バッカスの屋敷へ
マルスの支援魔法を受けた、イリスとディアナ。
「凍りつきなさい! 【氷魔法:氷地獄】!」
「射抜くわ! 【弓技:百矢】!」
イリスとディアナ、二人の攻撃が発動する。
「何だこの威力の魔法は!?」
「んなこと言ってねぇで、いいから迎撃しろ!」
イリスの氷地獄を目にした者が、動揺しながらも魔法で迎撃を試みる。
「上からも大量の矢が来てるぞ!」
「さっきまでの矢は、大した威力じゃなかったから、矢は大丈夫だろ?」
「いや、さっきまでの矢よりも明らかに威力が強そうなんだが。」
「ん? 確かにヤバいぞ!? 上も迎撃しろ!」
ディアナの矢を先程まで受けていた者達は、明らかに威力の上がっているディアナの矢を迎撃するために魔法を発動する。
黒の賢者であるイリスは、高レベルに成長したことで、魔法の威力も格段に成長している。
更に、マルスの支援魔法を受けて強化されたイリスの魔法は、敵の迎撃を物ともせずに突き進み、イリスの前が氷の世界へと作り変えられる。
イリスの魔法を受けた者達は、氷像へと姿を変えていた。
また、ディアナの矢は、敵の迎撃で本数を減らされはしたものの、敵の集団に降り注ぐと、多くの敵に手傷を負わせることに成功する。
「ぐあっ!?」
「イッテェ!?」
「さっきまでの威力が違いすぎるだろ!?」
「おい!? あっち側に居た連中が全員凍っちまってるぞ!?」
イリスの攻撃範囲外に居た者や、ディアナの攻撃を受けても動ける者達は、動揺を隠しきれない。
たった二人の一撃で、この集団は壊滅的な状況に追い込まれてしまったのだ。
「油断しすぎだぞ!」
「全くだね!」
先程まで攻めあぐねていた、オグマとヴァリーが敵陣に攻め込んでおり、負傷している敵を次々と倒して行く。
「私の分も取っておいてよね!」
「遊びじゃないんだぞミネルヴァ!」
ミネルヴァとマルスも、敵陣へと攻め込み、次々と敵を打ち倒して行く。
瞬く間に、ここの敵を殲滅したマルス達は、オグマとディアナに対し、簡潔に状況を説明する。
「グラシャラボスなんて、伝説級の犯罪者じゃないか!?」
「ニョルズ様、大丈夫でしょうか。」
オグマは、グラシャラボスの存在に驚き、ディアナはそんなグラシャラボスと戦っているニョルズの身を案じていた。
「てか、黒幕のバッカスを取り敢えず、拘束した方がいいんじゃないかな。」
「確かにそうですね。この落とし前は付けさせなければいけませんね。」
事情を聞いたヴァリーの発言に、頷くマルス達。
「確か、この先にバッカス大臣の屋敷があった筈だ。」
オグマは、この辺の地理に詳しく、バッカス大臣の屋敷の所在地を把握していた。
「案内をお願いできますか?」
「勿論!」
イリスの願いにオグマは応じ、マルス達はオグマ達を引き連れて、バッカスの屋敷を目指すのだった。
しばらく進んだマルスは、前方に見知った人の姿を見かける。
「ユースティアさん!」
「ん? マルスか!」
マルスが遭遇したのは、憲兵隊の頂点に君臨するユースティアだった。
「理由は分からんが、収容されていた囚人どもが逃げ出して暴れている。すまないが手を貸してくれないか? 人手が全く足りていないんだ。」
「勿論です。移動しながら俺達が知っていることを伝えます。」
マルスは、ユースティアも仲間に加えて、今回の騒動を手引きしたバッカスのことや、グラシャラボスとニョルズらが、現在フレイヤの家で戦闘中であることを伝えた。
「まさか、グラシャラボスまで逃げ出しているとは。ニョルズ様達が無事だと良いのだが。」
憲兵の頂点として君臨しているユースティアは、グラシャラボスが処刑されていないことは知っていた。
グラシャラボスの危険性を理解しているユースティアは、ニョルズ達の身を心配する。
「はい。」
マルスも、ニョルズ達のことが気がかりだった。
「きっとニョルズ様とネルトス様なら、大丈夫ですわ。」
イリスも、不安な気持ちではあったが、自分の知るニョルズやネルトスなら、簡単にやられたりはしないだろうと口にする。
「見えたぞ。ここがバッカスの屋敷だ!」
オグマを先頭にして移動していたマルスは、ついに目的のバッカスの屋敷まで辿り着く。
マルス達の目の前には、やたらと金ピカの門がそびえ立っていた。
自分が大好きなバッカスは、至る所に金を掛けており、この金ピカな門もバッカスの趣味である。
「入るぞ!」
マルス達は、金ピカの門を開けて、中へと足を踏み入れらのだった。
本日も無事更新。
本作をお読みいただき、ありがとうございます(>人<;)