二人の気持ち
おはようございます(´-`).。oO
マルスがいつものメンバーと共に教室に辿り着くと、クラス中の視線がマルスとイリスに注がれる。
(あれ? なんか、みんなが見てる?)
魔王を討伐して英雄になってからと言うもの、注目が集まるようになったマルスだが、ここまで全員から視線を向けられたのは、久し振りであった。
男性達からは嫉妬の目で見られ、女性達の目は輝いていた。
「お、おはよう。どうかしたの?」
マルスは、クラスメイト達に挨拶をして、みんなに問い掛ける。
「マルス様!」
「おはようマルス君。」
真っ先に反応したのは、パティとリンだ。
パティは、マルスに食ってかかる勢いで詰め寄っていた。
「お、おう。どうしたんだよパティ?」
「どうしたじゃありませんよ! マルス様は、お付き合いしている方はいないと言っていたじゃないですか!? それなのに、本当はイリス様と付き合っていたなんて!」
(え? 俺がイリスと!?)
パティは、目に涙を浮かべながら訴える。
「えっと、確かにイリスとは食事したけど。」
「二人がラブラブだったって、王都中で広まってますよ! 食べさせっこしたり、相合い傘したりしてたって、何人も目撃者がいるんです! それでも、言い訳するのですか!」
「ちょっ!? 確かに、お互いに食べさせあったり、相合い傘もしたけども。」
「やっぱり、ラブラブしているじゃないですか!」
(やっていたことは、事実だけど、付き合ってはいないぞ!)
マルスは、パティの口撃に耐え切れず、仲間を頼ろうとするのだが。
「へぇーー、マルスって意外とグイグイ行くんだね。 セッティングしてあげた甲斐があるわ。」
「お似合いですね。」
「マルスやるじゃねぇか!」
ミネルヴァ、フレイヤ、クレイは、パティの話を聞いて、顔をニヤつかせる。
「い、イリスも何とか言ってく……れよ?」
イリスについては、頬を赤くさせて、動かなくなってしまった。
(い、イリス!?)
その後も、動かないイリスを当てに出来ないマルスは、誤解を解こうと一人奮闘するが、皆の誤解を解くことは出来なかった。
寧ろ、みんなからは祝福の言葉を送られてしまうのだった。
▽
イリスの脳内。
(うーー、昨日のマルスとの食事から、マルスのことが気になって仕方がないよ。)
イリスは、昨日の食事の際、マルスと食べさせあいっこしたことを思い出し、再び顔を赤らめる。
(わ、私、なんであんなことしちゃったんだろう!?)
今更になって、自分のしたことが恥ずかしくて仕方がないイリス。
(そ、それに、異性とあんなに近くで接したのなんて、お父様以外では初めて。)
イリスは、二人で相合い傘をした状況を思い描く。
(私って、マルスのことが好きだったの? でも、いつからだろう。)
イリスは、マルスと初めて出会った時のことを思い出す。
(あの時のマルスは、本当にカッコよかった。私のピンチを救ってくれたマルス。 綺麗な銀髪に整った顔、見惚れるような容姿をしていたから、神様の使いかと思ってしまう程だったわ。)
イリスは目を横へと動かし、マルスの横顔を眺める。
(あの時から、私はマルスに恋をしてしまったのね。)
イリスは、今迄これ程異性に心惹かれたことが無かった為、自分の感情に気付くことは無かった。
しかし、マルスと二人きりでデートしたことにより、自分の気持ちに気付くことが出来たのだ。
(マルスと一緒に行動して、マルスのことを知って行く内に、私はマルスの内面にも惹かれていたんだわ。 マルスと出会ってから、私の毎日はすっごい充実している。)
(ま、マルスは、私のこと、どう思っているのかしら?)
イリスは、マルスの気持ちがどうなっているのか、知りたくて仕方がなかったのだった。
そんな脳内でバタバタしているイリスは、エイル先生が教室に来ても、放心状態のままであり、エイル先生は、そんなイリスをかなり心配する。
「だ、大丈夫ですかイリスさん?」
「……。」
「えっと、どこか痛む? 調子が悪い? な、何か悩みでもあるのかな?」
エイル先生が、何を話しかけても上の空のイリス。
「エイル先生。イリスは、恋の病にかかってるんですよ。」
ミネルヴァが、イリスの病の正体を、エイル先生へ教えた。
「え!? そ、そうなんですか?」
エイル先生は、顔を真っ赤にして驚く。
「エイル先生は、白の賢者なんですから、病を治してあげてくださいよ。」
「そ、それは、魔法じゃどうにも出来ないかな。」
ミネルヴァの冗談に、エイル先生は苦笑いで答えていた。
午前中の授業が終わり、マルスはクレイに呼び出されていた。
現在は、校舎裏にいる為、この場にはマルスとクレイの二人だけだ。
「話があるって、何かあったのかクレイ?」
「おいマルス。自分の気持ちは、ちゃんと伝えないとダメだぞ?」
「どういう意味だ?」
「どうせお前のことだから、イリスにちゃんと自分の気持ちを伝えていないんだろ? このまま周りに流されて付き合うのは、イリスに失礼だぞ?」
クレイは、真剣な表情でマルスへと言葉を送る。
「……そう、だよな。」
クレイの真面目な話を聞いたマルスは、自分の気持ちと向き合う。
事の発端は、イリスが特定の者から、しつこく付き纏われているとの話から、それの撃退を兼ねて、マルスとイリスをデートさせたのだが、二人にその気があるのであれば、二人をそのままくっつけてしまおうと、クレイ、フレイヤ、ミネルヴァは考えていたのだった。
自分の考えを纏めたマルスは、イリスの下へ向かう。
「イリス、今日学校が終わったら、ちょっと話がしたいんだけどいいかな? 校舎裏に来て。」
「え、ええ。」
マルスは、照れ臭そうにイリスを誘い出す。
イリスも、マルスから急に呼び出されたので、胸の鼓動が早くなるのを感じていた。
そして、授業が終わり、マルスとイリスが教室から出ようとすると、一人の生徒がマルスへと近付く。
「アイテール校長先生が、マルスのことを呼んでるらしいよ。」
「え? 校長先生が? 何の用だろう。」
マルスには、校長先生から呼び出される心当たりが無かった。
「僕も又聞きで、マルスに伝えるように頼まれただけだから、用件は分からないな。」
「分かった。ありがとね。イリス、先に行って待っててくれる? 直ぐに向かうから。」
「う、うん。分かったわ。」
こうして、マルスはイリスと別れてしまう。
これが、罠であるとも知らずに。
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