魔王ベヒモスの力
今週も無事に更新できました( ・∇・)!
マルス、エオス、ゼウス、ヘラが、魔王ベヒモスへと向かって歩き出す。
マルスは、支援魔法を発動し、自身には神々の力、エオスとヘラには戦神、ゼウスには知恵の神を施す。
「残ったのは、貴様らだけだ。」
魔王ベヒモスは、余裕の態度を崩さない。
「先に仕掛ける! 【炎魔法:太陽の光】!」
ゼウスが魔王ベヒモス目掛けて、特大の神級魔法を放つ。
マルスの支援魔法を受けた状態のゼウスの魔法は、超高温であり、魔法が通った地面を赤く染め上げ、地面を溶かし、突き進む。
「そんな攻撃が通じるとでも? 【破壊の拳】!」
魔王ベヒモスは、自身に迫る太陽の光に対し、破壊拳を繰り出して、太陽の光を相殺する。
「「「もらった!」」」
ゼウスの魔法が放たれた直後、マルス、エオス、ヘラの3人は、魔王ベヒモスへと間合いを詰めていた。
エオスとヘラが左右から、転移魔法で背後に移動していたマルスの3人が同時に攻撃を繰り出す。
「【力の剣:建御雷神】!」
「【死への誘い】!」
「【剣技:神剣】!』
3人の攻撃が魔王ベヒモスを捉えた。
「【絶対防御】!」
魔王ベヒモスは、マルス達の攻撃を読んでいたかのように、絶対防御を発動し、3人の攻撃を無力化してしまう。
キンキンキン!!
甲高い音が鳴り響く。
「くそっ!?」
「うざぁってぇな!」
「くっ!?」
マルス、エオス、ヘラは、攻撃が防がれると、直ぐにその場を離脱する。
「【雷魔法:雷神の鉄槌】!』
その直後、辺り一面が目の眩むほど明るくなり、特大の雷が魔王ベヒモスの頭上から落下し、直撃する。
ゼウスは、魔王ベヒモスの絶対防御が解けた瞬間を狙って、雷神の鉄槌を繰り出したのである。
「ぐがぁ!?」
魔王ベヒモスは、絶対防御を解除した瞬間を突かれたことから、モロにダメージが入り、魔王ベヒモスの全身からは煙が上がっていた。
その隙を見逃すことなくマルス、エオス、ヘラが魔王ベヒモスへと攻撃する為に、再度接近する。
「くたばれ!」
エオスは、いち早く魔王ベヒモスへと接近して、剣を振る。
「図に載るな!」
魔王ベヒモスは、ゼウスの雷神の鉄槌を受けたにも関わらず、直ぐに身体を動かし、エオスの振るう剣を片手で捉え、エオスの腹部を殴り飛ばす。
「がはっ!?」
腹部を殴られたエオスは、身体をくの字に曲げて、大きく吹き飛ばされてしまう。
間を置かず、ヘラが魔王ベヒモスへと斬りかかるが、魔王ベヒモスはヘラの斬撃を回避し、ヘラを蹴り飛ばす。
「うっ!?」
ヘラは、なんとか蹴りが腹部に当たる前に、腕を差し込み後方に飛ぶことで、威力を軽減していた。
次いで、マルスが魔王ベヒモスへと斬りかかる。
マルスの攻撃にも素早く反応した魔王ベヒモスは、マルスへと拳を振るう。
「なに!?」
魔王ベヒモスの振るった拳が、空を切る。
マルスは、魔王ベヒモスの動きを読み、転移魔法を発動したのである。
そして、直ぐに魔王ベヒモスの側面へと姿を現す。
「はっ!」
マルスの斬撃が、魔王ベヒモスの腕を斬り付け、魔王ベヒモスは緑色の血を流す。
マルスは、腕を斬り落とすつもりで剣を振るったが、魔王ベヒモスの硬い外皮によって、斬り落とすには至らなかったが、確実にダメージを与えることに成功する。
マルス達は、一度魔王ベヒモスから距離を空ける。
「すいません。今ので片腕を斬り落とせれば。」
「謝ることないわ。上出来よ。」
「ああ。この調子で行くぞ。」
マルスは、思ったよりもダメージを与えられなかったことを悔いるが、ヘラとゼウスはマルスを励ます。
マルス達が会話する様子を、エオスは横目で見えていた。
「【天変地異】!」
魔王ベヒモスが両手を地面へと付けると、会場中の地面が隆起、陥没して行く。
「「「「うおっ!?」」」」
マルス達は、立っていることすら出来なくなり、地面に手を付いて耐えることしか出来ない。
そんな地面がグラついている中でも、魔王ベヒモスは攻撃を繰り出そうとしていた。
「まず一人。【破壊光線・改】!」
魔王ベヒモスの膨大な魔力が口で収束圧縮され、放たれる。
魔王ベヒモスが放った攻撃は、今までの威力の比では無い。
狙われたのはエオスだ。
エオスは、何とか回避しようと足場を蹴ろうとした。
しかし、そのタイミングで足場が凹んでしまい、上手く飛び立つことが出来なかった。
「しまった!?」
エオスは、自身へと迫る破壊光線を前に、時が止まったかのような状態に陥る。
(俺はこれで死ぬのか?)
エオスは、己の死を覚悟した。
しかし、その瞬間が訪れることは無かった。
「「エオーース!」」
ヘラとゼウスは、足場の悪い中でも、必死にエオスを助ける為に動き、エオスの前へと飛び出す。
「【混合魔法:天使の波動】!』
ゼウスは、エオスの命を刈り取ろうとしている破壊光線・改に向けて、七色に輝く魔法を放つ。
ゼウスが放った魔法は、全属性を練り込んだ魔法であり、神級魔法である太陽の光の威力を遥かに凌駕している。
魔王ベヒモスの破壊光線・改とゼウスの天使の波動がぶつかり合う。
「うぉーー!」
ゼウスは、更に魔力を練り上げて、破壊光線・改を押し込んで行く。
「ふん!」
押されていた魔王ベヒモスだったが、魔王ベヒモスも魔力の放出量を上げ、少しずつゼウスの放った天使の波動を押し返して行く。
「くっ!? ここまでか。」
ゼウスは、魔王ベヒモスとの押し合いで、一気にMPを消費してしまい、ついにMP切れとなってしま、全身から大量の汗を流しながら地に膝を付ける。
「後は任せて! 【剣技:七星剣】!』
ヘラが剣に魔法を込めると、剣は七色に光輝く。
そして、ヘラの七星剣がゼウスの放った天使の波動を後押しする。
「はぁーー!」
ゼウスとヘラ、二人の力が合わさり、魔王ベヒモスの破壊光線・改の進行を食い止める。
そして、ゼウスとヘラによって、魔王ベヒモスの破壊光線・改が消滅する。
しかし、その代償は大きかった。
ゼウスは、MPを全て使い切り、最早動くことすら儘ならない。
また、ヘラも全力を出し切り、既にボロボロになっていた。
「……なんで。俺なんかの為に。」
エオスは、何故ゼウスとヘラが自分を守ったのか理解することが出来なかった。
「お前は、俺達の子供だ。」
「親が子を守るのは当然よ。」
ゼウスとヘラは、エオスを守ることが出来たと、安堵の表情を浮かべる。
「逃げろーー!」
マルスは、3人に向けて全力で叫ぶ。
マルスの声に反応し、3人は迫る脅威に気が付く。
魔王ベヒモスが、再び破壊光線・改を放っていたのである。
既に、ゼウスとヘラは満身創痍であり、攻撃範囲からの離脱は困難な状況であった。
「止めてやる! 【結界魔法:守護神】!」
マルスは、全力で3人の前に結界魔法を展開する。
パリィーーン!
マルスが全力で展開した結界であったが、数秒と保たずに結界は破られてしまった。
「ここまでか。」
「そうね。」
ゼウスとヘラは、死を覚悟する。
死ぬ前に、自分の息子を守ることが出来たことに満足していた二人だが、魔王ベヒモスが健在のままこの世を去ろうとしていることには悔いが残っていた。
しかし、全力を出し切った二人には、なす術は無い。
このまま魔王ベヒモスの攻撃を受け、死ぬ運命にある。
だが、ヘラとゼウスの前に人影が入り込む。
「うおぉーー! 【剣技:深淵斬】!」
それは、エオスだった。
エオスは、自身の奥の手である最高の剣技を放つ。
今までよりも強力な漆黒の輝きを放つざんげきが、魔王ベヒモスの破壊光線・改と衝突する。
「何をしているんだエオス!? 逃げろ!」
「エオス!?」
ゼウスとヘラは、動けないながらも必死な形相で声
を張り上げる。
「何してるかだと!? そんなの知るか! 身体が勝手に動いちまったんだよ!」
エオスは、何故ゼウスとヘラを自分が助けようとしているのか分からなかった。
ただ、二人を助けなければならないと、勝手に身体が反応してしまったのである。
しかし、魔王ベヒモスの破壊光線・改は、ゼウスとヘラの二人が全力を出し尽くして止めることが出来たのであり、エオス一人の力で止めることは到底叶わない。
エオスの剣が徐々に押され、終にエオスの身体を呑み込む。
エオスの命懸けの攻撃により、破壊光線・改は、ゼウスとヘラを狙っていた軌道から逸れた。
ゼウスとヘラは、絶望の表情を浮かべ、吹き飛ばされたエオスの方へと目を向ける。
そこには、ピクリとも動かなくなり、瓦礫に埋もれたエオスの身体。
この場で魔王ベヒモスと戦えるのは、マルスだけとなったのだった。




