遠征開始
遅くなりましたが、本日分の投稿です(>人<;)
王都南にある森において、遠征訓練を行うことになったマルス達の目の前には、現在遠征目的地である王都南の森が広がっていた。
「3学年の生徒は、予め指定していたパーティーの側に移動して下さい。」
エイル先生の号令により、3学年の生徒達が1学年の生徒の側に移動を開始する。
「ディアナです。宜しくお願いしますね。」
桃色のロングヘアをなびかせている、綺麗な女性がマルスへと声を掛ける。
(あれ? この人何処かで見たことがある気がするなぁ。そうだ!? 入学式で挨拶していた生徒会長だ!)
「マルスです。宜しくお願いします。ディアナさんは、弓を使うんですね。」
ディアナが、差し出した手を握り返す。
「ええ。私は弓聖士なのよ。」
「え? 最上級職業ですよね?」
「ええ。オグマと同じね。オグマに勝ったマルス君とは、一度話がしたいと思っていたのよね。」
(こんな綺麗な女性に、話したかったなんて言われると、照れちゃうな。)
3学年Sクラスに在籍しており、クラス代表を決める試合において、オグマとの戦いに敗れてしまったそうだ。
接近タイプと遠距離タイプだから、間合いが上手く取れていれば勝利は分からなかったと、他の3学年の生徒が口にしていた。
(あれ?冒険者学校の生徒会長は、代々3学年の実力一位がなることになっているって聞いたことあるけど、何で生徒会長をオグマさんがやらなかったんだ?)
そのことについて、マルスはディアナに尋ねてみた。
「オグマは、そんな面倒なことしてたら、鍛錬の時が削れるだろって言って、私に押し付けたんですよ。全く。」
ディアナは、頬を膨らませて拗ねていた。
「そ、そんなことがあったなんて、苦労してますね。」
「他人事じゃないですよ? マルス君も3学年に上がれば生徒会長の可能性があるんですから。」
「俺のクラスには、最上級職業のイリス達がいるから、生徒会長は、イリス達の誰かがやってくれる筈です。」
マルスは、オグマと同じで生徒会長なんて面倒なものは、他に押し付けようと思ったのだった。
これから3日間同伴するディアナのパーティーメンバーは、弓聖士ディアナの他に、上級剣士2人、上級騎士1人、上級黒魔道士1人のパーティーだ。
バランスの良いパーティーと言えるだろう。
「それじゃあ、準備できたグループから森に入って訓練開始よ。」
エイル先生の合図で、生徒達は森へと足を踏み入れたのだった。
▽
この遠征は、拠点を決めて、そこからあまり離れずに活動しても良いし、ひたすら森の中を探索しても良いことになっている。
兎に角、3日間この森で生活することが重要な課題なのだ。
「拠点を決めて3日間過ごすのと、森を探索しながら過ごすの、どっちがいい?」
マルスは皆に意見を求めるが、自分の意見としては、森を探索しながら過ごす方だ。
イリス達も、森の探索をしながら3日間過ごす方がいいという意見だったので、マルス達の班は、森の探索をすることに決まった。
森の中では、巨大な芋虫モンスターや巨大な身体をした蛾のモンスターなどが時々マルス達を襲ってきたが、いずれも弱いモンスターの為、マルス達は出会い頭に瞬殺してしまう。
「まぁ、コイツらに苦戦している様じゃSクラスじゃないよな。」
「そうね。ただ、他のクラスの子達は、気をつけないと怪我をしてしまいますからね。」
マルス達に同伴しているディアナ達は、マルス達の戦いぶりから、戦闘で危険になることは無いだろうと判断した。
しかし、マルス達が強いのであって、他の生徒達にとっては、この森で3日間生活するのは、それなりに難易度の高い訓練なのだ。
マルス達は、森の中を探索し、川沿いへと辿り着く。
「おっ!? 猪がいるじゃん! 今日の飯にしようぜ!」
マルスは、川で水を飲んでいる猪を見つけると、直ぐに駆け出して猪へと向かう。
(もたもたしていると逃げられちゃうからな。)
マルスの気配に気付いた猪だが、その頃には既に剣を振り切っていた。
猪の巨体がそのまま地面に倒れ、動かなくなる。
収納箱から解体用の包丁を取り出し、直ぐに毛皮や骨を取り除く。
「手際がいいですね。」
ディアナは、マルスの解体を見て、そう口にする。
「俺、森の中で生活してきたんで、よくこうやって仕留めて自分で解体してたんですよ。」
喋りながらも、直ぐに解体を終わらせたマルスは、解体した肉を収納箱へと放り込む。
(ふっふっふ。食料ゲットだぜ!)
マルス達は、川の水をある程度汲み上げて確保する。
「そろそろ日も暮れてくるから、寝床の確保をしなきゃだな。」
マルス達は、最初に拠点となる場所を探すことにした。
「どんな場所を拠点にするか?」
クレイが、マルスに意見を求める。
基本的に3学年は、緊急時の補助しかしないため、助言等もしない。
(出来れば周囲が開けている場所を拠点にしたいな。)
「開けた場所がいいかな。警戒し易いし。洞窟とかは、もし入り口を落とされたりしたら危険だからね。」
(入り口を封鎖されて生き埋めにされたら、たまったもんじゃない。)
「それもそうだな。ここの川沿いも開けているけど、ここにするか?」
「いや、川沿いは確かに水を直ぐに確保出来ていいんだけど、川にはモンスターも寄ってくるから、その度に戦闘してたら大変だろ?」
モンスターも生きている為、水は必須だ。
アンデット系モンスターは、水を飲まなくても死ぬことは無い。
元々死んでいるのだから。
マルスの意見にイリス達も同意し、比較的開けた場所を見つけたマルス達は、そこを拠点にするために、簡易テントを設置する。
「よし。テントも完成したし、薪にする木の枝と食料があれば確保してくるか。」
テントに待機組と、食料調達の二手に分かれることにする。
「俺が取ってくるけど、誰か一緒に行く?」
「私も行く。」
「なら、私も行こうかな。」
こうして、マルス、イリス、ミネルヴァの三人で食料調達と薪に使える枝を探しに行くことになった。
木の枝を順調に回収し、収納箱へと入れていく。
その途中で、マルス達はキノコを発見する。
「このキノコは食べられるのかな?」
「どのキノコ? んーー、これは食べれないやつだね。しばらく笑いが止まらなくなる笑いキノコだよ。」
イリスは、手に持っていた笑いキノコを地面に落とす。
「見分けが付かないよ。」
「数こなせば分かるようになるよ。」
マルスは、笑いキノコの横に生えている、食べられるキノコを採取する。
(あれ? ミネルヴァはどこに行ったんだ?)
「あっはっはっはっはぁ、わ、わ、わい、笑い、があっはっはっはっは!」
「あーー、食べちゃったのね。」
ミネルヴァは、腹を抑えながら笑い続けており、ミネルヴァの近くには、欠けた笑いキノコが落ちていた。
「【回復魔法正常】。」
笑い続けているだけなので、その内治るのだが、このままでは煩いので、マルスは状態異常を回復する魔法をミネルヴァへと施す。
「あーー、あ、つ、疲れた。ありがとうマルス。」
「ああ。迂闊に食べるなよ。」
ミネルヴァが笑いキノコを食べた以外は、特に問題が起きることもなく、マルス達は拠点へと戻った。
拠点に戻ったマルスは、早速料理を始める。
「今日の夕飯は俺が作るよ。ディアナさん達も一緒にどうですか?」
ディアナ達は、果物を確保していた様で、既に食べ始めていた。
「私達のことは気にしないで大丈夫ですよ。」
ディアナは、マルスの申し出を丁寧に断る。
マルス達が集めた木の枝を並べ、イリスに火を灯してもらう。
マルスは、収納箱から調理器具を取り出す。
マルスが取り出したのは、包丁、まな板、お玉、菜箸、鍋、それと猪肉と採取したキノコなどだ。
マルスは、素早く食材を切ると、沸騰させた鍋に食材を放り込む。
味付け用の調味料も、勿論収納箱に入っているので、ちゃちゃっと味付けを済ませるマルス。
更に、飯盒に米を入れて、米の一番上に指を触れ、指の第一関節付近まで水を入れて鍋の横にセットする。
「後は、待つだけだな。」
(あれ? 何だか周りが静かなんだけど?)
イリス達だけでなく、ディアナ達もマルスの行為に言葉を失っていた。
「どうかしたの?」
「マルスって、こんなに料理が出来たの?」
「これくらい簡単だろ?」
(そんなに驚くことだろうか?)
「だって、マルスはたまごかけご飯を。」
「えーー、たまごかけご飯が原因で、俺って料理出来ないと思われてたのか!? てか、イリスにだけは言われたく無い。」
(クレイ達も頷いてるし!? 酷く無い?)
「たまごかけご飯しか出来ない訳ないだろ!? で、何でディアナさん達も固まってるんですか?」
ディアナ達は、マルスが以前料理した、たまごかけご飯のことは知らない筈だが、動きが止まったままだ。
(もしかして、さっき食べてた果実に石化の効果でも?)
「いや、外でこんな立派な食事を作るとは思わなくて。白魔道士の空間魔法っていうのは、そんなに色々入るものなのですか?」
ディアナが喋ったことで、石化はしてなかったみたいと分かり安心するマルス。
「美味しいものを食べたいですから。他の白魔道士と比べたことがないので、よく分かりませんが、俺の収納箱は、結構入りますよ。」
「……そ、そうですか。」
しばらくして、猪鍋が出来上がり、ご飯も炊き上がる。
辺りをいい匂いが漂い、ディアナ達の鼻を刺激する。
先程は、マルスの申し出を断ったディアナ達は、猪鍋から目が離せない。
「いっぱいあるんで、ディアナさん達も食べて下さい。」
「いえ、だいじょ、『ぐぅーー』……。」
「……どうぞ。」
再び断ろうとしたディアナだったが、余りにもいい匂いがした為、お腹は正直に返事をしてしまう。
お腹が鳴ってしまい、顔を赤らめるディアナ。
マルスは、ディアナのお腹の返事はスルーして、猪鍋を差し出したのだった。
「美味しい!」
ディアナは猪鍋を食べると、頬を緩ませて感想を漏らす。
こうしてマルス達のグループは、贅沢な食事に舌鼓を打ったのであった。




