヘラは、目的である息子探しの旅に出掛けた。


 強力な敵の出現があったことから、王都に止まることも考えた二人だが、国王はいつまでも二人の力だけに頼るわけにはいかないと、二人の背中を押した為、二人は息子探しに出掛けることが出来たのだった。


「それじゃ、元気でなマルス。」

「うん。二人も元気でね。」

 マルスは、ゼウスとヘラと固い握手を交わす。


「仲良くするのよ。」

「そうだ!? 結婚式には戻って来るから、大々的に宣伝してくれよな! どこにいても駆け付けるから。」

「う、うん。」

 ゼウスの言葉に、若干頬を赤くするマルス。


 そのマルスの横では、イリスが耳まで赤くしていたのだった。


 マルスに笑顔を向けたゼウスとヘラは、王都に背を向けて歩き出す。


「行っちゃったね。」

「ああ。まぁ、二人のことだから、きっと子供を見つけて帰って来るさ。」

 王都の門で、ゼウスとヘラを見送った、マルスとイリスは、二人の背中が見えなくなるまで、見送ったのだった。




  ▽


 二人を見送った足で、マルスはヘパイストスの下を訪れていた。


 魔王マンティコアを討伐してから、バタバタしていた為、魔王石を使っての、武器強化が出来ていなかったのだ。


 マルスは、今後も悪魔化した者達が襲って来る可能性があることから、最大限の備えをしておこうと考えていた。


「また魔王石を手に入れたのか。大したもんだな。」

 ヘパイストスは、マルスとイリスがこれ程の偉業を成し遂げるとは思っても見なかったのだ。


「ゼウスさんとヘラさんが、一緒に戦ってくれましたから。」

「あの英雄二人もいたのか!? そりゃ、魔王に同情しちまうぜ。」

 ヘパイストスの脳内では、英雄達にフルボッコにされる魔王の姿が浮かんでいた。


 ヘパイストスと雑談した後、セケルの下を訪ね、魔王マンティコアを討伐して手に入れた魔王石を、マルスの武器に取り付けられている魔石と混ぜ合わせ、より強力な魔石にしたのだった。


  ▽


「イリスは、この後どうするの?」

 マルスは、この後に軍の訓練施設に行き、白魔道士達を指導することになっている。


「マルスに付いて行ってもいい? 私は攻撃魔法が使えるけど、いざ接近された時に、少しでも戦えるようにしたいの。」

 基本的に、遠距離から攻撃魔法で敵を殲滅する戦闘スタイルであるが、それでも敵の接近を許してしまった時を考えて、イリスも接近戦の能力を高めようと考えていたのだった。


「分かった。それじゃ、一緒に行こうか。」

 マルスとイリスは、並んで軍の施設へ向けて歩き出す。


(イリスって、いつもいい匂いがするよな。)

 マルスは、並んで歩いているイリスの方をチラ見する。


 そして、マルスの視線は下に下り、イリスの空いている手に止まる。


(恋人同士なんだし、手を握っても大丈夫だよな?)

 お互い、横に並んで歩いているので、マルスが意識して少し手をイリスの方に動かすと、お互いの手が触れ合う。


 互いの手が触れ合うと、マルスとイリスは頬を赤らめる。


(ぬぉーー!? やるんだ俺!)

 マルスは、意を決してイリスの手を握る。


(よし! 俺はやったぞ!)

 イリスの指と指の間に、マルスの指が入り、指を絡める。


「な、なんか恋人同士って感じだね。」

「恋人同士だろ?」

「うん。」

 イリスもマルスと手を繋ぎたかった為、嬉しそうに頬を赤らめていた。


 二人の空間だけ、甘い空気が漂っていた。


 マルスとイリスの絵になる様に、二人を目撃した者達は見惚れていたのだった。


 流石に、軍の訓練施設に入る時にまで手を繋いでいたら、こんなところでイチャイチャするなと怒られると思ったマルスは、名残惜しそうにイリスから手を離す。


 マルスとイリスが訓練施設に入ると、既に白魔道士達は整列しているところだった。


「お待ちしていました。私は、この部隊を任されているブラストです。」

 ブラストと名乗った細身の男性は、空色の長髪と瞳をしていた。


「ブラストさんですね。マルスです。よろしくお願いします。」

 マルスは、ブラストの差し出していた手を握り、握手を交わした。


 ブラストは、マルスに対して、事前にテュールから今回の白魔道士強化計画について、全員が納得していることを説明する。


「いつまでも他の連中から、()()()扱いされるのは心外ですからね。」

 ブラストは、常日頃から他の部隊から嫌味を言われて来たので、今回の訓練を経て、見返してやろうと考えていたのだ。


 その為、気合十分といった様子だ。


「皆さ初めまして。この度、皆さんの武術指導をさせていただくことになりましたマルスと言います。皆さんが強くなることで、戦力は何倍にもなります。訓練は厳しいものとなりますが、一緒に頑張りましょう。」

 マルスの言葉を黙って聞いていた兵士達の頭上に、一つだけ手が飛び出していた。


 マルスは、その手に気が付き、手を上げていた者に近付く。


 手を上げていた人物は、赤い短髪をした男性だ。


「どうかしましたか?」

「俺は、お前がどのくらい強いのかを知らない。俺だけじゃないな。ここにいる殆どの奴らが、お前の力を知らない。」

「何を言い出すんだルベル!?」

 ブラストは、いきなり部下が文句を言い出したことに動揺していた。


「実力を見たいと?」

 マルスは、ブラストを手で制してルベルと言う男性に目を向ける。


「そうだな。俺達に武術指導をするからには、戦闘職の奴を倒すくらいの力は見せてもらいたい。」

 ルベルの言葉が言い終わると同時に、訓練場に別の兵士が数人入って来る。


(あれは確か、ザックスって人か?)

 ザックスとは、国王とテュールが白魔道士の強化の必要性を話している最中に、白魔道士を馬鹿にしていた隊長クラスの人物だ。


「あの人に、勝つくらいはしてもらわないとな。」

 ルベルは、暗にマルスとザックスが戦うような発言をする。


 マルスは、ザックスへと目を向けたのだった。





「この時間は、うちの部隊が訓練場の使用許可を取っている。何か用でも?」

 ブラストは、ザックスが何の用で、この訓練場を訪れたのか尋ねる。


「貴様らの様な、雑魚が訓練場を使用する必要は無いだろう。時間と場所の無駄だ。今から俺の部隊が訓練をするから、出て行け。」

 ザックスは、ブラストを睨みつけながら、威圧的な態度を取っていた。


「そ、そんな!?」

 ブラストは、文句を言い返したいが、力付くて来られた場合は、手も足も出ないことから、言い淀んでしまう。


「それは困りますね。今からブラストさん達の訓練を開始するんですから。こちらはちゃんと使用許可を受けているので、お引き取り下さい。」

 マルスは、ザックスの申し出を拒む。


 マルスのそんな態度が気に入らなかったのか、ザックスは額に青筋を浮かべる。


「軍の人間じゃない者が偉そうに! ……あーー、忘れていたよ。我々もこの時間帯に使用許可を受けていたのだった。」

 ザックスは、そう言って懐から一枚の紙を取り出す。


 そこには、この訓練場の使用を許可するサインがされていたのだった。


(何で? 使用許可が? 事務手続きのミスか?)

 マルスは、手続きのミスを疑ったが、実際はザックスが事務の人間を脅して、使用許可を出させたのだが、マルス達がその事を知る由も無い。


「こちらも許可を受けていますので、困りましたね。なら、半分ずつ使いますか?」

「ふざけるな。さっきも言っただろうか、貴様らが訓練したところで高が知れている。俺達が全面を使う。」

 マルスは、全く提案を受け入れないザックスに苛立ちを覚える。


「そうだな。貴様が俺に勝てたら、貴様らが訓練場を使う事を認めてやらんでも無いぞ?」

 ザックスは、マルスとの試合を口にする。


「……分かりました。」

 マルスの返事に、ザックスは笑みを浮かべていた。


 こうして、訓練所の使用を賭けて、マルスとザックスが戦うことになったのだった。

ブクマ、評価をしていただいた方、ありがとうございます!


登場人物の回に、ヘラのイラスト追加しました!

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