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イリスとの出会い

お昼更新です!


 ヘラとゼウスから、冒険者学校の位置を聞いていたマルスは、冒険者学校へ向かって街道を歩いていた。


 街道と言えど、いつモンスターに襲撃されてもおかしくは無いため、警戒を怠る訳には行かない。


「特に異常は無いか、なーーと思ったら、何やらトラブルかな?」

 丘を登り切ったマルスは、前方で煙を上げている馬車を見つけた。


 (行ってみますか。)


 倒れる馬車の周りには、1体の大きな巨体をした二足歩行の豚が、銀の槍を手に持っている。


 更に、赤い毛並みをしたウルフが5匹の姿があった。


「あれは、オーク? いや、あの大きさと色は、キングオークか!? 何故こんな所に!」


 取り巻きは、フレイムウルフが5匹か。


 マルスは、ヘラとゼウスから世界中にいるモンスターの知識を叩き込まれていた為、初めて対峙するモンスターの強さも概ね理解出来ていた。


 キングオークの実力は、戦士の40レベル相当に当たると言われている。


 通常なら、複数人で相手をするような強力なモンスターだ。


「イリス様、お逃げ下さい。我々が時間を稼ぎます。」

 護衛の騎士が背後の女性に声を掛ける。


「貴方達を置いては行けません!」

 輝く金色のロングヘアを靡かせる美少女は、護衛の騎士の横に立つ。


「し、しかし。」

「この状況では逃げきれませんよ。」

 護衛の騎士も覚悟を決める。


 既に仲間達はやられてしまい、この場にはイリスと護衛騎士しか残っていない。


 イリスも護衛騎士も、この場を切り抜けられるとは思えなかったが、何もせずに死ねる程、往生際が言い訳では無い。


 イリスは、杖をフレイムウルフへと向ける。


「【水魔法:水よ(ヒュドール)!】

 杖の先端から、水球が飛び出し、フレイムウルフへと迫る。


 しかし、下級魔法ではフレイムウルフに大したダメージを与えることは出来ない。


 だが、その隙を突いて護衛騎士が一体のフレイムウルフを両断する。


「よし!」

「ガアッ!」

 護衛騎士が油断した隙を狙って、別のフレイムウルフが護衛騎士に飛びかかる。


「させません! 【氷魔法:氷柱(クルスタロ)】!」

 地面から天へと突き上がった氷柱が、飛びかかろうとしていたフレイムウルフの胴体を貫く。


「ありがとう「危ない!」え? ぐあーー!?」

 イリスへと礼を述べようとした護衛に、別のフレイムウルフが噛み付いたのだ。


 仲間を全て失ったイリスは、馬車の方へと後ずさる。


 イリスは、最後まで抵抗しようと魔法を放つが、フレイムウルフ達は魔法を回避する。


 そして、遂にイリスのMPが底をつく。


(折角の最上級職業、黒の賢者に選ばれても、今の私ではこの程度ということですか。)


 悔しさで唇を噛み締めるイリスだが、決して敵から目を逸らそうとはしなかった。


 そんなイリスに向かって、残っているフレイムウルフ3匹が襲い掛かる。


「【結界魔法:聖域結界(サンクチュアリ)】!」

 突如、イリスの周りが青白い光に包まれる。


 そして、イリスへ迫っていたフレイムウルフ達は、その光に阻まれ、イリスへと近付けないでいた。


「え? 一体何が?」

 フレイムウルフ達が一斉に口から炎を放つが、その炎も光に阻まれてしまう。


 そして、混乱しているフレイムウルフ達に、一瞬で駆け寄ったマルスは、フレイムウルフを剣で瞬殺した。


「大丈夫か?」

「え? ええ。貴方は一体?」

「話は後だ。」

 マルスは、倒れている人達を観察し、まだ誰も死んでいないことに安堵する。


「【回復魔法:全体回復(オールヒール)】!」

 倒れている者達の身体が、緑色の光に包まれ、傷が見る見るうちに塞がっていく。


「か、回復魔法?」

 イリスは、先程フレイムウルフを倒した際の動きから、マルスのことを剣士か上級剣士、若しくは剣聖かと考えていたが、マルスが回復魔法を使用した為、驚きを隠せない。


(あれだけ剣の腕があるに魔法まで? 魔法剣士? でも、魔法剣士は回復魔法が使えない筈。この人は、一体何者?)


 倒れている護衛騎士が、マルスの回復魔法により意識を取り戻す。


「は!? まだ、みんな生きている!」

 イリスは、直ぐ様倒れている護衛騎士を抱え起す。


「い、イリス様。は!? モンスターは!?」

「大丈夫よ。きっと、彼が倒してくれる。」

 イリスの視線に釣られて、目線を動かした護衛騎士は、キングオークへと向かう、若い男を目にしたのだった。


「こんなところに、キングオークが現れるとは、驚きだな。」

 マルスは、キングオークの前へと進む。


 キングオークが槍を振りかぶり、勢い良く突き出すが、その攻撃をマルスは剣で逸らす。


 一進一退の攻防が続き、お互い決め手に欠けていた。


 (俺の素の力だと、キングオークといい勝負なんだな。)


 レベル10でキングオークとやり合っているのは、かなり異常なことなのだが、マルスは自分の力がどの程度なのか、いまいち認識出来ていないのだった。


 キングオークの持つ、銀の槍が光り輝く。


(何か技を使うようだな。あっちも膠着状態に嫌気が指してきたようだ。)


「【支援魔法:力増強(パワーアップ)】!」

 今の力がいい勝負なら、下級魔法でも大丈夫だろう。


 マルスの攻撃力は、支援魔法により50パーセント上昇する。


 キングオークが、銀の槍を素早く突き出す。


 キングオークが放ったのは、攻撃速度を上昇させる槍技疾風突きだ。


 しかし、キングオークの元々の速さは、それ程高くない、いくら速度を上昇させようと、マルスの素の速さには及ばない。


 マルスは槍を回避し、キングオークが伸ばしきった槍を、剣で上から下に叩きつけて地面に埋め込ませる。


「プギ!?」

 自分の攻撃が避けられると考えていなかったのか、キングオークは間の抜けた声を上げた。


「終わりだ!」

 マルスは、そのまま槍の上で剣で走らせ、キングオークの首を切り落とす。


 マルスが周りを見回して警戒するが、近場にモンスターの姿は無かった。


「あ、あの! 助けていただきありがとうございました。」

「……(さっきは戦闘中だったから、良く見てなかったけど、すっごい綺麗な人だな。あっ!? 黙ったままは失礼だな。)えっと、どういたしまして。」


 マルスとイリスが話している間に、倒れていた他の者達が意識を取り戻す。


 そして、事情を聞いた護衛達は、一斉に頭を下げた。


「イリス様を助けていただき、ありがとうございます私共の怪我まで治していただいて。」

 へぇーー、この可愛い子はイリスって言うんだ。


「いえいえ。偶々通りかかっただけですし。間に合って良かったです。」

「余程、有名な方なのでしょう。お名前をお伺いしても?」

「俺ですか? マルスと言います。ずっと森の中で暮らしていたので、有名じゃないですよ。今は、冒険者学校へ向かっているところなので。」

「……。」

 質問した兵士だけでなく、その場に居た、マルス以外の者の動きが止まる。


 (あれ? みんな固まっちゃった? 俺、石化の魔法なんて使えないよ? それとも時間魔法?)


「えっと、マルス殿は大変お若く見えますが、冒険者学校で教官をされているのでしょうか?」

 (教官? 俺が?)


「違いますよ。入学しに行くんですよ。それと、俺は16歳です。」

 またしても、一同の動きが止まってしまう。


 (だから、俺には石化の魔法は使えませんって! 石化の解除なら出来ますけど。)


「16歳? 私と同い年で、あれだけの力があるなんて。」

 イリスだけでなく、話を聞いていた護衛達も驚きを隠せない。


 キングオークを単独撃破出来る者が、冒険者学校に通う意味があるのか、皆疑問に思ってしまった。


 そして、イリス達にはもう一つ気になっていたことがあった。


「えっと、一つ聞いてもいいかな?」

「何でもどうぞ?」

 (可愛い子からの質問なら、何でもお答えしますよ!)


「マルスは、さっき剣で戦っていたけど、剣士なの? いえ、でも回復魔法も使っていたし、一体何の職業なの?」

「俺? ()()()()だよ。」


「……はい?」

 その瞬間、イリスと護衛騎士達の頭はフリーズしたのだった。


(え? え? え? どう言うこと? 今、白魔道士って言ったの? 白魔道士なら確かに回復魔法が使えるのは分かるけど、何で白魔道士であんな接近戦が出来るのよ!)


 この後、何とか気を取り直したイリス達と共に、マルスは冒険者学校がある、オケアノス王国の王都入りを果たしたのだった。

かき氷が美味い一日ですな〜

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