勲章授与
今回は、マルス達に勲章が贈られるお話です!
現在、王城の門前には多くの国民が集まっていた。
今日は、魔王討伐という偉業を成し遂げたマルス達に勲章が授与される日だ。
新たな英雄の登場に、国民達の関心は集まっている。
「魔王討伐なんて、剣姫ヘラ様と黒王ゼウス様以来の快挙だな!」
「新たな英雄は、一体どんな人なんでしょうか?」
「何でも学生らしいぞ!」
「学生が魔王を討伐するなんて、この国の未来も明るいな!」
「何でも、王女様も魔王討伐メンバーにいたらしいぞ!」
「王女様が!? あの美しさでありながら、強いなんて、完璧じゃないか!」
「早くお顔を出さないかしら。」
集まっている国民達は、勲章授与を終えて、王城から姿を現わす、新たな英勇を待ち望んでいたのだった。
何故、国民がこれ程の関心を寄せているかと言うと、魔王討伐は、大軍を用いて多くの犠牲の上で達成出来る程の偉業だからだ。
大軍を用いずに魔王討伐を果たしたのは、過去にゼウスとヘラの二人だけ。
そんなゼウスとヘラの様に、少数で魔王を討ち取った英雄の登場に、王都の話題は持ちきりとなるのは仕方のないことだろう。
そんな国民達の話題の中心人物である、マルス、イリス、オグマ、ディアナは、王の間において、オケアノス国王の前に跪いている。
勿論、マルス達は勲章授与式に相応しい、キチッとした服装でだ。
(うーーん、流石に緊張するな。イリスは慣れた感じだし、オグマさんもディアナさんも場慣れしている様に見える。)
王の間には、ゼウスとヘラもマルスの保護者として同席しており、オグマとディアナの両親も同席している。
オグマとディアナは、オケアノス王国で地位の高い貴族の子供であり、両親は今回の子供の活躍をとても誇らしく思っていた。
勿論、ゼウスとヘラも同じである。
自分達の子供の様に育てて来たマルスが、自分達の様に英雄と呼ばれる様になったことが嬉しかった。
「これより、勲章を授与する。」
大臣の一人が勲章授与式を進行する。
オケアノス国王は、豪華な椅子から立ち上がる。
「新たな英雄マルスよ。前へ。」
マルスは、オケアノス国王の言葉に従い、立ち上がると国王の前へと移動する。
マルスから呼ばれた理由は、マルスが魔王討伐の際の功績が一番大きいとイリス達が国王へ説明した為だ。
「魔王討伐の功績を称え、英雄勲章を授ける。」
国王は、キラキラと輝きを放つ、クロスデザインの勲章をマルスの襟元へと付ける。
英雄勲章とは、魔王討伐や国の危機を救った者に贈られる勲章だ。
過去に英雄勲章を贈られたのは、ゼウスとヘラは勿論のこと、その他では軍のトップであるテュールと数名だけである。
その為、英雄勲章を国から贈られることは、とても名誉なことなのである。
英雄勲章授与に伴い、マルスに爵位や領土を与える話が出たのだが、マルスはまだ学生であり、自分の目的を遂げるのに、領地を管理する余裕は無いとして、丁重に断りを入れていた。
しかし、オケアノス王国としても優秀な人材を国に留めておく為に、マルスに爵位や領土を与えるのが一番の方法であるため、学生卒業後やマルスの目的を達成した際などに、爵位等を与えたいとマルスへ伝えたのだ。
マルスは目的を遂げた後に、他国で生活することまでは、現時点では考えていないため、国からの申し出を受けたのである。
マルス以外の者については、イリスは王女であり爵位や領土は関係が無い。
しかし、王女が魔王を討伐する程の実力を備えていると国民に広まれば、それだけ国民は安心して生活することが出来るのだ。
また、オグマとディアナは貴族の家系であり、家の爵位が伯爵から侯爵へと上がったそうだ。
オグマとディアナが英雄勲章を授与したことにより、今後オグマとディアナの領地には多くの人が移り住むなどの経済効果が見込まれ、二人が当主になってからは、より繁栄することは間違いないだろう。
そして、各々オケアノス王国から英雄勲章を授与されたマルス達は、遂に国民達の前にその姿をお披露目することとなる。
オケアノス国王と共に、王城のデッキへと移動したマルス達は、王城の下に集まっている国民達から見える位置に立つ。
その瞬間、大歓声が上がる。
(うぉ!? こんなに人が沢山集まっていたのか!)
マルスは、想像していたよりも遥かに多い人集りに動揺してしまった。
「マルス堂々と立ちなさい。みんなあなたの、英雄の姿を見に来ているのよ。」
横に立つイリスにそう言われた俺マルスは、気持ちを落ち着かせて、堂々と胸を張る。
「ここにいる四名の者達が、魔王デスワームを討伐した、新たな英雄達である!」
オケアノス国王の言葉に、国民達の興奮が最高潮に高まる。
「弓聖士ディアナ!」
今のディアナは、桃色のロングヘアを後ろで一つで束ねており、凛々しく美しい姿をしている。
そんな容姿端麗なディアナが、一歩前に出ると歓声が沸き起こる。
「剣聖オグマ!」
赤髪短髪の大柄な男、オグマの姿を目にした国民は、正に英雄らしい姿だと納得する。
「黒の賢者イリス!」
輝く金色のロングヘアを靡かせる美少女、この国の王女様の美しい姿に、国民達の目が奪われ、盛大な拍手と歓声が沸き起こる。
「最後に、今回の魔王討伐で一番の活躍をした、白魔道士マルス!」
身長170センチ、銀色の髪をした美青年マルスが一歩前に踏み出す。
「おおぉーー!!」
今回の魔王討伐で一番の活躍をした人物と紹介されたことから、国民達からは一番の歓声が上がる。
また、マルスのルックスに、見惚れた女性達からは熱い視線が放たれていた。
「おおぉーー……ん? 白魔道士?」
「何で白魔道士が一番の活躍なんだ?」
「他の英雄達を治療したとか?」
「それだけで一番活躍したって言われるのか?」
「だって白魔道士じゃ戦えないだろ?」
「なら、お情けで勲章を贈られただけか。なんでぇ。」
マルスが、白魔道士であると紹介されたことに気が付いた国民達。
戦闘能力が低い白魔道士が活躍したと言うのは、おかしいのではないかと疑問に感じてしまう。
そのため、歓声が徐々にどよめきに変わってしまう。
この状況を気に入らなかったイリスが、空かさず声を上げる。
「今回、魔王討を討伐することが出来たのは、マルスのお陰です。魔王にトドメを刺したのも、ここに居るマルスです。」
イリスの言葉に、再び国民達から歓声が上がる。
それでも、全ての国民が納得することは無かったが。
「ありがとうイリス。」
(やっぱり白魔道士ってだけで、こう言う風に思われちゃうんだな。イリスのお陰で、納得した人もいるみたいだけど、自分の目で見た訳じゃないから、中々信じられないんだろうけど。今回の英雄勲章で、白魔道士の待遇が少しでも改善されるといいんだけどな。)
「良いのよ。みんなにもマルスのことを認めてもらいたいもん。」
「そうだな。俺に勝った男だしな。」
イリスの言葉を、横に並んでいたオグマが肯定し、ディアナも頷いて応える。
こうして、無事に勲章授与式が終わりを迎える……筈だった。
「みんな、ありがと……何だあれは?」
マルスが、みんなにお礼を口にしていると、王都の東門付近から黒煙が上がっているのが見えた。
(何で、あんな所から煙が?)
「国王様! 王都東側より、モンスターの大群が襲撃! 現在モンスターと交戦中ですが、長くは持ちません!」
慌てながら駆け込んできた兵士が、モンスターの襲撃を報告したのだった。
次回 王都襲撃
本日も読んで下さり、ありがとうございました(^^)




