冒険者学校入学試験〜能力測定〜
イリスと出会ったマルス。
いよいよ、冒険者学校へと辿り着きます!
「す、すげぇーー!」
マルスは、オケアノス王国の王都に足を踏み入れてから、こればかり連呼している。
マルスがはしゃぐのも、仕方のないことだろう。
マルスが生まれ育ったところは田舎であり、こんなに大きな建物は無く、一度にこれだけの人を見たことなんてないのだから。
そんな馬鹿騒ぎしているマルスは、現在イリスの護衛が仕入れてきた馬車に乗せてもらっている。
歩いて王都観光をしようと思っていたのだが、入学試験の受付時間がギリギリなので、馬車に乗るように言われてしまったのだ。
イリス達の馬車が襲われた場所から、二日も歩いて辿り着いた為、仕方のないことだろう。
(あれ? 俺が家を出たのって、結構ギリギリだったのでは? もしかして、ヘラさんとゼウスさん、日付をちゃんと覚えて無かったんじゃ?)
「「へっくしゅん!」」
遠くの場所で、二人してくしゃみしていたのだった。
馬車がゆっくりと速度を落とし、遂に馬車の動きが止まる。
ドアが開き、馬車から降りると、そこにはとてつもなくデカイ建物があった。
「で、でかっ!? ここが冒険者学校?」
「ふふ。そうですよ。ここが冒険者学校です。」
(こんな立派なところで勉強するんだな。)
「皆さん、護衛勤務ご苦労様でした。ゆっくり身体を休めて下さいね。」
「はっ!」
「乗せてもらってありがとうございました。」
「いえいえ。こちらは、命を助けてもらった身ですので。」
護衛騎士達は、深々と頭を下げて去って行く。
(あれ? 何だか周りが騒がしいな。)
「イリス様よ。」
「相変わらず、美しい!」
「横の男は誰だ?」
「誰だか分からないけど、すっごい美形!」
周りにいる若い男女達が騒いでいた。
「イリスって有名人なのか? 護衛の人がいるくらいだし。」
馬車の中では、イリスがマルスに質問してばかりだったので、マルスはイリスのことを全く知らない。
「んーー、そうですねぇ。でも、ここでは関係ありませんから。」
(なんか、気になるんだけど? いいとこのお嬢様なのかな?)
「入学希望者は、間も無く試験が始まるので大会場へ向かって下さい!」
案内の人が、大声で受験者に声を掛けていた。
「行きましょうマルス。」
「あ、ああ。」
(あれ? 別にイリスと一緒に行動する必要は無いのでは? なんて考えたけど、可愛い子と一緒に居られるなら、気にしないでいいか。)
大会場へ着くと、縦に20人ずつ並ぶように言われたので、マルスとイリスは列へと並ぶ。
受験者が全員揃ったのか、説明が始まる。
「ここでは、全員のレベル、職業、ステータスを確認する。確認した際に、受験番号を渡すので、しっかり自分の番号を確認するように。」
水晶玉が50個程置かれていた。
この水晶玉には、覗き見防止の機能が付いており、使用した者と、許可した者にしか見る事が出来ない。
何気に、凄い機能である。
今年の受験者は多く、1,000人くらいになっていた。
(結構時間が掛かりそうだな。)
しばらく待つと、漸くマルスの前に並んでいたイリスの番となる。
「次の方。」
イリスが呼ばれ、水晶玉へと手をかざす。
【ステータス】
名前:イリス、年齢:16才、職業:黒の賢者、レベル:10、HP111、MP128、攻撃力38、防御力48、速力85、魔力124、命中力59、運力60
「こ、これは!? 最上級職業の黒の賢者!?」
水晶玉の表示を確認する係の者が、驚きの声を上げた為、周りにどよめきが発生した。
「イリスは、黒の賢者だったのか。凄いね。」
「マルスのステータスを見せてくれるなら、私のも見ていいよ。」
「ん? 最上級職業のステータスは気になるから、見せてもらおうかな。」
マルスは、水晶玉を覗き込む。
(あれ? レベルは最後に俺が見た時と同じなのに、ステータスが俺より低い?)
マルスは、今まで他の人のステータスを見た事がない為、全く基準が分からないのである。
(そう言えば、ヘラさんとゼウスさんのステータスも見たこと無かったな。)
ヘラとゼウスは、モンスターに関する知識はマルスに叩き込んだのだが、そこら辺の所を教えるのを失念していたのだ。
因みに、イリスのステータスは、同年代の同レベルの中では、かなり高い方となる。
「感想はないの?」
「え? えっと、MPと魔力が高いね。」
「……ありがとう。」
(あれ? 今、凄い間があったような。俺何か間違えたことを言ったのだろうか? イリスは苦笑いしているし、係の人もコイツ何言ってんのみたいな顔をしている。)
「じゃあ約束通り、マルスのも見せてよね。」
マルスは、イリスに頷いて応え、水晶玉へと手をかざす。
【ステータス】
名前:マルス、年齢:16才、職業:白魔道士レベル:13、HP224、MP179、攻撃力179、防御力144、速力164、魔力193、命中力146、運力182
(おお!? レベルが3も上がってる! イリスを助けた時のモンスターが、強敵だったからだな。)
「え? 白魔道士?」
またしても、係の者が声を出してしまう。
(この係の人は、口が軽すぎではないだろうか? 簡単に職業をバラしてしまうのは、どうかと思うんだけど。)
すると、係の声を聞いた者達が、クスクスと笑い、蔑むような目をマルスへと向けていた。
「アイツ白魔道士だってよ!? みんなの後ろに隠れているだけの邪魔者じゃねぇか! だっせーー! 超ウケる!」
金髪のナルシスト風のチャラ男が、マルスを指差して大笑いしていた。
(何で、みんな笑ってるんだ?)
「何かおかしいですか?」
マルスは、一際大きな声で馬鹿にしていたチャラ男に声を掛けた。
「あ? 何がおかしいかって? 白魔道士なんて、雑魚職業で、こんなところに来るバカがいるんだから、おかしいに決まってるだろ。上級白魔道士なら分かるが、底辺じゃな。」
チャラ男の説明を聞いていた周りの者達は、その説明が当然の様に頷いていた。
「白魔道士が底辺? 別に白魔道士でも戦えますよ?」
「はぁ!? 攻撃力も無い、攻撃魔法も無い白魔道士が戦えるだと? 話にならんな。」
チャラ男は、言いたい放題マルスに罵声を浴びせて立ち去ってしまう。
(感じの悪い奴だな。)
「ねぇマルス。早く見せてよ。」
イリスに急かされた為、マルスは、ステータスを公開する。
「え!? ……どんなことしたら白魔道士で、このステータスになるのよ!?」
「んーー、毎日死ぬ程の厳しい修行をしたからかな?」
イリスは、マルスが冗談を言っている様には見えなかった。
何より、イリスが目にしたマルスのステータスが、その言葉が事実だと思わせるものだったからだ。
「貴方は、何を目指しているの?」
イリスは、マルスのステータスを目にして、マルスの目指すものに興味が湧いた。
「ん? 俺の目指す者は、世界最強だよ。」
イリスは、その言葉に衝撃を受けたのだった。
初日の投稿は、後一回か二回の予定です!