バラキエル〜激突〜
マルスとイリスの前に、悪魔化したバラキエルが現れた。
「お前、もしかしてバラキエルか?」
マルスは、バラキエルの面影を残す、異形の生物へと言葉を投げ掛ける。
マルスの問いに、不敵な笑みで答えるバラキエル。
「その姿は、……悪魔化したのか。」
マルスの脳裏に、悪魔化したアザゼルの姿が蘇る。
「これが本当の俺だ。今は、最高の気分だぜ。」
バラキエルは、口が裂けんばかりに広げ、自分の力に高揚していた。
「お前の狙いは?」
マルスは、バラキエルがこの場所へ現れた目的を探ろうとしていた。
マルスは、自分が狙いなら、バラキエルをここから引き離し、イリスの安全を確保しようと考えていたのである。
「俺の狙い? そんなもの決まっているだろう。」
そう口にしたバラキエルは、片手を前へと突き出す。
「お前ら二人だ! 【雷魔法:黒雷光】!」
バラキエルの手からは、マルス達へと黒い雷が放たれる。
「【結界魔法:大天使の守護】!」
マルスは、咄嗟に最上級結界魔法を展開し、バラキエルの魔法に備えた。
しかし、マルスの大天使の守護に、バラキエルの黒雷光が衝突した瞬間、マルスの結界にいくつもの亀裂が発生する。
「な!?」
(なんて威力だ!? このままじゃ突破される!)
バラキエルの放った魔法は、マルスの予想を上回る威力だったのだ。
「【火魔法:地獄の炎】!」
イリスは、マルスの結界が長く持たないと判断するや、直ぐに火属性最上級魔法を放つ。
マルスの結界に衝突した影響で、威力が落ちていた黒雷光を、イリスの地獄の炎が相殺する。
「助かったよイリス。」
「相手は強力よ。力を合わせましょう!」
マルスは、イリスの力強い言葉に頷いて応える。
その様子を目の当たりにしたバラキエルは、面白く無さそうな表情を浮かべる。
「目障りだ! 【雷魔法:雷脚】!」
バラキエルは、自分の脚に雷を纏い、地面を強く蹴り、一瞬でマルスとの距離を詰めると、そのままマルスの顔を鷲掴みにして、壁へと押し込んだ。
「がはっ!?」
マルスは、バラキエルの動きを辛うじて目で追う事が出来たが、身体が反応する事は出来なかった。
それだけ、バラキエルの速力が上昇していたのだ。
「マルス!」
イリスは、バラキエルの姿を見失い、隣にいたマルスが、いきなり壁に押し当てられていることに気が付き、動揺していた。
「ふはははははははは! 素晴らしい速さだ! 今の俺に敵う者はいない!」
バラキエルは、元々上級黒魔道士だった為、速力は低かった。
しかし、悪魔化したことにより、爆発的に全能力が上昇しているのだ。
「【支援魔法:全大天使】! うらぁ!」
マルスは、最上級支援魔法を自身に施し、全能力を爆発的に上昇させ、バラキエルの腹部に蹴りを入れる。
「ぐっ!?」
バラキエルは、自身の力に酔って油断していた為、マルスの蹴りを受けて、掴んでいた手を離してしまう。
マルスは、その隙を見逃す事はなく、瞬時に剣を振り抜いてバラキエルを斬り付ける。
「【雷魔法:紅い稲妻】!」
マルスとバラキエルに間が空いた為、イリスがバラキエル目掛けて、雷属性の最上級魔法を放つ。
「ぐがぁ!?」
イリスの魔法が、バラキエルへと直撃し、バラキエルを吹き飛ばす。
「大丈夫マルス!?」
「ああ。」
マルスとイリスは、油断する事なく、バラキエルから目を離さない。
「あーー、痛てぇな。」
バラキエルは、そう口にするが、マルスの斬り付けた傷はそれ程深く無く、イリスの魔法に至っては殆どダメージを受けた様子は無かった。
「アザゼルと同じで、かなりの強さだな。」
「ええ。」
「これだけ派手にやりあってるから、そろそろ援軍が到着する筈だ。それまで持ち堪えるぞ。 【支援魔法:大天使の頭脳】!」
マルスは、イリスにも最上級支援魔法を施し、イリスの魔力を強化する。
「あーー、強くなり過ぎちまったか。」
バラキエルは、自分の負ったダメージを確認し、そう呟く。
「手加減してやるから、簡単にくたばるなよ。」
バラキエルは、自分が余りにも強くなり過ぎてしまい、マルス達を見下していた。
事実、バラキエルは先程の攻防において、全力を出してはいなかったのだ。
「【雷魔法:死雷】!」
先程までバラキエルが放っていた、黒雷光よりも、更に深くドス黒い巨大な雷が、マルスとイリスへと迫る。
「私がやるわ! 【火魔法:地獄の炎】!」
マルスの支援魔法を受けたイリスは、先程の地獄の炎とは比べ物にならない程、巨大で高温な炎を、バラキエルの放った死雷へと放つ。
しかし、イリスの放った地獄の炎を以ってしても、バラキエルの死雷を相殺することは出来ず、バラキエルの魔法がマルス達へと迫る。
(強化状態のイリスの最上級魔法でも、少ししか威力を削げないだと!?)
マルスは、バラキエルの放った魔法の威力に驚愕する。
「くそっ!? 【結界魔法:大天使の守護】!」
マルスの展開した最上級結界魔法と、バラキエルの放った死雷が衝突する。
マルスの結界によって、周囲に逸れたバラキエルの死雷が、部屋の壁や天井、床を破壊して行く。
しかし、死雷の核の部分はマルスの結界と衝突し合っており、マルスの結界を少しずつ突き進んでいた。
「くっ!?」
(やばい!? このままじゃ防ぎきれないぞ!)
マルスは、結界が長く保たないと焦り出していた。
「ふははははははは! 英雄様の力は、こんなものか? やはり貴様は、偽りの英雄だったようだな!」
バラキエルは、自分が圧倒的優勢であることから、余裕の笑みを浮かべ、徐々に魔法の威力を高めて行く。
イリスは、バラキエルの魔法の威力を削ごうと、魔法を放つが、バラキエルの魔法の前に、無駄な抵抗であった。
いよいよ、マルスの結界が突き破られそうになった時である。
「【風魔法:天空神】!」
どんなものでも吹き飛ばしてしまう程の、超突風が発生し、バラキエルが立っていた場所諸共、王城の外へ吹き飛ばしたのである。
「遅くなった。」
「無事で良かった。」
黒王ゼウスと剣姫ヘラが、マルスのピンチに駆け付けたのだった。
登場人物紹介の回に、マルスとイリスの挿絵を入れました(๑╹ω╹๑ )!




