ギガントゾンビとの戦い
馬車に揺られること数時間、マルス達は目的のキアリ村付近に到着した。
「地図によると、この辺りに洞窟があるみたいです。」
馬車の御者が地図を広げながら、マルス達へと話しかける。
「分かりました。後は俺達の仕事です。」
「お気をつけて。」
御者を見送ったマルス達は、地図を頼りに洞窟の捜索を開始する。
しばらくして、茂みの向こう側をウロウロしているアンデッド系のモンスターを発見した。
「……数は10か。ゾンビ3体、ゾンビドッグ2体、ボーン3体、ゾンビバード1体、ボーンナイト1体。」
(この中で一番厄介なのは、ボーンナイトだな。)
ゾンビホースという馬に騎乗しているボーンは、太めの槍を装備している。
そのアンデッド系モンスターの奥には、岩が崩れ落ちているのが見えた。
「どうやら、あそこが洞窟の入口だった場所みたいだ。」
「なら、アイツらを倒して、岩を退かせばいいんだけだな。」
マルスは、クレイに頷いて応え剣を引き抜く。
「イリス。最初にゾンビバードを倒してくれるか? 上空から攻撃されると厄介だ。」
「分かったわ。 【火魔法:炎の矢】!」
イリスはゾンビバードに狙いを定め、生み出した炎の矢を放つ。
放たれた炎の矢は、寸分違わずゾンビバードを打ち抜き、一撃で仕留めた。
(流石イリスだ!)
「【支援魔法:超越した身体】!」
イリスの魔法が放たれた際に、マルス達は茂みから飛び出してアンデッド共に奇襲を仕掛ける。
最初のアタックで、クレイ・フレイヤ・ミネルヴァがゾンビ3体を倒し、マルスは支援魔法により強化した身体で、近くにいたボーン3体を纏めて倒した。
「マルス! 犬っころは俺達で仕留める!」
「分かった!」
クレイ達に、ゾンビドッグを任せたマルスは、ボーンナイトへと向かう。
ボーンナイトは槍を装備している為、マルスよりもリーチが長い、槍の間合いに入る直前、ボーンナイトが槍を持つ手を動かす。
「今よ! 【雷魔法:上昇する青い稲妻】!」
マルスへ攻撃を繰り出そうとしていたボーンナイトを、地面から天に向かって青い稲妻が貫き感電させる。
「もらった!」
マルスは、イリスの魔法を受けて動きの止まっていたボーンナイトを斬り捨てた。
ボーンナイトが強いと言うのは、この集団の中で強いと言うだけだ。
支援魔法まで掛けているマルスの敵では無い。
マルスがボーンナイトを仕留めた頃、クレイ達もゾンビドッグを仕留め終えたところだった。
「早速、入口を塞いでいる岩を退かそう。」
マルス達は、積み重なっている岩が崩れ落ちないよう配慮しながら、着々と岩を撤去して行く。
そして遂に、岩崩れの中から洞窟内への小さな穴が出来上がる。
「助けに来ました! 誰かいませんか!?」
マルスの呼び掛けに、返事はなかった。
(まさか、もう手遅れだってのか!? くそっ!? 折角ここまで来たってのに。)
しかし、イリスが諦めずに声を掛け続けたところ、微かに声が返ってきたのである。
「……た、す、け、て。みんな、もう、動け、ない。」
声がかなり弱々しいが、確かに女性の声が返ってきたのだ。
「今、助けますから!」
しかし、救助に夢中になっていたマルス達は、ミケの話にあった、大事なことを忘れてしまっていた。
そう、煙だ。
岩を撤去しているマルス達を、紫色の煙が囲い込んでいたのである。
「ん? 煙……ヤバイ!?」
マルスは、咄嗟に開通させた洞窟の入口を塞ぐ。
洞窟内に煙が行かない様にするために。
「 煙を吸っちゃダメだ!」
「え? がっ!? な、く、くるし、い!」
マルスは異変に気が付いて呼吸を止めたが、クレイ達は反応が遅れてしまい、煙を吸い込んでしまったのだ。
突如、クレイ達は吐血してしまう。
(さっきの煙は毒か!? 直ぐに解毒しないと!)
マルスが、仲間達に解毒の魔法を施そうとしたところ、今度はマルス達へ黄色い煙が迫る。
(さっきの煙は毒か!? この煙は一体?)
「うっ!? 【風魔法:台風】!」
毒に身体を蝕まれながらも、イリスは風魔法で迫る煙を吹き飛ばした。
マルス達は、イリスの機転で黄色い煙を吸い込むことは無かったが、黄色い煙を吸っていたらと思うとゾッとする。
(イリス、ナイス判断だ。)
大量に立ち込めていた煙が徐々に晴れて行き、そこにはアンデッド系のモンスターが数十体と、明らかに桁違いの威圧感を放つアンデッドがいたのだった。
巨大な腐った身体をしたモンスター、ギガントゾンビ。
周りにいるゾンビには、紫色の身体をしたポイズンゾンビとマヒゾンビだ。
「【回復魔法:解毒】!」
マルスは、毒煙を吸い込んでしまった、イリス達の毒を除去する。
「餌を逃した甲斐があった。新たな餌を持ち込んでくれたか。」
ギガントゾンビが口を開く。
(餌を逃した? まさか、ミケが逃げ出したことに気付いていた? 助けに来る奴らを待ち伏せしてたってことか。)
「餌かどうか分からないぞ? 俺達はお前らを討伐しに来たんだからな。」
「舐めるなよ小僧。やれ!」
ギガントゾンビの号令に従い、ゾンビ達が動き出す。
「先ずは、周りの雑魚を蹴散らすぞ! 【支援魔法:超越した身体】!」
マルスは、全員に支援魔法を発動した。
いくら周りのゾンビが弱いと言えど、これだけの数がいるのだ。
マルスは、時間を掛けていたら毒煙や麻痺煙を吐かれてしまい、自分達の動きが鈍ってしまうと考えた。
マルス達は、自分らに向かってくるゾンビ共を次々と倒して行く。
「コイツら、かなり腕が立つ様だな。……煙を吐け!」
ゾンビ達は、一斉に口を開くと、口から紫色の毒煙や黄色い麻痺煙を吐き出す。
アンデッド系モンスターは、この手の状態異常を受け付けない為、自分達に被害が及ぶことは無い。
「私に任せて! 【風魔法:強風】!」
イリスの風魔法により、マルス達へと煙が届くことは無かった。
「小癪な。牙と爪をもって、奴らを苦しめろ! ケルベロス様に献上するのだ!」
煙による攻撃は効果が無いと判断したギガントゾンビは、配下のゾンビ達に新たな指示を出す。
ゾンビ達は指示に従って、牙や爪に毒や麻痺の効果を発動する。
マルスは、ゾンビ達の攻撃を掻い潜りながら、敵を切り伏せる。
(ケルベロス? コイツよりも上の奴がいるのか?)
「ぅ!?」
武器を所持していないミネルヴァが、ゾンビの爪を腕に受けてしまい、毒が身体を蝕んで行く。
「ミネルヴァ! 直ぐに行く!」
ミネルヴァは、毒の回る身体ながらも、近くのゾンビを倒し、マルスへと近付く。
「【回復魔法:解毒と回復】。」
「助かったよマルス。」
その間も、クレイ、イリス、フレイヤがゾンビ共を蹴散らし、遂に残りはギガントゾンビ1体となる。
「まさか、これ程の力を持っていようとは。だが、我の敵では無い!」
ギガントゾンビが、背中から巨大な剣を二振り取り出して身構える。
「行くぞ! 【騎士技:騎士一閃】!」
「行きます! 【剣技:豪烈斬】
!」
「やっちゃうよ! 【足技:三日月蹴り】!」
クレイ、フレイヤ、ミネルヴァが一斉に攻撃を繰り出す。
ギガントゾンビは、二振りの剣でクレイとミネルヴァの攻撃を受け止めるが、ミネルヴァの攻撃を脇腹に喰らう。
「そんなもんか。」
ギガントゾンビは、ミネルヴァの攻撃を受けても全く動じることはなく、三人を吹き飛ばす。
「私がやるわ! 【雷魔法:双雷龍】!」
イリスが間髪入れずに雷龍を放ち、左右からギガントゾンビへと迫る。
「【剣技:大回転】!」
ギガントゾンビは、その場で剣を水平に構えて高速で回転し、雷龍を弾き飛ばす。
「そんな!?」
イリスは、自分の魔法が防がれたことに動揺する。
「今度はこっちの番だ! 【剣技:五月雨斬り】!」
ギガントゾンビは、両手の剣を高速で振り回し、クレイとフレイヤへと迫る。
ギガントゾンビの一撃一撃は重く、クレイとフレイヤは捌ききれずに斬り付けられてしまう。
「トドメだ! 【剣技:破斬】!」
天高く掲げた剣が、黒く輝きを放つ。
「不味い! 【結界魔法:大天使の守護】!」
マルスはギガントゾンビの放つ攻撃を危険と判断し、最上級の結界魔法をクレイとフレイヤの前に展開した。
ギガントゾンビの剣がクレイ達へと迫っていたが、マルスが展開した結界に阻まれる。
「何!?」
ギガントゾンビは、自分の攻撃が防がれるとは想定しておらず、驚愕する。
ゾンビなので表情は読み取りにくいのだが、声色から驚いているのが感じられる。
「バラバラに攻撃してもダメだ! 全員で倒すぞ!」
(コイツはかなり強力なモンスターだ。 バラバラに戦っていてはダメだ。)
マルスの指示で、全員が連携を取りながらギガントゾンビを追い詰める。
「【氷魔法:氷柱】!」
「【拳技:真空拳】!」
イリスが地面から氷柱を出現させて、ギガントゾンビの動きを阻害し、ミネルヴァが拳を打ち出してギガントゾンビの顔面を殴り付ける。
「やるぞフレイヤ! 」
「はい!」
「「【合体剣技:X火炎斬り】!」」
この隙を見逃さず、クレイとフレイヤの二人が合体剣技を放ち、ギガントゾンビの胴体にXが刻み込まれる。
「があぁああああ!?」
ギガントゾンビは、クレイとフレイヤの攻撃を受けて、胴体ががら空きとなる。
「大きく胴体を晒してくれてありがとよ! 【支援魔法:全大天使】! 終わりだ! 【力の剣:建御雷神】!」
マルスは天に向けた剣先を、身体全体を駆使して全力で振り切る。
縦に切れ目が入ったギガントゾンビは、真っ二つに切り裂かれ、身体を左右に分けて地面へと倒れた。
「はぁはぁはぁ、勝った。」
マルス達は、疲れ切った身体に鞭を打ち、洞窟を塞いでいた岩を退かし、洞窟内へと入る。
そこには、多くの村人達が瀕死の状態で倒れていた。
「こ、こんなに居たのか!? 魔力回復薬も足りないぞ!」
魔力回復薬も多めに持って来たのだが、それでも倒れている人の数が多すぎる。
マルス達が困惑していると、洞窟の外が騒がしくなる。
(まさか、敵の増援か!?)
マルス達は、警戒しながら洞窟の外を窺う。
そこに居たのは、増援で間違いなかった。
そう、マルス達の増援である。
受付嬢のリナによって、ギルマスを通して国と教会に掛け合い、直ぐに救援部隊が派遣されたのだ。
増援で来た軍の者達の目は、外で倒れているギガントゾンビに釘付けだった。
「これを討伐したってのか?」
「先に向かったのって、イリス様のパーティーだけだって話でしたよね?」
ギガントゾンビは、有名な冒険者パーティーや軍が部隊を率いて戦うような相手だ。
駆け出しの冒険者パーティーが討伐していたことを知り驚いていたのだ。
(良かった。 俺達の増援部隊だったか。)
「洞窟内に大勢の怪我人がいます!」
マルスの言葉に、教会から派遣された白魔道士達が洞窟内へと向かう。
「これで村人は助かるだろう。」
軍の兵士達は、数名を残して村にモンスターが残っていないか偵察に向かい、村は壊滅していたが、モンスターは残っていなかったらしい。
こうしてマルス達は村人を救出し、ミケからの依頼を達成したのだった。
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