学年代表者バトル
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ありがとうございます!
今回は長めです( ^ω^ )!
1学年のクラス代表者の試合が終わり、次に行われたのは、2学年のクラス代表者戦だった。
2学年も、Sクラスのヴァーリという槍術士の最上級職業である聖槍士が優勝する。
槍捌きは見事なもので、流石上級生と言った戦い振りであった。
更に、3学年も同様にSクラスに所属するオグマという剣聖が優勝した。
現在のオケアノス冒険者学校は、過去に例の無い程、最上級職業の者が在籍している。
数年間、最上級職業が居ないこともある。
それだけに、今年の1学年は最上級職業が四人と異常なのだ。
「それでは、これより学年対抗試合を始めます。1学年代表マルス選手。2学年代表ヴァーリ選手。」
マルスとヴァーリが向かい合い、互いの武器を構える。
ヴァーリは、青髪をした長身細身の男だ。
(やっぱり上級生で最上級職業ともなると、雰囲気が全然違うな。)
マルスは、先程までの試合より集中力を高める。
試合開始の合図と共に、ヴァーリとマルスは互いに駆け寄る。
「【槍技:疾風突き】!」
ヴァーリから、鋭い突きが放たれる。
しかし、マルスは開始と共に支援魔法|速力増強を発動し、速力を強化していたため、ヴァーリの疾風突きを横へと回避する。
槍での突き攻撃は攻撃面積が狭い為、最小限の動きで槍を回避し、お返しとばかりに剣を横振りして胴を狙うマルス。
「ぐっ!?」
突如、マルスの横腹を衝撃が襲う。
「甘い。まだまだ経験が足りてねぇな。」
ヴァーリは、突きが回避された際に、そのまま槍を横へと薙いだのだ。
マルスは、吹き飛ばされながらも、何とか体勢を立て直す。
「つぅ。【回復魔法:回復】。」
マルスは、直ぐに回復魔法を発動して傷を癒す。
前に出していた力を強引に横へ振るとは、見掛けに寄らず、力技を使うタイプだな。
もう少し速力を上げておけば良かったか。
「【槍技:火炎槍】!」
ヴァーリは、槍の矛先に炎を灯し、マルスへと攻撃を繰り出す。
「【支援魔法:大天使の羽】!」
マルスは、速力増強の魔法を解除し、大天使の羽を発動する。
これにより、マルスの速力が3倍に跳ね上がる。
マルスに対し、ヴァーリは突き、横薙ぎ、振り上げ、振り下ろし、回転と、素早い槍捌きで、次々と攻撃を繰り出すが、その全てをマルスは剣で弾き返す。
「何っ!?」
急にマルスが別人の様な動きを見せ、自身の攻撃を全て防がれてしまったヴァーリは驚愕する。
「こっちの番ですね。」
マルスが、一気にヴァーリへと詰め寄る。
「させるか! 【槍技:槍雷】!」
マルスに接近されまいと、ヴァーリが槍に雷を纏わせて高速で突き出す。
先程までのマルスと違って、速力3倍のマルスにとって、避けるのは簡単だった。
「【槍技:大車輪】!」
先程と違い、ヴァーリは槍技を発動して、身体を一回転させる。
その為、伸びた槍も一回転し、間合い内にいるマルスへと槍が迫る。
マルスは迫る槍の太刀打ち部分を剣の腹部分で防ぎつつ、ヴァーリへと尚も接近する。
槍雷からの大車輪コンボで、マルスを止められると考えていたヴァーリは、予想もしていなかったマルスの動きに驚くが、このままでは終われないと力を振り絞る。
「【槍技:逆大車輪】!」
またしてもヴァーリは、力技で槍の力が働いている方向の反対側へと一気に身体を捻り、逆回転で槍を振り回す。
しかし、ヴァーリの槍がマルスへと届くことは無かった。
ヴァーリの逆大車輪に合わせて、マルスも身体を回転させ、ヴァーリの槍と同方向に回転し、ヴァーリを斬りつけ、ヴァーリは戦闘不能となる。
「剣技、大回転。なんてね。」
(俺に剣技は使えないけど、ヘラさんから習った技だ。)
「勝者、1学年代表、マルス選手!」
審判の勝利者宣言により、観客席から拍手喝采が起こる。
観客席にいた者達は、まさか最上級職業が白魔道士に負けるとは思っても見なかった為、興奮は最高潮だ。
▽
「まさか、お前が負けるとはな。」
3学年代表のオグマは、ヴァーリと何度も対戦しており、ヴァーリの実力を一番理解している。
オグマから見て、ヴァーリは強い。
過去の戦績では、オグマはヴァーリに負けたことはないが、それでもヴァーリの実力は最上級職業に恥じないものだ。
それを下級職業の白魔道士が下したのだ。
「オグマ先輩。アイツを倒して下さい。」
ヴァーリは、全力で戦ってマルスに勝てなかった。
しかし、オグマならマルスを倒してくれると期待をしていた。
「ああ。1年坊主に優勝はさせないさ。」
オグマは、強敵と戦えることに喜びを感じていたのだった。
▽
「これより、1学年代表マルス選手対3学年代表オグマ選手の試合を開始します。両者用意は良いですね? 試合、開始!」
マルスと対峙するオグマは、赤髪短髪で大柄な男。
オグマが手にする武器は、大剣と言う部類のものだ。
マルスもオグマも、剣を構えてはいるが、どちらも動かないで様子を見ていた。
「白魔道士って割には、かなり良い構えをしているな。」
オグマは、マルスの剣の構えを見て、そう口にする。
幼い頃からヘラに習った剣である。
褒められたマルスは、気分を良くする。
「剣聖の方にそう言っていただけるのは、素直に嬉しいですね。」
「どうだい? 最初はお互いの剣の腕で勝負してみないか?」
(剣の腕だけで? つまり剣聖は剣技を使わず、俺も支援魔法無しで戦うってことか?)
普通に考えれば、ステータスの上昇率で圧倒的にオグマが有利なので、マルスがこの案を受け入れるのは不利である。
「良いですね。俺も自分の剣がどこまで剣聖に通じるのか試してみたいです。」
お互いに一度笑みを浮かべた後、表情を引き締める。
「行きます!」
マルスは剣先を斜め下に向けたまま、オグマへと詰め寄る。
間合いに入った瞬間に、斜めに剣を振り上げる。
オグマは、マルスの剣に向けて剣を振り下ろす。
お互いの剣がぶつかり合う。
オグマは、そのまま力で押し切ろうとするが、マルスの剣から押される力が無くなる。
マルスは、オグマの剣と一瞬力の押し合いをした後に、直ぐに剣先の角度を変えて、オグマの剣をやり過ごしていたのだ。
マルスは、そのまま剣を上に振り上げ、オグマに正面斬りを繰り出す。
(捉えた!)
マルスは、完全に自分の攻撃が入るタイミングだと確信していた。
しかし、マルスの攻撃が届く前に、マルスの剣が弾かれる。
「え?」
剣を弾かれたマルスは、大きく上体を晒してしまう。
剣聖オグマがその隙を見逃す筈が無く、斜め上方から剣を振り下ろし、マルスを吹き飛ばす。
マルスは痛む胴体に歯を食いしばり、オグマを睨み付ける。
「まさか、あの状態から攻撃を弾かれるとは思っても見ませんでしたよ。良くそんな大剣を素早く扱えますね。」
「お前の剣も、かなりの力と速さ、正確性だが、まだまだ修行が足りないな。」
その後もマルスは幾度と無く剣を振るうが、悉く防がれ、逆に斬られてしまう。
「はぁはぁはぁ、強い。」
(ヘラさんに勝てた時も支援魔法無しじゃ無理だったし、まだまだ俺の地力が足りてないんだな。)
「……お前、本当に白魔道士かよ。強化せずにそれだけの力と速度は、おかしいだろ。」
地力が足りないと感じているマルスとは反対に、オグマはマルスの力が異常だと感じていた。
「地力ではまだオグマさんに勝てないようなので、ここからは白魔道士として戦わせていただきます。」
(向こうも剣技を使うので、注意が必要だ。)
「そうだな。白魔道士の力、見せてみろ!」
オグマがマルスへと詰め寄る。
「【支援魔法:超越した身体】!」
オグマの振り下ろす剣に、強化した状態で応戦するマルス。
先程まで劣勢だったマルスだが、立場が逆転する。
「おいおい。どれだけ能力上がってんだよ!? 反則だろそれ!」
オグマは悪態を吐きながら、剣を振るう。
ただ剣を振るうだけでは、マルスに対応しきれないと判断したオグマも剣技を繰り出し始める。
「行くぞ! 【剣技:豪烈斬】!」
剣技豪烈斬により、攻撃力が上昇したオグマの剣が、マルスの剣とぶつかり合い、両者のパワーが拮抗する。
しかし、それも僅かな時間しか続かなかった。
「くぅーー、お、俺が押されているだと!?」
剣技の中でも攻撃力を上昇する剣技を発動しているにも関わらず、自分の剣が押されていることに、オグマは動揺する。
オグマは、一度体勢を立て直す為に、後方へと下り距離を取る。
オグマは、自身最大の技を繰り出すことを決意する。
「これが俺の最高の技だ! 【剣技:豪破烈斬】!」
オグマの最強の技、それは最上級技能だ。
この豪破烈斬は、豪烈斬の二段階上の技となる。
オグマの持つ大剣が、紅の光を力強く発しながらマルスへと迫る。
(このままじゃパワー負けする!)
「【支援魔法:全大天使】!」
オグマの放つ剣技から、強力なプレッシャーを感じたマルスは、全能力を強化する。
転移魔法で回避するのは可能だが、オグマさんの最高の技から逃げたくない。
オグマの様に、剣技を使うことが出来ないマルスだが、ヘラから習った剣の技を思い出す。
「【力の剣:建御雷神】!」
マルスは剣先を天に向け、強化した攻撃力、速力をフルに発揮し、腕、腰、足と身体全体を駆使し、全力で剣を振り下ろす。
剣技が使えないマルスだが、ヘラから習った剣の技で、最高の攻撃力を誇るものだ。
振り下ろしたマルスの剣は、オグマの剣と激しく衝突する。
「「うおぉーー!」」
更に、自らを奮い立たせるように、二人は叫ぶ。
二人の剣がぶつかり合ったのはほんの一瞬で、二人の前には砕け散った剣の破片が浮遊する。
「終わりだ!」
オグマの剣がマルスへと迫る。
「【転移魔法:瞬間移動】。」
オグマの剣が空を斬る。
オグマの背後へと転移したマルスは、空中回し蹴りをオグマの首へと叩き込み、不意を突かれたオグマは意識を刈り取られ、地面に倒れた。
「!? 勝負あり! 優勝は1学年、マルス選手!」
(勝負に負けて、試合に勝った気分だ。 俺の剣は、オグマの剣に負けたんだ。)
マルスの心情など、知る由も無い観客達は、割れんばかりの歓声を上げている。
エイル先生の回復を受けたオグマが、意識を取り戻す。
「まさか1年坊に負けるとはな。大したもんだ。」
「いえ、オグマさんの剣技には敵いませんでした。」
「……当たり前だろ。俺は剣聖なんだぜ? 白魔道士に剣で負けてたまるかよ。だが、剣聖は、白魔道士に負けちまったがな。」
オグマは、満足気な表情を浮かべて手を差し出し、それに応えるように、マルスはオグマの手を握る。
こうして、マルスが全校生徒一位となり、白魔道士の力を世に見せつけたのだった。
本日もありがとうございましたm(_ _)m




