冒険者学校入学試験〜戦闘試験〜
ぶっ飛んだステータスを見せつけたマルス。
いよいよ戦闘試験が始まります!
水晶玉による能力測定を終えた受験者達は、係の指示により、4人で一つの班を組まされた。
「これより受験者は、今組んだ即席の班でゴーレムと戦ってもらう!」
その言葉に、受験者達がざわつき始めた。
受験生達が騒ぐのは、仕方の無いことだ。
ゴーレムのHPは1,000を超えており、攻撃力150、防御力250と破格のステータスを有している。
正に、動く要塞だ。
速力は低く、魔法に弱い為、物理で攻めるより魔法で倒すのが正攻法と言われている。
「何もゴーレムを倒せと言うものでは無い! 諸君らの力を図るためのものだ! 制限時間内の行動全てが評価される。強力な一撃や、仲間との連携、戦術など、全てだ!」
説明は続き、野生のゴーレムでは生死の危険があるため、試験官達が使役しているゴーレムと戦うそうだ。
(成る程。 白魔道士は、回復や支援魔法で、仲間をサポートすれば評価される訳だな。)
マルスの班はと言うと。
「イリスと一緒になったね。」
「そうね。ステータスと言うよりも、職業の組み合わせで選んでいるようね。」
イリスの言うように、同じ班の二人は、片方が剣、もう片方が斧を手にしていることから、職業は剣士と戦士などだろう。
他の班を見ても、剣を持つ者と杖を持つ者がバランス良く組まれていた。
「俺はダッシュ。職業は剣士だ。」
「俺はダン。職業は戦士。」
「私はイリスです。職業は黒の賢者です。」
「「黒の賢者!?」」
二人は、イリスの職業に興奮していた。
「黒の賢者が一緒なら、ゴーレムも倒せるかもな!」
「受かったも同然だな!」
「えっと、白魔道士のマルスです。」
「「……はぁ。」」
二人は、イリスの時とは打って変わって、あからさまに嫌そうな表情を浮かべた。
「俺らの邪魔すんなよ。」
「自分の身は自分で守れよ。 」
(白魔道士って、そんなに嫌われてるのか。)
「ちょっと、貴方達! マルスも一緒に戦う仲間なんだから、そんな風に言わないで!」
イリスの剣幕に押され、二人は嫌々ながらも頷いていた。
マルス達の班は、剣士と戦士が前衛となって敵を引き付け、遠距離からイリスが攻撃することになった。
「あの? 俺は? 前衛も出来ますけど?」
「お前、白魔道士だろ? 前衛出来る訳ねぇじゃん。HP、攻撃力、防御力がカスじゃんかよ。」
「てか、何でお前杖じゃなくて剣を装備したんだよ。馬鹿過ぎ。」
何か言い返そうとしたマルスだが、イリスに腕を掴まれる。
「先ずは、白魔道士としての力を見せてあげなさい。」
イリスが自信満々に言うので、マルスは言葉を飲み込んだ。
▽
順番に別会場へと案内され、いよいよマルス達の番を迎えた。
「次は貴方達ね。」
「一つ質問いいでしょうか?」
「どうぞ。」
(これだけは一つ確認しておかないと。)
「使役しているゴーレムとのことですが、ゴーレムは倒してもしまってもいいんですか?」
マルスの質問に、係の者は苦笑いしながらも、構わないと答えた。
(なら、心置き無く戦えるな。)
「コイツ馬鹿だ。」
ダッシュとダンは、呆れた目をマルスへと向けていたのだった。
▽
マルス達は、最初に打ち合わせいていたように、ダッシュとダンが前衛に配置し、イリスとマルスが後方に控える配置を取った。
「俺の剣技を見せてやる! 【剣技:豪斬】!」
ダッシュは、ゴーレムの振り下ろす腕を避けて、豪斬を叩き込む。
ギィン!
「硬てぇ! 手が痺れちまったよ!」
ダッシュは、一撃を入れたのはいいが、ゴーレムの防御力を前に、自分の手を痛めてしまう。
「次は俺だ! 【斧技:兜割り】!」
ゴーレムの頭上から、ダンが斧を叩き込む。
剣士のダッシュよりも、戦士のダンの方が攻撃力が高いのだが、それでもゴーレムにダメージを与えることは出来ない。
「私がやるわ! 【氷魔法:氷柱】!」
地面から2つの氷柱が出現し、ゴーレムの岩の身体を抉り取る。
「「すげぇ!?」」
自分らの攻撃では、ゴーレムにダメージを与える事が出来なかった二人は、イリスの攻撃に驚く。
(凄い……のだろうか? ゼウスさんの魔法と比べるとそれ程凄いとは感じないんだけどな。)
「!? 攻撃に備えろーー!」
マルスが、突如大声を張り上げた。
「「「え?」」」
三人が驚いている内に、ゴーレムが必殺技を放つ。
巨大なゴーレムが、両拳を頭上に掲げ、そこから一気に地面に拳を叩きつける。
その瞬間、地面が隆起して、三人に襲い掛かる。
「イリス! 【結界魔法:結界】!」
マルスは、ゴーレムのモーションに気が付いてから、イリスの側に駆け寄り、結界魔法を発動した。
イリスに向かっていた土の棘は、結界にぶつかると共に消滅したが、ダッシュとダンは、ゴーレムの攻撃が直撃して軽くは無いダメージを受けていた。
「今、回復する! 【回復魔法:全体回復】!」
マルスの回復魔法により、ダッシュとダンの傷が塞がる。
「今のは、全体回復魔法!?」
「お前すげぇじゃんかよ! 助かったぜ!」
二人は、マルスが思っていたよりも使える白魔道士だと認識を改めた。
「今からみんなに支援魔法を掛けるから、もう一度アタックしてくれ! 【支援魔法:超越した身体】!」
マルスが発動したのは、上級の強化魔法である。
全能力を2倍に引き上げるものだ。
それを、3人に発動したのである。
「これが支援魔法!?」
「か、身体が軽い!?」
「ち、力が漲って来る!?」
三人は、マルスの支援魔法を受けて、自分のステータスが大きく上昇している事に気が付いた。
そして、先程同様にゴーレムへとダッシュとダンが駆け出す。
「喰らえ! 【剣技:豪斬】!」
「オラぁ! 【斧技:強力な一打】!」
ドゴーーン!
先程とは違い、今度の二人の攻撃は、ゴーレムの防御力を突破していた。
「私だって! 【炎魔法:大爆発】!」
イリスが放った魔法は、ゴーレムを巻き込んで大爆発を巻き起こす。
「「す、すげぇ威力だ!」」
「いつもの倍くらい威力が上がってる!?」
魔法を撃った張本人であるイリス自身も、自分の魔法の威力に驚いていた。
ゴーレムの身体は傷だらけだが、まだまだ動ける状態だ。
「俺もやるか。【支援魔法:大天使の力】!」
マルスは、自分に最上級の支援魔法を発動し、攻撃力を強化して、ゴーレムへと迫る。
マルスに向かって、ゴーレムが拳を打ち出すが、その拳を最小限の動きで回避し、ゴーレムの胴体を剣で斬り裂く。
ゴーレムがマルスへと視線を向けようと、身体を捻ると、ゴーレムの上半身がズレ落ちる。
「よし。終わったな。」
「「あ、ありえねぇ!?」」
「流石ね。」
ダッシュとダンは、白魔道士でありながら、剣でゴーレムを斬り裂くマルスに驚きを隠せない。
イリスは、マルスがキングオークを倒したのを見ているので、それ程驚くことはなかった。
▽
イリスの戦闘を観戦していた学園の教師陣達は、マルスの力に驚愕していた。
「白魔道士であの実力とは。」
「信じられませんね。」
「実際、目にしてしまったのだから、疑いようが無いだろう。」
「てか、最後の支援魔法って、最上級じゃないか? 今年の受験者は規格外が混じってるな。」
「今年は、黒の賢者だけでなく、剣聖と拳聖、更にパラディンも居たそうですね。」
「皆の者、今年は荒れるかも知れんが、しっかり頼むぞ。」
この後、合格発表があり、合格したのは500人程度いたそうだ。
勿論、マルスとイリスが合格だったのは、言うまでも無いだろう。
投稿初日の本作を読んでいただき、ありがとうございます(^人^)
ブクマ、評価の支援魔法を掛けて下さった、白魔道士の皆さん、ありがとうございます!