幼少期〜戦える白魔道士〜
夜中の投稿から読んでいただいた方、ありがとうございます( ^ω^ )ノ
「ここは?」
マルスは、目を醒まして周りを見回すが、自分が見知らぬ部屋に居ることに気が付く。
「あっ!?」
マルスは、布団から飛び降りると、部屋の扉を開けて飛び出す。
「お父さん!? お母さん!?」
無意識のうちに両親を叫びながら飛び出すと、そこには人が二人座っていた。
「気が付いた?」
「え? ヘラさん? どうして?」
(なんでヘラさんがここに居るんだ?)
マルスは、ヘラにおばさん呼びをして注意されたことがあり、それ以降は、ヘラのことをさん付けで呼ぶ様にしていた。
「ここは私の家よ。……大変だったわね。」
「ヘラさんの家? 僕のお父さんとお母さんはどこ?」
「……。」
ヘラは悲しげな表情を浮かべた。
マルスは、あの光景が夢であって欲しいと願っていた。
しかし、マルスがここにいると言うことは、やはり夢ではなかったのだろう。
(僕の両親は、もう……。)
「……守るって、約束したのに。」
マルスは、悔しさで目の前が歪んで見える。
「すまないな。俺が村に着いた時には、手遅れだった。」
ヘラさんの横に座る男性が頭を下げた。
男性は、細身の優しそうな男性だった。
「!? おじさんの所為じゃないです。」
マルスは意識を失う前に、自分を助けてくれた男性だと気が付いた。
「この人は、私の夫のゼウスよ。……私がマルスとの稽古の後も村に滞在していれば……ごめんなさい。」
「ヘラさんの所為ではないです。えっと、ゼウス……さん。僕を助けてくれてありがとうございます。」
(お父さんもお母さんもいなくなって、僕はこの先どうすればいいんだ。)
「……お墓、作らなきゃ。」
(お父さんとお母さん、村のみんなを弔ってあげないと。)
「心配すんな。俺がやっておいた。」
「後で、一緒に行きましょう。」
「……うん。ゼウスさんありがとう。」
この後、ヘラさんから出されたお茶を飲んで落ち着いたマルスは、ヘラとゼウスと一緒に、村へと戻った。
「お父さん、お母さん。ごめん。」
マルスは、両親の墓の前で、ひたすら謝り続けた。
空が夕日に染まる頃まで、マルスは墓の前で手を合わせる。
「マルス。うちに来ない?」
「え?」
「うちには子供もいないし、マルスが良ければだけど。」
ヘラの好意に甘え、マルスはこの日からヘラとゼウスと一緒に暮らすこととなった。
▽
両親の死と村の壊滅で友達や知り合いを全て失ったマルスは、何をしていいのか分からなかった。
そんなマルスに対して、ヘラは木剣を手渡し、稽古をしましょうと言う。
マルスは、気乗りしなかったが、気が紛れるかも知れないと思い、ヘラの指導の下、剣の稽古に打ち込んだ。
一心不乱に剣を振った。
「はぁはぁはぁ。」
(疲れたぁーー。)
マルスは、大の字になって、地面に寝転んだ。
「ねぇ、ヘラさん。僕、強くなれるかな? みんなを守れるくらい。強く。」
マルスは、青く澄み渡る空を見つめる。
「ええ。絶対なれるわよ。私とゼウスが貴方を強くしてあげるわ。」
「僕、世界で一番強くなる!」
マルスの宣言を、ヘラは微笑ましく見つめていたのだった。
▽
「ヘラから聞いたんだけど、マルスは世界一強くなりたいのか?」
「うん!」
「そうか。世界一とは大きく出たな。」
「もう、誰も失いたく無いんだ。……そう言えば、ベヒモスって知ってる?」
マルスの口から出た名前に、ゼウスは驚いた。
この世界で戦いを生業としている者なら、その名を知らない者はいない。
「知っているが、どうしてだ?」
「えっと、……僕の家に居た熊のモンスターが、我が主人ベヒモスって、口にしてたから。」
「……そうか。俺が村に着いた時、暴れているベヒモスを見たが。……正直、アレには勝てると思えなかった。ベヒモスってのは魔王の名前だ。」
「魔王?」
「ああ。この世界には、魔王と呼ばれている強力なモンスターが何体もいるんだ。その中でも最強と言われているのがベヒモスだ。」
ベヒモスの攻撃力は凄まじく、その破壊力から最強と言われているのだ。
「魔王ベヒモス。……絶対に、倒してやる。」
マルスは、拳を強く握りしめた。
「若いってのはいいねぇ。なら、先ずはマルスの職業を調べてみるか。」
「職業?」
この世界には、生まれた瞬間に個々に職業が定められる。
職業は人によって違い、下級職業、上級職業、最上級職業と三段階に分けられている。
下級職業は、戦士、剣士、武闘家、白魔道士、黒魔道士、狩人などがあり、上級職では頭に上級が付く。
更に上の最上級職業は、狂戦士、剣聖、パラディン、魔法剣士、白の賢者、黒の賢者などがある。
「どうやったら、職業が分かるの?」
マルスの疑問に対し、ゼウスが取り出したのは、透明な水晶玉だった。
この水晶玉に手をかざすと、その人の名前、年齢、レベル、職業、ステータスが見られると説明される。
早速マルスが手をかざしてみると、水晶玉に文字や数字が浮かび上がった。
【ステータス】
名前:マルス、年齢:6才、職業:白魔道士、レベル:2、HP29、MP34、攻撃力25、防御力21、速力30、魔力38、命中力21、運力27
「僕は白魔道士なんだね。」
(さっきの説明だと、僕の職業は下級職業みたいだ。 まぁ、初めから決まっているなら、僕にはどうしようもない。)
「……白魔道士か。」
「白魔道士ねぇ。」
マルスの職業を知った、ヘラとゼウスが困った顔をしている。
白魔道士の職業を持って生まれた者は、HPや攻撃力、防御力などのステータスの伸び率が悪い為、戦闘に不向きであり、モンスターを倒すことが困難なことから、レベルも上がり難いのだ。
「白魔道士って、強くなれないの?」
マルスが、落ち込み気味に二人に答えを求める。
「「そんなことはない!」」
二人は慌てた様に、マルスの問いに応えたのだった。
それから、二人は白魔道士がどんな職業なのかをマルスに教える。
白魔道士は、回復魔法や支援魔法が得意だ。
白魔道士の回復魔法で多くの命が助かることや、支援魔法で仲間を強化して、強敵を打ち倒すことが出来ると知る。
「白魔道士って、凄いんだね!」
「そうだ! 白魔道士は凄いんだぞ!」
みんなの怪我を治したり、仲間を助けたりって、白魔道士は、縁の下の力持ちなんだ!
「あれ?……白魔道士って、世界一強くなれるの?」
(縁の下の力持ちだけど、僕自身は強くなれるのかな?)
「そ、それはだな!?」
「マルスなら、世界一になれるわよ。」
「本当!?」
マルスは、ヘラからの言葉に喜びはしゃいでいた。
「ヘラ。世界一は厳しいだろ? 白魔道士なんだぜ?」
「きっと、マルスなら白魔道士でも世界一になれるわよ。だって、剣姫と黒王が育てるのよ?」
ヘラは、不敵な笑みをゼウスへと向ける。
「しかしだな。」
「さっきのマルスのステータスを見たでしょ? 普通の白魔道士を遥かに凌ぐステータスよ。本当に頑張って修行していたもの。私の剣があれば戦える白魔道士になれるわ。魔法の使い方はゼウスが教えてあげてね。」
「……戦える白魔道士か。将来が楽しみになって来たな。」
ヘラとゼウスは、マルスの将来を想像し、期待に胸を膨らませる。
(ん? 何だか、寒気がするんだけど?)
「二人で何のお話してるの?」
ここから、史上初となる戦える白魔道士の育成が始まったのだった。
次回は、お昼か夕方予定です!