卒業試験
時間が出来たので、投稿しちゃいます(^^)!
マルスが、ヘラとゼウスと暮らして、10年が経過し、今日16歳の誕生日を迎えた。
マルスは、10年で身長もかなり伸びて、今では身長170センチの美青年となった。
髪は銀髪で、男にしては少し長めである。
「今日は、私達からの卒業試験だよ。」
ヘラは、剣を構えてマルスと対峙している。
この世界は、16歳で成人扱いされ、独り立ちするのが主流だ。
「行くよヘラさん!」
「全力で来なさい!」
マルスの剣とヘラの剣が激しくぶつかり合う。
マルスの振る剣は、全てヘラにいなされてしまう。
(やっぱり、ヘラさんは強い。)
マルスは、ヘラの剣に弾き飛ばされ、バックステップで距離を開ける。
「全力で来なと言ったんだよ!」
ヘラは、マルスに怒鳴り声を上げた。
(素のままじゃ、歯が立たないな。)
「分かってるよ。【支援魔法:大天使の力】!」
マルスは、自分自身に支援魔法を発動し、爆発的に攻撃力を上昇させた。
マルスが発動した支援魔法は、分類上は最上級魔法に位置している。
この世界の魔法は、下級魔法、中級魔法、上級魔法、最上級魔法、神級魔法と五段階に分類させており、最上級魔法を使える者は僅かであり、神級魔法は本当に一握りの人間だけが扱える。
そして、再びヘラへと剣を振り下ろしたマルスの剣がヘラの剣を弾き飛ばす。
「そうこなくっちゃね。【剣技:豪斬!】
攻撃力を上昇させているマルスの剣に対抗するために、ヘラも技を発動する。
ヘラの使用した技は、技能と呼ばれているもので、魔法同様に五段階あり、下級技能、中級技能、上級技能、最上級技能、神級技能に分けられている。
そして、ヘラが使用した豪斬は、下級技能である。
二人の間には大きなステータス差があるため、マルスが最上級魔法で攻撃力を強化して、ヘラの素の攻撃力を超えたとしても、ヘラが下級技能で攻撃力を上乗せされれば、二人の攻撃力は、ほぼ互角となってしまうのだ。
その後も幾度となく、剣を合わせるが、攻撃力を強化しただけでは、他のステータス差が大きく、徐々にマルスが押され始める。
「くっ!?」
「これで終わりよ!【剣技:豪烈斬!】
ヘラが放った剣技は、豪斬の上、中級技能である豪烈斬である。
(やるしかない!)
「【支援魔法:全大天使】!」
俺は自身に支援魔法を発動した。
そして、ヘラの豪烈斬をいなしたマルスの剣が、ヘラの喉元へと突きつけられる。
「……まさか、負けちゃうとはね。強くなったわねマルス。」
「ふぅーー。成功して良かった。」
マルスは、集中し過ぎて止めていた息を吐き出す。
「さっき、何をしたの? 支援魔法を使ったのは分かったんだけど?」
ヘラは、マルスが何故、自分の攻撃を回避し、勝利出来たのか分からなかった。
「全部のステータスを強化したんだよ。」
マルスが発動した全大天使は、マルスの全能力を強化する最上級の支援魔法だ。
これにより、マルスの全能力が爆発的に上昇していたのである。
ギリギリまで使用しなかったのは、過去に複数同時は成功していたが、全ステータスの支援魔法の同時発動を過去に成功したことがないからだ。
「全ステータス強化!? マルスいつの間にそんなことを?」
マルスの言葉に、ヘラは驚きを隠せない。
「前から練習していたんだ。全部の強化が出来たのは、今日が初めてだよ。」
(それにしても、かなりヘトヘトになっちゃったよ。)
「やるじゃないかマルス。まさかヘラに勝つとはな。」
試合を観戦していたゼウスが、マルスの頭に手を乗せて、頭を撫でる。
「もう、子供じゃないんですから!」
「そうだな。立派になったじゃねぇか!」
マルスは、恥ずかしさからゼウスの手を払い除ける。
ゼウスとも試合をする予定だったが、マルスがヘトヘトになっていたため、休憩してから戦うことになった。
休憩中に、マルスはMPを回復させる魔力回復薬と言うドリンクを飲み干す。
(さて、ヘラさんには勝てたけど、ゼウスさんはどうやって攻略しようか。)
ゼウスはヘラと違って、魔法攻撃が主体であり、近付けば勝機はあるのだが、遠距離からバンバン魔法を撃たれてしまうため、簡単に近付かせてはくれない。
マルスが攻略を考えていると、あっという間にゼウスとの試合の時間になっていた。
「始め!」
「【支援魔法:大天使の羽】!」
ヘラの合図共に、マルスは最上級支援魔法を発動し、速力を強化して、一気にゼウスへと駆け出す。
「甘いぞ! 【氷魔法:氷地獄】!」
ゼウスの放った魔法により、ゼウスからマルスの方へ極寒の氷が押し寄せる。
「くそっ! 【支援魔法:大天使の頭脳】!からの【結界魔法:大天使の守護】!」
マルスは、自身の魔力を強化し、更に前面に最上級の結界魔法を展開して、氷地獄を防ぐ。
ゼウスの放った氷魔法は最上級魔法であり、マルスも最上級の結界魔法を展開したが、魔力に差があるため、魔力を強化しなければ太刀打ち出来ないのだ。
「やるじゃないか! なら【火魔法:地獄の炎】!」
ゼウスの手からは、黒炎が放たれる。
(ゼウスさんの十八番だ!)
マルスに向かって、物凄い高温を発する黒炎が迫り来る。
ドゴーーン!!
着弾した衝撃で、辺り一帯が吹き飛び、燃え盛る。
「ハッ!」
マルスの剣が、ゼウスの脇腹スレスレで停止する。
「……負けちまったか。大したもんだ!」
ゼウスは、成長したマルスの頭を撫でる。
マルスは、照れ臭かったが、ゼウスに勝てたのが嬉しかったので、されるがままだ。
マルスは、地獄の炎によって出来上がった巨大なクレーターを目にし、先程の地獄の炎を受けていたら、強化した大天使の守護でも、防ぎきれなかったかも知れないと思ったのだった。
「んーー、マルス。今のはどうやってゼウスの地獄の炎を避けたの?」
試合を見ていたヘラは、地獄の炎によりマルスを見失ってしまい、マルスがどうやって勝利したのか理解出来ていなかった。
「今のは転移魔法の瞬間移動を使ったんだよ。」
「「は?」」
二人が驚くのも無理は無い、この世界の常識として白魔道士やその上級職の者で、高レベルの人間だけが転移魔法を使える。
しかし、転移魔法の使い道としては、ダンジョンやフィールドから街等に戻るための魔法として認識されているのだ。
まさか、戦闘中に使う人間がいるとは、思っても見なかったのである。
「はぁーー、その使い方は想定外だ。」
「そうねぇ。」
▽
マルスが二人に勝利したことで、今日は豪華な夕飯となった。
「マルスも一人前だな。」
「どこに出しても恥ずかしくないわね。」
二人は、大きく成長したマルスに感動していた。
「どれ、最後に成長したマルスのステータスを確認するか。」
水晶玉を使ってのステータス確認は、一年毎にしていた。
毎年、俺の成長に二人は驚いていたな。
【ステータス】
名前:マルス、年齢:16才、職業:白魔道士、レベル:10、HP209、MP164、攻撃力167、防御力135、速力152、魔力178、命中力125、運力167
「相変わらず、ぶっ飛んだステータスだな。」
「そうねぇ。一般的なレベル10の白魔道士の魔力が60前後だから、3倍近いわね。それに他の数値もずば抜けてるし。」
ステータスの上昇値は、職業に依存しており、戦士なら攻撃力が上がりやすく、騎士ならバランスよく、魔道士なら魔力と分かれているのだ。
その為、この世界の人間は、自分の職業に見合った訓練を行う為、他の数値は伸びにくい。
しかし、マルスはヘラとゼウスによって満遍なく訓練を施され、レベルアップ時の数値の伸び率が異常なものとなっているのだ。
((このステータスで支援魔法で強化とか、反則ね。))
マルスは、家の近場でモンスター討伐を行なっており、近場のモンスターでマルスが手こずる相手はいなくなってしまった。
また、レベ10まではトントンと上昇したが、ここからレベルを上げるのには、多くの経験値を必要とする。
家周辺にいるような雑魚モンスターではなく、より強いモンスターを相当数倒さなければ、レベルは上がらない。
マルスは10年間ここで鍛えてきたが、ゼウスもヘラも、マルスに戦いのいろはを教えることに重きを置いていた為、マルスのレベル自体は、戦闘経験のある同年代とそれ程変わらない。
「俺、一人でやっていけるかな?」
「問題無いわよ。」
「そうだな。寧ろやり過ぎないか心配だ。」
マルスの不安を他所に、二人はマルスの強大過ぎる力を心配していた。
やり過ぎないかと。
「取り敢えず、オケアノス冒険者学校へ行って来い。」
「そうね。そこでこの世界について学んで、仲間を見つけるといいわ。」
「ヘラさんとゼウスさんも、そこで出会ったんだもんね。」
二人の馴れ初めなどは、何度も聞かされている。
(今でもラブラブだからね。 見てるこっちが恥ずかしくなるくらい。)
▽
マルスが卒業試験を終えて、疲労でぐっすり寝ている頃、ヘラとゼウスは酒を飲み交わしていた。
「マルスもいよいよ居なくなっちまうな。」
「いつまでも、ここに居る訳にはいかないわよ。」
「そうだな。……マルス、強くなったな。小さい頃は、色々苦労したが、今思い出すと、いい思い出だ。」
「ええ。そうね。」
二人は、チビチビと酒を飲みながら、昔のことを思い出していた。
「マルスに合わせて、少しずつ俺達も力を出してきたが、いずれは全力でやってもマルスに勝てなくなりそうだな。」
「そうね。マルスなら世界最強になれるかも知れないわね。」
ヘラとゼウスは、マルスの将来を楽しみにしていたのだった。
▽
翌朝、マルスの独り立ちの朝を迎えた。
マルスは、ヘラとゼウスが用意してくれた新しい服に袖を通す。
その服は、白地に青ラインの服だ。
動き易さも重視されており、かなり軽量でありながら、強力なモンスターの素材で作られており、高い防御力を有する。
「行ってくるね。」
「元気でね。マルス。」
「たまには顔を見せに来いよ。」
「うん。ありがとね。…… 父さん、母さん。」
「「!?」」
「俺をここまで育ててくれてありがとう。」
ヘラとゼウスは、初めてマルスに父、母と言われ、その言葉に胸が一杯となった。
「……マルス。」
二人の目からは、涙が流れていた。
「冒険者学校。楽しみだな。」
二人に見送られ、マルスは歩き出す。
波乱の学校生活の幕開けである。
いつでも、支援魔法のポイント付与待ってます!