交流試合 第一戦
開会式を終えたマルス達は、交流試合個人戦の第一試合が直ぐに行われる為、一度解散する。
マルスは、第二戦に出場となるので、そのまま訓練場の端で試合観戦をすることとなる為、この場でイリス達と一度別れることとなった。
「頑張ってねマルス!」
「絶対勝てよ!」
「頑張って下さい。」
「マルスなら楽勝でしょ。」
イリス達が口々にマルスを激励する。
「ありがとうみんな。絶対勝ってみせる!」
マルスは、力強く仲間達の応援に答えた。
「これより、交流試合第一戦目を開始する! エジプト大国代表アトゥム! メソポタミア国代表アヌ! 両者前へ!」
審判の声に応じて、アトゥムとアヌが訓練場の中央へと進み出る。
アトゥムは、黒髪の痩せ細った身体をしており、片手剣を装備している。
対するアヌは、青色の長髪で、長身の身体つきをしており、槍を装備していた。
「メソポタミア代表として、勝たせてもらう。」
アヌは、煌びやかに輝く青い長髪を手で掻き分けて、勝利宣言をする。
「きゃーー! アヌ様!」
すると、観客席から黄色い歓声が巻き起こる。
それに応える様に、アヌはサッと手を挙げて、観客席へと笑顔を向ける。
アヌの勝利宣言を受けても、アトゥムは気にした様子も見せず、ただアヌを見据えていたのだった。
「気に入らない顔だ。君の様なヒョロそうな男が代表だなんて、エジプト大国も大したことないんだな。」
アヌは、アトゥムの態度が気に入らず、暴言を吐く。
「エジプト大国が大したことがないかは、直ぐに分かりますよ。」
アトゥムは、アヌの言葉を聞いて、即座に言い返す。
アトゥムは、自分を馬鹿にされても気にすることは無いが、自国を馬鹿にされたことに怒っていたのである。
「ほぉ。直ぐに、私に倒されてしまうからかな?」
アヌは、余裕の笑みを崩さない。
「準備は、いいか? お互い国代表として恥じない戦いをするように。 試合、始め!」
審判の上に上げた手が、勢い良く振り下ろされる。
「我が槍捌きに魅了されるが良い!」
アヌは、素早い動きでアトゥムへと接近すると、華麗な槍捌きを披露する。
その動きは、流れる様な動きであり、一切の無駄が無い。
自分の力に自信があるだけのことはあり、その動きは、洗練されたものだった。
「馬鹿な!?」
しかし、アヌの槍はアトゥムに一撃も命中していなかった。
アトゥムは、片手剣も使わずに、体捌きだけでアヌの槍を回避してしまったのだ。
「ちょこまかと! 【槍技五月雨突き】!」
アヌは、流れる様な動きから一変して、連続での突きを繰り出す。
しかし、アヌの五月雨突きもアトゥムに命中することはなかった。
「どうしましたか? その程度ですか?」
アトゥムは、汗一つ掻くことなくアヌの攻撃を回避してそう告げる。
「この技なら避けれまい! 【槍技天輪】!」
アヌは、自身最強の技である天輪を発動する。
槍の矛先に、極限まで研ぎ澄ませた風を纏って回転し、360度攻撃する技である。
アヌは、この技を駆使して自国代表に登り詰めたのだ。
「避けれましたね。」
アヌが、最後に耳にした言葉である。
この言葉を聞いた直後、アヌは意識を失う。
観客達の中に、今の一瞬で何が起きたのか理解出来た者は少ない。
攻撃を繰り出した筈のアヌが、いきなり倒れたのであ
る。
更に、アヌの前に居た筈のアトゥムが、いつの間にかアヌの背後に移動していたのだ。
「!?」
審判も、今の一瞬の出来事に戸惑いを隠せない。
しかし、直ぐに気を取り直し、倒れて気を失っているアヌへと駆け寄る。
「気を失っているな。」
審判は、アヌが気を失っている状況を確認し、そう口にする。
「勝者エジプト大国代表アトゥム!」
そして、高らかに勝者の名を宣言する。
すると、何が起きたのか理解出来ていなかった観客席からは、割れんばかりの歓声が巻き起こる。
どうやって勝利したのか見えなかったが、結果として一名が地に伏しており、もう一名が立っているのである。
自分達の理解出来ない程の強者の戦いに、観客達は興奮していたのだった。
「まさか、あいつもなのか?」
その様子を近くで眺めていたマルスは、観客達と違って、アトゥムの力を見抜いていた。
(流石は、昨年の優勝者だ。簡単には優勝出来そうにないな。)
「第一戦目が終了しましたので、続いて第二戦目を始めたいと思います。第二戦オケアノス大国代表マルス! ウガリッド国代表アーシラト! 両者前へ!」
倒れているアヌを救護班が運び出し、直ぐに審判が第二戦目へと進行する。
「まずは、目の前の相手に集中だ。」
マルスは、力強く一歩を踏み出したのだった。




