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それぞれの理由

ほ、ほのぼの回へ行こうと思っていたのに(; ̄ェ ̄)

 マルス達は、アザゼルと直接戦ったため、軍のトップであるテュールが状況の聞き取りをしたいとのことから、現在Sクラスの教室に集められていた。


「それで、悪魔化したことに心当たりのある人はいるか?」

 テュールが、生徒達を見回して質問を投げ掛ける。


 マルスが、サッと手を挙げた。


「君は……確かマルス君だったかな? 君の支援魔法は素晴らしいな。白魔道士でありながら、あれだけの実力を身につけているんだ。相当厳しい鍛錬をして来たのだろうな。おっと、話が脱線してしまったな。」

 テュールは、マルスの代表戦とパーティー戦を観戦していたので、マルスのことは既に知っているのだ。


「あ、ありがとうございます。」

 マルスは、アザゼルとの会話を思い出しながら、テュールへと説明する。


「……謎の人物から渡された、謎の飲み物、か。」

 この件について、テュールは部下に調べさせたが、怪しい人物の目撃情報は出てこなかった。


 一通りの聴取を終え、テュールは生徒達に礼を述べて部屋を後にする。


「テュールさん!」

「イリス様。」

 イリスは教室を出たテュールを追い掛けて、声を掛ける。


 テュールは、イリスに何も無かったことを安堵していた。


 イリスに何かあったら、国王に会わせる顔が無い。


「流石、テュールさんですね。見事な神級魔法でした。」

「ありがとうございます。同じ黒の賢者なのですから、イリス様もいずれ使えるようになりますよ。」

 イリスと暫し話をしたテュールは、国王に報告に向かうと告げて立ち去った。


  ▽


「皆さんにお知らせがあります。悲しいことですが、今回の件で、多くの生徒が亡くなりました。学校側も国の調査に協力しなければなりませんので、暫く学校は休校となります。」

 エイル先生は、Sクラスの生徒らに休校になる旨を伝える。


 (こんなことが起きたんだ。 仕方のないことだろう。 それより……人がモンスターになってしまう悪魔化。 ヘラさんやゼウスさんなら、何か知っているのかな?)


 エイル先生からの説明が終わり、生徒達は各々友人らと話を始める。


「休校か。なぁマルス、なんか予定あるか?」

「そうだなぁ。」

 (悪魔化したアザゼルは、テュールさんのお陰で何とかなったけど、テュールさんがいなかったらどうなっていたことか。)


「ギルドで依頼をこなしながら、レベルを上げようと思ってる。」

 (今のままじゃ、守りたい人を守るだけの力が俺には無い。)


「成る程な。……俺も一緒に行っていいか? 最上級職業だからって、浮かれてたよ。俺もまだまだだ。俺も強くなる。」

「ああ。一緒に強くなろうぜ!」

 マルスとクレイは、お互いに笑みを浮かべながら握手を交わす。


「私もいいかしら?」

 マルスとクレイが握手を交わしている横から、イリスも名乗りを上げる。


「イリスも?」

「ええ。民を守る為には、今の私じゃ力不足だと実感したわ。」

 イリスは、悔しげに俯く。


「それなら、私もご一緒していいでしょうか? 私の家系は代々王族を守護する立場にあります。……家の立場を抜きにしても、友としてイリスを守る力が欲しいのです。」

「……フレイヤ。」

 (これを見せられて断れる奴はいないんじゃないか? まぁ、初めから断るつもりは無いけどね。)


「それなら私も連れてってよ。みんなと一緒の方が稼げ……じゃなかった!? 強くなれそうだし!」

 (ん? 今、ミネルヴァは何を言おうとしたんだ?)


 ミネルヴァの邪な発言を聞き逃したマルスだが、休校中は5人で行動することに決まった。


  ▽


 冒険者ギルドに辿り着いたマルス達が受付に進むと、いつも通り受付業務をこなしていたベルの姿があった。


「おーー!? マルス君に、クレイ君! やっと私を貰いに来てくれたのね! いつでも準備オッケーよ!」

 ベルは、相変わらずなテンションでマルス達を出迎える。


 (この人は、ブレないなーー。)


「今日は、()()を貰いに来ましたよ。」

「……了解でーーす! それじゃ、この用紙に名前を書いちゃってね!」

 マルスが手渡された用紙を受け取り、用紙に目を落とす。


「もう騙されませんよ。」

 前と同じように、マルスが受け取った紙は、婚約届の用紙だった。


「ぶーー、残念。でも、マルス君ならいつでもオッケーだからね!」

 (ベルさん、普通に美人なのに何で誰も貰ってくれないんだろうか? このがっつきがいけないのか?)


 ベルの変わらない業務と同じ様に、リナがベルの頭をハリセンで引っ叩く。


「ちゃんと仕事をして下さい。ギルマスに言って、給料減らしてもらいますよ?」

「そ、それだけは!? 私の美容代にいくらかかってると思ってるのよ!?」

「なら、ここはいいので向こうの受付対応をして来て下さい。」

 そう言って、リナがベルに受付対応を依頼したのは、中年男性だった。


「えーーライアンじゃん。」

「いつも仲がいいですよね? こっちは私がやるので、向こうをお願いします。」

 リナに背中を押されたベルは、中年男性ライアンの下へ向かった。


 マルスが、リナへ何か良い依頼がないか、聞こうとした時である。


 冒険者ギルドの扉が、勢い良く開かれた。


 余りにも大きな音がしたため、マルスは目線を扉へと向ける。


 すると、そこに居たのはボロボロになった服を身に纏い、顔や身体を泥だらけにした少女だった。


「……誰か、助、け、て。」

 か細く発せられたその言葉を、マルスの耳が捉える。


 ギルドに辿り着いて安堵したのか、そこで少女の意識は失われ、前へと倒れこもうとしていた。


 即座に少女の側へと転移したマルスが、少女を抱き抱える。


 (だいぶ弱ってるな。)


「【回復魔法:大回復(ハイヒール)】。」

 マルスは、少女へと回復魔法を施すが、彼女は眠ったままだ。


「リナさん。どこか横になれるところはありますか?」

「それなら、救護室があるからそこへ運んで。担当の者に診てもらいましょう。」

 リナに、救護室を案内されたマルス達は、少女をベッドへと寝かせる。


 救護担当の者によると、疲労で倒れただけなので、直ぐに目を覚ますだろうとのことだった。


「誰か助けてって言ってたけど、何があったんだろう?」

 マルスは、少女の発した言葉が気になっていた。


 (助けを求めてここまで来たみたいだし、聞いた上で放置する気にはなれないな。)


「この子が目を覚まさないと分からないわね。」

 イリスも幼い女の子が、何を助けて欲しいのか気になっていた。


「なぁ、依頼はどうする? このまま待つのか?」

「ただ待ってるのも暇よね。」

 クレイとミネルヴァの言う通り、いつ目を覚ますのか分からない少女を待っていても仕方がないか。


 (目が覚めたら、リナさんに知らせてもらう様にしておこう。)


 マルスが考えを纏め終えた時である。


「……う、うーーん。あ、あれ!? ここは!?」

 少女が目を開け、勢い良く上体を起こした。


「目が覚めたんだね。えっと、俺はマルスって言うんだけど、君の名前は何て言うのかな?」

 マルスは、少女と目線を合わせる様に屈んで話しかける。


「わ、私はミケって言います。」

「ミケちゃん。助けてって言ってたけど、何かあったのかい?」

「!? そ、そうなんです! 私の住むキアリ村に変な煙が出て来て、その煙を吸った人は、みんな気分を悪くして血を吐いていたの。それから直ぐにモンスターが襲って来て、みんなで洞窟に逃げ込んだんですけど、全然調子が良くならないし、襲われて怪我した人が多くて。洞窟の入り口はモンスター達に塞がれちゃって、私は洞窟の反対側にあった小さな抜け穴から出て、助けを呼びに来たんです。村長から依頼料は後で必ず払いますって伝えるよう言われました。」


「事情は分かった。直ぐに助けに向かうから安心して。 ミケちゃんは、その場所までの地図を描けるかな? それと、モンスターは見てるかな?」

 マルスは、ミケが安心出来るよう、優しく声を掛けた。


 (こんな小さな女の子が、一人でここまで頑張って来たんだ。 必ず助け出さないと。)


 ミケに地図を描いてもらい、更に襲撃して来たモンスターがアンデッド系と聞いたマルスは、リナに事情を説明した。


「分かったわ。事情を聞くと、毒を身体に吸い込んでいる可能性が高いですね。……ギルドの方から、教会にも応援を要請しますが、救援に向かうのはモンスターを討伐してからか、討伐出来る者達が同伴していないと厳しい状況です。」

 リナの言う教会とは、身体の不調を訴える者に、治療を施す白魔道士が在籍しているところだ。


 そう、白魔道士が在籍している教会は、戦闘出来る集団では無いのだ。


 その為、モンスターがいる場所に白魔道士だけで行くことは自殺行為なのだ。


「それと、この依頼はAクラスになってしまい、現在手の空いている冒険者にAクラスの依頼を受けられる者がいません。村の危機ですので、ギルドから軍に派遣要請も行いますが、軍はギルドと違って直ぐに動くのは難しいと思います。」

 今回は、アンデッドの種類や数が不明な為、危険を伴うのでAクラス以上の依頼となる。


 また、リナが説明したように、軍は各所に配置されているため、村を救う為と言えど、直ぐに救援に迎えないのが現状なのだ。


「問題ありません。俺達が向かいます。」

「……確かに皆さんは、Bクラス五人なので、Aクラスの依頼を受けることは出来ますが、危険過ぎます。」

 リナとて、マルス達ならこの依頼を受けられることぐらい承知している。


 しかし、一国の王女がいるパーティーに、そんな危険な依頼を受けさせる訳にはいかないと考えていた。


「民が助けを求めているのです。私は行きます。」

「……分かりました。(こうなったら、軍に派遣要請する時に、イリス様がこの依頼に向かっていると伝えよう。そうすれば、動きの遅い軍も直ぐに動く筈。)」

 リナの手続きを受けたマルス達は、ギルドが管理している馬車へと乗り込み、急ぎ救援へと向かったのだった。


毎日、本作にお付き合いいただいている方、ありがとうございます(^人^)

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