緊急事態
今日も一日頑張りましょう٩( 'ω' )و!
遠征訓練2日目の夜、それらは唐突に現れた。
マルスとミネルヴァが、夜の警戒を交代して直ぐのことだ。
マルスが拠点の周りに散りばめていた、木の枝が折れる音が鳴り響いたのだ。
「ミネルヴァ何か来るぞ!」
「ふぁーー、まだ寝起きだよぉ。」
ミネルヴァは、文句を言いながらも周囲に目を配らせる。
木の枝が鳴ったのは、マルス達の正面からだけだ。
「キシャーー!」
焚き火の明かりで見える範囲に、襲撃者の姿が入る。
ミミズみたいな見た目に、大きな口にぎっしりと歯が生えている。
「コイツは!? ワームか?」
マルスは、モンスターの見た目から、モンスター名を口にする。
ワームとは、虫に見えるがドラゴン系モンスターに分類されており、HP、攻撃力、防御力が高いモンスターだ。
「気持ち悪い!?」
ミネルヴァは、この手のモンスターは苦手な様で、顔を引攣らせる。
「俺がやるよ。【支援魔法:力増強】!」
マルスは、自分の攻撃力を若干強化して、ワームへと駆け出すと、すれ違いざまにワームを両断する。
HP等が高いといっても、1対1でマルス達が苦戦する様なモンスターでは無い。
ワームは、頭から胴体にかけて真っ二つにされ、地面へと落ちる。
マルスは、そんなワームへと目を向ける。
「……ディアナさん、この森にワームって棲息しているんですか?」
事前に聞いていた話だと、ワームが出現するとは聞いていない。
「ワームは、過去に一度もこの森で確認されていません。……何か異変が起きているのかも知れませんね。」
ディアナは、動かなくなったワームに視線を向けて、マルスの問いに答える。
チリチリチリチリ
マルス達が考えにふけっていると、周囲に張り巡らせた鈴が、けたたましく鳴り響く。
音がしたのは、先程ワームが出現して来た方角だけだ。
「数が多いかも知れない。ミネルヴァは、みんなを起こしておいてくれ。」
マルスがミネルヴァにそう指示を出すと、暗がりの中から多数のワームが、マルス達へと襲いかかって来た。
「いやーー!?」
ミネルヴァは、一目散にテントへと仲間を起こしに向かう。
「数が多いな。」
(攻撃に出ている間に、テントに向かわれると厄介だ。)
「【結界魔法:聖域結界】!」
(取り敢えず、みんなが起きるまで持ち堪えるか。)
マルスの展開した結界に阻まれて、ワーム達はマルス達へと近付くことが出来ない。
「やはり、この森で何かが起きているようです。直ぐに撤退します。【弓技:爆発矢】!」
ディアナは、空へと向かって2本の矢を放つ。
空で大きな爆発が2回発生し、爆発の音が森中に響き渡る。
「ディアナさん、今のは?」
「緊急事態を知らせる合図です。不測の事態に陥った際は、3学年の生徒が空へと合図を上げます。1回は応援要請、2回は直ちに撤退です。」
「成る程。」
(事前にそう言ったことが決められていた訳か。これなら、他のグループも直ぐに撤退出来るだろう。)
今の1学年の生徒にとっては、ワームは強力なモンスターだ。
1対パーティーで戦うなら問題無いだろうが、複数に襲われたら危険だ。
3学年の生徒らも、1学年を守りながらでは、ワームに苦戦してしまうだろう。
「どうしたんだよマルス。ってなんだコイツら!?」
「うにょうにょしてる!?」
「見た目が、気持ち悪いですね。」
寝ていたクレイ、イリス、フレイヤがミネルヴァによって起こされ、結界前で暴れているワームを目にする。
「何か異変が起きているようだ。ここから撤退する。森の入り口が集合場所らしいから、コイツらを片付けたらそこまで転移するぞ!」
「「「「了解!」」」」
マルスは、視線をクレイ達からワームへと戻したのだが、ワームの数が減っていることに気が付く。
「あれ? 何匹かいない?」
マルスが結界の外を見ていると、足下の土が盛り上がる。
「しまった!? コイツら土の中を進んで来たのか!」
いきなりの襲撃を受けたマルスは、ワームの歯が足に掠ってしまい、出血する。
「マルス!?」
マルスが負傷したことに気が付いたイリスが、マルスの名を叫ぶ。
「俺は大丈夫だ! 地面に気をつけろ! 【回復魔法:回復】。」
マルスは、直ぐに自分に回復魔法を施し、傷口を塞ぐ。
(時間を掛けていたら、どんどんワームが増えて来ちまう。)
結界内に侵入して来たワームに対し、クレイ達は1対1で応戦する。
「イリス全体攻撃を頼む! 【支援魔法:大天使の頭脳】!」
「任せて! 【雷魔法:蒼雷円】!」
マルスの最上級支援魔法で、魔力を強化したイリスは、円状に広がる雷魔法を発動する。
マルス達を取り囲んでいたワームが、次々と蒼い雷に飲み込まれる。
「地に縫い付けてあげるわ。 【弓技:百矢】!」
ディアナが矢の先端を天へと向けて放つと、矢がいくつにも枝分かれし、ワーム達を貫く。
イリスとディアナの攻撃で弱ったワームや、生き残っていたワームを次々と倒し、最後の一体をマルスが斬り裂いた。
「ふぅーー、取り敢えず倒しきれましたね。」
(無い物ねだりをしても仕方が無いことだが、俺も複数の敵に攻撃する手段が欲しいものだ。)
「他の班が、同規模の襲撃を受けていたら危なかったかも知れないわね。」
ディアナは、自分で言ったことだが、想像しただけでゾッとしてしまった。
「そうですね。取り敢えず、俺の周りに集まって下さい。全員で森の入り口まで転移しますから。」
マルスは、転移魔法を発動しようと自分の周りにみんなを集める。
「こんなことになるとはな。ディアナは、俺が守ってやるからな。」
「あら、ありがとう。」
ディアナさんに、3学年の上級剣士の男性が話しかけた、その時。
上級剣士の腹部から、ワームの頭と血が飛び出す。
「……え? う、うそ、だ、ろ。」
上級剣士は、自分に起こっていることが理解できなかった。
いや、理解したくなかったのだ。
上級剣士の身体を食い破ったワームが、頭を引っ込める。
「ノート!?」
ディアナは、腹部を貫かれた上級剣士、ノートへと駆け寄る。
「お、お、れ、まだ、死に、たく、ない。」
ノートの顔からは、徐々に生気が失われて行く。
「死んじゃダメよ、ノート!」
「俺が死なせません! 【回復魔法:癒しの大天使】!」
マルスは、直ぐにノートへと最上級回復魔法を発動する。
回復魔法の効果により、貫かれた腹部が徐々に塞がって行く。
「失った血までは、元に戻すことは出来ませんが、これで血が止まれば、なんとか持ち堪えられる筈です。」
マルスが治療に専念している際に、クレイ達は、ノートを瀕死にしたワームへと攻撃を繰り出していた。
クレイ達が相手にしているワームは、先程までのワームとは異なっていた。
身体付きは似ているが、頭の部分に螺旋状の角が二つ生えている。
このワームは、ホーンワームと呼ばれており、通常のワームより攻撃力が高い。
クレイ達は、マルスの支援魔法がない為、ホーンワームの攻撃を受けないよう、距離を保って攻撃を行っていた。
「よくも私の仲間を! 【弓技:不死鳥の矢】!」
ディアナは、何本もの矢を束ねて放つと、その矢は大きな火の鳥となり、ホーンワームに命中すると、ホーンワームを跡形もなく消し去った。
「よし。一先ずこれで大丈夫です。直ぐに転移します! 【転移魔法:空間跳躍】!」
マルスは、ノートの治療を終えると、直ぐに全員を集めて転移魔法を発動したのだった。
▽
マルス達が立ち去った拠点に、魔王デスワームが辿り着く。
「俺様の部下に、なんてことしやがる!?」
魔王デスワームは、物言わぬ肉の塊へと成り果てたワームの姿を目にして、怒り狂う。
「この傷は人間か? 絶対に見つけ出して殺してやる! お前ら、徹底的に森の中にいる人間を探し出せ!」
魔王デスワームの号令により、ワーム達が四方へと散開する。
「俺様の物に手を出したんだ。死をもって償ってもらうぞ。」
魔王デスワームの赤い目が、暗い森の中に怪しく光っていたのだった。
明日も宜しくお願いしますm(._.)m




